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【感想】★★★★「握る男」原宏一

評価 ★★★★

内容紹介

■昭和56年初夏。両国の鮨店「つかさ鮨」の敷居をまたいだ小柄な少年がいた。抜群の「握り」の才を持つ彼の名は、徳武光一郎。その愛嬌で人気者となった彼には、稀代の策略家という顔が。鮨店の乗っ取りを成功させ、黒い手段を駆使し、外食チェーンを次々手中に収める。兄弟子の金森は、その熱に惹かれ、彼に全てを賭けることを決意する。食品業界の盲点を突き成り上がった男が、全てを捨て最後に欲したものとは。異色の食小説誕生。

感想

「ゲソが死んだ⁉」
主人公・金村は、刑務所にて新聞の記事を目にする。
寿司屋の下積み時代から一緒に過ごしてきた小さな体でキビキビと忙しなく働いていた弟弟子のゲソ。
深謀遠慮の限りを尽くして伸し上がっていったゲソを中心に物語は進むのだが、ブラックな自身掌握術を駆使して、あれよあれよと言う間に経済界の大物へと成長していく。ダークヒーロー的なゲソの元で番頭役として金村は、ゲソと共に粉骨砕身で働いていくのだが、成功する人間はこうやって寝る間も惜しんで行動するのだろうなと考えさせられる。
とにかくゲソが打算的で強欲であるが、なぜかそれが格好良く見える。
最後のゲソの思いがけない出自には驚いたが、その暴露の仕方が少しお粗末だった。そこがしっかりと練られていたら★×5だったと思う。
漁業組合の弊害や「3割打者発想」など魅力的な要素も多数あり、引き込まれる上に、ストーリーが進むにつれ、冒頭のゲソの死の真相が気になって仕方なくなってくる。
最後の最後までは、本当に面白い作品。

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