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四角いバターを、そのままで。

知らず知らずのうちに、食べものに味のコントラストを求めるようになったのは、いつからだろうか。

ショートケーキには、コーヒーを。
こってりラーメンには、ねぎの薬味をたっぷりと。
まろやかなプリンには、パリッと表面をカラメリゼして。

「甘い」お菓子というだけで手放しに歓喜できた子供時代から一変、ひとつの味覚にぬるま湯の如くどっぷり浸かっていられることは、限りなく少なくなった。
これを「大人の味覚」と称するか。はたまた、飽きっぽくなったと分析するか。

そんな疑問も頭を擡げるなか、本日話題に上がるのは、
味のコントラストの代表格ともいえるお菓子パン、「あんバター」である。

無類のあんバター好きの私は、パン屋さんでのアルバイト時代、
終業時間の余りパンの中にあんバターを目ざとく探り当て、
持ち帰って食べては、ぷくぷくと丸顔の肥やしにしたものである。

すっきりとした甘さのぽってり餡子と、
塩気の効いたクリーミーな冷たいバター。
それらをまとめているのは、歯切れの良いバゲット生地のパンなら尚良し。
(サムネイル写真のは、違うんだけれど。)

そう。
四角く切られたままの冷えたバターが決め手なのである。

私は、ある程度年齢を重ねるまで、
トーストにはバターでなくマーガリン、という常識のもと暮らしてきたため、
クリーム色が無くなり溶け切るまで「塗り込む」、がデフォルトであった。

しかし、バターとなると話は違う。
洋食店のステーキの上。喫茶店のパンケーキの上。
こぼれ落ちそうになりながらも絶妙なバランスを保ち、
頂上にちょこんと鎮座する、バターキューブ。
そして、チーズバーガーのチーズの如く、チョコモナカアイスの板チョコの如く、
ででんと莫大な存在感を放つ、あんバターの片割れ。

そのままのバターにさっくりと歯を入れて、口の中でシュッとほどけた後に広がる贅沢な風味は、一度味わってしまったらもう虜である。

「バターは塗るものではなく、かじるものだ」と
フードエッセイストの平野紗季子さんも言うように、
若干の背徳感はあれど、四角いバターのまろやかな食感ごと、
かぶりついて味わうことを何歳になっても純粋に楽しめる大人でいたい。

あんバターを通じて、こんなことをぼんやりと考えている22歳の秋が、
もうすぐ終わりを迎える。

coco


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