【感想】★★★『黒牢城』米澤穂信
評価 ★★★
内容紹介
■第166回直木賞受賞! ミステリ史に輝く金字塔
本能寺の変より四年前。織田信長に叛旗を翻し有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起こる難事件に翻弄されていた。このままでは城が落ちる。兵や民草の心に巣食う疑念を晴らすため、村重は土牢に捕らえた知将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めるが――。
事件の裏には何が潜むのか。乱世を生きる果てに救いはあるか。城という巨大な密室で起きた四つの事件に対峙する、村重と官兵衛、二人の探偵の壮絶な推理戦が歴史を動かす。
感想
信長を裏切った荒木村重は、裏切を翻意させるべく送り込まれた黒田官兵衛を土牢へと監禁した。ある時、配下武将が荒木を裏切り、信長へ投降。人質だった少年を殺さず、幽閉する事に決めたが、暗殺されてしまう。しかし、幽閉先はしっかりと警固されていて誰も近付く事ができなく、しかも胸に矢で射られた跡があるが、肝心の矢が消えている。織田軍が攻め寄せる中で起こった主君である村重の命令に背き、誰が人質を殺したのか。
村重は犯人を探すが、なかなか手掛かりが見つからなく、最終的に官兵衛に意見を求めにいく。官兵衛はハッキリとは犯人を言わないが、謎の童謡を唄い、それが事件解決の切欠になるのだが、村重の有能ぶりおそれに輪をかけて頭のキレる官兵衛の描写が面白い。
またある時、荒木勢は手薄な織田勢の一部隊に夜襲を掛け、敵の大将である大津を討ち取る事が出来たが、それを誰が手柄を立てたのかが分からない。そんな折、討ち取った首が凶相を示したと噂が立ち、人々は祟りを怪しんだり、火事騒動がある中、窮した村重は再び官兵衛の元へ趣く。そこで語られるのは、なぜ大勝することが出来たのか分からないのか?と言う事だった。村重はそれにより悟り、大津を討った物を知る。
上記の他、2つの難題奇問が起こり、その度に村重は官兵衛に意見を求めに土牢へ赴く「羊たちの沈黙」みたいな仕立てになっている。
ただ、四つの問題から織田勢の動きの移り変わりなども分かるとなお良かった。
それぞれの問題の首謀者は想定内の人物であり、官兵衛が何かを企んでいる事は分かる。それだけに最後の最後に更なるどんでん返しなり、想像だにしなかった展開が欲しかった。
官兵衛の知略を持って、読者をも欺くような作品にして欲しかった。
良い点としては、歴史物としては非常に読み易かった。
ミステリーとしては、駄作になるが歴史ミステリーとしては、どのような経緯で村重は有岡城を出て、自分を慕ってくれた将らやその家族、または自分の側室ですら無殺しにする事を選んだのかと言うミステリーへの挑戦としては並程度には何とか成るかなと思う。
ただ、その村重の決断に対するミステリーへの解は、しょうもなかった。