【感想】★★★「盤上の向日葵(上)」柚月裕子
評価 ★★★
内容紹介
■平成六年、夏。埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。遺留品は、名匠の将棋駒。叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志した新米刑事の佐野は、駒の足取りを迫って日本各地に飛ぶ。折しも将棋界では、実業界から転身した異端の天才棋士・上条佳介が、世紀の一戦に挑もうとしていた。重厚な人間ドラマを描いた傑作ミステリー。
感想
物語は奨励会を経ずに特例で認められた東大卒の天才棋士・上条佳介のタイトル挑戦の舞台となる山形県・天童市が始まる。
埼玉県の山中で発見された白骨化遺体と一緒に埋められていた将棋駒「初代菊水月」作の名駒の元の持ち主を探すためにやってきた腕は確かだが偏屈な石破と経験は浅いがかつてプロ棋士を目指していた過去を持つ佐野の二人の刑事。
上条佳介の不遇な少年時代の話と殺人事件の捜査が交互に描かれていく。
捜査のストーリーは展開力に欠けるが、文章力があるので、さほど苦痛感はなく、下巻への助走となるのであれば良いと思う。
逆に佳介の少年時代の話は、劇的な展開はなく非常に抑えられた流れだが、それがリアル感を醸しているし、佳介を応援したくなる。
上巻は物語の出口があまり見えず、佳介と殺人事件がどのように関わっていくのか、また新人刑事の佐野が物語にどうやって深く関わってくるのかが気になる。
過度な表現もなく、バランスの取れた文章でとても安心できる作品。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?