【感想】★★★「友罪」薬丸岳
評価 ★★★
内容紹介
■ジャーナリストへの夢に挫折した主人公は、取り敢えずの腰掛けのつもりで就職したステンレス工場で同日入社の鈴木と出会う。ある日、主人公に鈴木が「僕が自殺したら悲しんでくれる?」と聞いてきた。知り合った人間が死ぬ事は耐え難い主人公は、素直に「悲しい」と答える。そこから鈴木にとって、主人公は最も大切な存在となった。実は、主人公には中学時代に友達が自殺した過去があった。また、中学時代に起きた連続児童殺人事件の容疑者と鈴木の過去の写真が似ていた事により、主人公はある疑念を抱く。ある日、主人公達が働く工場の事務員は、男に騙されAVに出演していた過去を持っていたが、その男が事務員を再び騙そうとしていた所を鈴木が救った。その頃から、二人の不器用でぎこちない恋愛が始まる。一方、主人公は鈴木が事件の犯人だと確信していた。その頃、鈴木は主人公に自分の素性を明かそうとしていた。「ずっと友達でいる」ということを条件に。しかし、主人公はそれをやんわりと拒否し、出版社に情報をリークしてしまう。それがきっかけで鈴木の正体が暴かれ、鈴木は会社を逃げるように去ってしまった。掲載された記事の内容は悪意に満ち、それは主人公の本位ではなかったため、色々と悩んだ挙げ句にある手記を発表する。それは鈴木への手紙であり、今一度、あの条件を飲むことを告げる内容であった。
感想
鈴木以外の目線(俗に言う[神の目線])で描かれており、それにより鈴木の謎めいたキャラクターを際立たせていた。
内容自体が重く、スピード感もない為、なかなか読み進めるのが億劫になってしまった。
心理描写がまどろっこしく、キャラがしっかりと立っていない。また、人物の外見、話し方、表情が伝わってこない事が多々見られた。
魅力的な人物と説明描写を改善出来れば、テーマ自体は面白いので、もっと読後感を残すことが出来たのではないか。
最後まで鈴木の詳細が明かされず謎めいたままなのは、賛否はあるだろうが、個人的には良かった。
ただ、もっと鈴木の人間としての弱い部分などを表現して、感情移入出来るようにして欲しかった。残忍な殺人を犯した犯人とは思えないキャラクターであり、達観した雰囲気のキャラクターをずっと引っ張ったのが惜しい。
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