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【感想】★★★★★「その女アレックス」ピエール・ルメートル

評価 ★★★★★

内容紹介

■おまえが死ぬのを見たいーー男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが‥‥
しかし、ここまでは序章に過ぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

感想

メチャクチャ面白い作品。
アレックスとそれを追う警部の視点で交互に描かれ、読者を飽きさせない。
3部構成になっており、1部ではアレックスが誘拐されてから脱出するまで。2部ではアレックスの逃亡から死亡まで。そして、3部では真実を暴いていく構成となっている。
それぞれの部でのアレックスの印象が全く異なり、特に2部ではアレックスは快楽殺人犯的なサイコパスのよう描かれている。
内容はグロいけど、どんどん引き込まれていく展開の早さとストーリーの組み立ては最高だが、それを見事に表現した訳者の橘明美さんもスゴイ。
本当に傑作です!

ネタバレ

かなり美人の主人公アレックスは、男に誘拐される。小さな檻に入れられ監禁される。男の目的はアレックスを生きたままネズミの餌にし、殺す事。アレックスはネズミに食べられそうになりながらも、何とか脱出に成功する。犯人の男はというと、警察に追われながら、最終的には陸橋から飛び降りて自殺をした。
「男は何故、そこまで残虐な方法でアレックスを殺したかったのか?」
実は、アレックスはその男の息子を高濃度硫酸を飲ませて殺していたのだ。それ以前にも同様の手口が2件あった。
アレックスの存在を知った警部は執拗に追っていく。
そして、警察から逃亡中のアレックスは硫酸でさらに3人を殺していく。
逃亡の末、チューリッヒ行きの航空券を買って、ホテルに滞在するアレックス。そこへ近くに住んでいた兄・トマを呼び出すが、会う事もなくアレックスは服毒自殺を図った。
一連の硫酸殺人事件の容疑者死亡で事件は解決したかに見えたが、6人の被害者たちは、実は直接的または間接的にトマと関わりがあった。
アレックスの死体解剖の結果、性器が硫酸で爛れ、稚拙な方法で尿道を確保されていた。
それは、看護師であったアレックスの母親が兄・トマを庇うために行ったものだった。
実はアレックスとトマは異父兄弟であり、アレックスは10歳の頃からトマからレイプされ始める。そのうち、トマはアレックスを多数の男たちに売り始めた。その中でアレックスはイカれたある男に性器に硫酸を掛けられてしまった。
アレックスは自分を買って弄んだ人々に復讐をしていたのだ。
そして、トマはアレックスの殺人罪で逮捕される。
アレックスはホテルにトマの毛髪を落とし、自分の指紋を消して、他殺に見せ掛けていたのだ。
最後の最後、実はアレックスを追っていた警部は真実よりも正義を優先していた。


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