【感想】★★「模倣の殺意」中町信
評価 ★★
内容紹介
■七月七日の午後七時、新進作家・坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自で調査を始める。一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者・柳沢邦夫を追求していく。著者の絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。
感想
2人の人物が異なるアプローチで、自殺したとされる坂井の死の真相に迫っていく。2人とも違う人物を真犯人として、坂井は殺されたと仮定しながら、物語は進んで行き、四万温泉のとある旅館で符号していく。
のだが、ミスリードがトリックではあるが、かなり雑。ミスリードは2点あるのだか、その内の1点の時間軸のトリックはいいとして、もう一点の同姓同名というのは都合が良過ぎる。
そもそも話の展開が鈍くて、引き込まれないし、エピローグも何の余韻もなく、ただ描写しただけのニュース記事に毛が生えた程度。
もっと中田秋子の坂井に対する想いや大文筆家であった父への憧れを描き、津久井も知り合いであった坂井との思い出と編集長に対しての憎悪を描ききって、ドラマとしての面白味を追求して欲しかった。