2023 水瓶座の言葉 トニ・モリスン┃すでに構築されてしまっている世界の中で、自分自身だけの想像力と向き合う
占星術における12サインは、12か月の季節の移り変わりに照応し、その時期に感じやすい心のテーマがあります。心理占星術家nico (ニコ)が、古今東西の著名人の言葉から12サインそれぞれの象徴を見出し、心理的葛藤と成長を考察したエッセイ。
2023水瓶座期は、アメリカの黒人作家として初のノーベル文学賞を受賞したトニ・モリスンに注目。客観的、普遍的な視点を持つ知的なサインと言われる水瓶座が世界へ対峙する姿勢について考察します。
水瓶座の言葉
偉大な人物をこのように表面的なかたちで扱うことに、毎回ためらいと羞恥を覚える。だが、立ち止まって占星術の象徴解釈を考えてもらう機会に(多少でも)なればと思い、このような手軽なテキストを書くことを続けている。
水瓶座に太陽を持つ私にとって、水瓶座のヒーローが何人かいる。その中でも、考える度に我が身が引き締まり、その作品を手にする度に胸の奥の大切な部分がジンと熱くなる存在として三人の女性がおり、その一人が今回紹介したトニ・モリスンである(あとの二人は、2018 水瓶座の言葉 シモーヌ・ヴェイユと2021 水瓶座の言葉 ヴァージニア・ウルフだ。どちらも過去の本連載で取り上げている)。
偉大な仕事を成した人というだけではない。孤独と傷を背負いながらも、現実に目を背けることなく、驚嘆するほどの希望を胸に仕事をつづけた人。そういった孤高の存在であることが、いつも私に圧倒的な憧れと圧倒的な痛みを感じさせるのだ。
だから、彼女たちの言葉をこのように気軽に扱うのは、本当のところ私自身にとって良いことではないのかもしれない。
本書で作家の西加奈子が
というのは大いに理解できる。
モリスンが亡くなって三年以上経過しても、なお私には彼女の残した言葉を十分に理解したとはとても言い難い。しかし、表層しか扱わなくても、彼女の言葉には恐ろしいほど力があるし、「水瓶座」を考えるヒントとしては十分だ。
ということで、雑な仕事になってしまうけれど、「水瓶座」を改めて考える機会として、モリスンの言葉を考えてみたい。
モリスンの言葉を読めば明らかなように、水瓶座・天王星は決して破壊のサインではない。よく占星術では、フランス革命と天王星が結びつけられて、まるでアナーキストのように扱われる。が、しかし歴史を見れば明らかなように、あの革命はまだ未成熟な天王星の表現だと考えてもいい。天王星(フランス革命)が発見されてから236年、現在、天王星は三周ほど周回し、社会も少しずつではあるが天王星との向き合い方がうまくなってきた。
ただ、破壊するだけでは社会は疲弊していく。だから、すでに機能している価値は残し(=不動サイン)、時間をかけて慎重に(=不動サイン)必要な変化を加えていく(=風エレメント)のではないか。
それが、三周した天王星の学びであり、成長した天王星の考え方として捉えてもよいのではないだろうか(なぜならば、天王星の発見後、海王星、冥王星という、より遠く不穏な天体たちが発見されている)。
この辺りは、今月の星宙予報でイギリスの政治家エドマンド・バークの言葉を引用しながら説明した。
モリスンが生涯にわたって「必要な変化」のために作品を通し、言葉を尽くし続けてきたことは自明のことだが、ここにもう一つ、水瓶座的な視点を加えてみたい。
モリスンは、今回取り上げた1997年に行ったスピーチの中で「人種というものが問題にならない世界」を「ホーム」と呼んだ。
この言葉の中で重要なのは、「人種の区別がある家に住まねばらないなら」、また「人種というものが問題にならない世界」と言っている点だ。
11番目のサインである水瓶座は、客観的視点、普遍的な視点を持つ知的なサインと言われているが、この二つの表現には、それが丁寧に盛り込まれているのがわかる。
つまり、世界は「人種の区別がある」ことが前提であり、それが「なくなる」ことを目指すのではなく、「問題にならない」ことを目標に掲げている、それが水瓶座的な客観的、普遍的な視点ということになると考えられないだろうか。
