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【感想】★「総理にされた男」中山七里

評価 ★

内容紹介

■「しばらく総理の替え玉をやってくれ」ーー総理そっくりの容姿に目をつけられ、俺は官房長官に引っさらわれた。意識不明の総理の代理だというが、政治知識なんて俺はかけらも持っていない。突如総理にされた売れない役者・加納へ次々に課される、野党や官僚との対決に、海外で起こる史上最悪事件⁉ 怒涛の展開で政治経済外交に至る日本の論点が一挙にわかる、痛快エンタメ小説!

感想

内容はとても単純で設定も使い古されているので、面白みには欠ける。[総理に瓜二つの売れない役者が、事故で意識不明の総理に成り代わる]という設定は酷い。
また、情景描写の表現が乏しく、例えば主人公の慎策が拉致されて、首相官邸に行く際も「外堀通りを通って、山王日枝神社を過ぎると、前方に庁舎らしき建物が……」のような表現があるが、全く情景が浮かばない。
人物描写も極めて乏しく、個性が全く立っていない。

主人公・加納のブレーンとなる大学時代からの友人である風間の慧眼ぶりは都合良すぎるし、行方不明となっている加納の恋人の依頼で単独捜査を始める刑事の存在もご都合主義で読んでいて萎える。しかも、刑事の件は、何の進展もなく、急に消える。

全てが予測可能の範囲内で物語は進むし、伏線と思しきものも何一つ回収しない印象。
5つの章に分かれていて、「VS閣僚」「VS野党」「VS官僚」「VSテロ」「VS国民」となっているが、なぜこんな括りにしたのか疑問に思うほど、対決していない。

流れとしては、真垣総理が野党や官僚とバリバリ闘っている描写と加納の寂れた描写が並行し、真垣総理が病魔に襲われた時から加納が交錯していくようにした方が良かったと思う。
真垣総理と官房長官との関係が実感出来ないし、政治の問題は山の如しなので、そのカオスの状態からどうやって収束させていくのだろうという風に思わせて欲しかった。

総評としては、陳腐極まりない駄作。
池上彰さんがあとがきを書いていたので期待したし、この作者は「このミス」受賞者ではあるが、正直言ってよく受賞できたなと思うレベルだが、読み易くはあるので、逆にみんなに読んでもらいたい。


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