これは「諦め」ともまた違う。「人種には区別がある」という明らかな差異を受け入れた上で、社会の到達可能な努力目標として「問題にならない」ことを目指す。そこには成熟した姿勢もあり、地に足のつかない浮ついた理想主義とは違うかたちで、より現実的な希望を見出しているとも言える。ここに水瓶座の本領があると考えてみるのはどうだろうか(あえて「希望」という言葉を用いたのは、風エレメントが「希望」という象徴を持っているからだ。工夫、アイデアという風エレメントの能力は、よりよく世界を創造したいという「希望」に基づいている)。
モリスンの言葉には、こういった特徴が随所に見られるのだ。
それは、以下の言葉にも見て取れる。
「諦め」とも違う。現状を括弧書き=疑問にして受け入れ、そこから新たな希望を見出していく、これが水瓶座的姿勢の一つだと考えることができるのではないだろうか。
もう一つ、再考しておきたい水瓶座的象徴として、「普遍性=ユニバーサル」をあげておきたい(ちなみに、なぜ今回、これほど丁寧に水瓶座の象徴を拾い上げているのかというと、これから1~2年の間に冥王星という天体が水瓶座へと向かっていくからである。冥王星は、時代のダークサイド、病巣を引き出す天体とも言われている)。
モリスンの作品は「普遍的=ユニバーサル」と言われているにもかかわらず、作品群は徹底的にアフリカ系アメリカ人の言語、音楽、日常生活、文化史の色合いに包まれていることで知られている。しかも、舞台は公民権運動というアメリカ史の特定の時代、主人公は黒人女性という設定に限定されているのだ。
これは一見、特定の世界に閉じているように見えるかもしれない。しかし、水瓶座を考える上で大事になるのが、このように自分の周囲にめぐらされた枠組みを強く実感した上で、一歩二歩離れた視点で世界を観察してみること。時をさかのぼり、あらゆる文化を見直しながら検証し直すことである。
モリスンの場合で言うと、
ことを試み続けたということになる。
普遍的であるためには、「すでに構築されてしまっている世界」に対し無関心なまま、自由に発想することではない。枠組みをどれだけ「わたくしごと」にできるか。そこに新しいアイデアを差し込む余地をどうつくっていくか。これこそが双子座、天秤座から続いた風エレメントの叡智の真価が問われることなのだ。
最後に、もう一つ、モリスンの言葉を記しておく。
射手座から始まる社会サインとは、特定な因習の中で、どう自分の内部へと向かっていくのか、その内へ内へと降りていく作業の中でこそ、社会を変えうる力になるのだろうと、私自身は強く実感している。決して、意識を外に向けることが社会サイン、普遍性ではないのだ。
2023年の水瓶座期は、まず自分の置かれている社会の枠組み「すでに構築されてしまっている世界」を強く実感することだ。そして、そこにある「変えがたいもの」の中にある文化を深く理解し、そのうえで、そのものをぶち壊すのではなく、「自由にその人種の家=ハウスを改装し、デザインを変更し、もう一度心に思い描いていた、自分のものと呼べる家=ホームへと作り変えていくことを目指す」。
それをプライベートで行うのだろうか、仕事を通してやってみることができるだろうか。いずれにしても一歩一歩進めていくしかない。
できる限りのあらゆる工夫を施し、創造力を使い、実現可能であろう理想へと近づけていく。
最終的に事が成し遂げられずに終わったとしても、時間、知性、創造力、希望を持ち続けていくことこそが、不動サイン・風エレメントの持続可能な国/企業/個人の在り方となるのではないだろうか。
原動力は現実を受け入れる知性と希望である。
ぜひ、そんなことを意識しながら、来るべき水瓶座・冥王星時代に備えてみてほしい。
トニ・モリスン(Toni Morrison)
1931年2月18日アメリカ、オハイオ州生まれ。水瓶座に太陽、水星を持つ。
アメリカ文学史においてもっとも高く評価され、広く読まれているフィクション作家、文化批評家の一人。作家、編集者、劇作家、エッセイスト、児童文学作家として夥しい数の賞を受賞し、アメリカ国内のみならず国外でも非常に高い評価を受けている。1993年にアメリカの黒人作家として初のノーベル文学賞を受賞した。
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