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【感想】★★「心は孤独な狩人」カーソン・マッカラーズ(村上春樹 訳)

評価 ★★

内容紹介

■1930年代末、恐慌の嵐が吹き荒れるアメリカ。南部の町のカフェに聾唖の男シンガーが現れた。店に集う人々の痛切な告白を男は静かに聞き続ける。貧しい家庭の少女ミック。少女に思いを寄せる店主。流れ者の労働者。同胞の地位向上に燃える黒人医師ーー。だがシンガーの身に悲劇が起きると、報われない思いを抱えた人々はまた孤独へと帰っていくのだった。著者23歳の鮮烈なデビュー作を新訳。

感想

物語は3部構成になっている。
第一部は、ある日、二人の聾啞者アントナプーロスとシンガーが仲睦まじく暮らしていたが、アントナプーロスの生活態度が荒れだし、その代償を払い続けていたシンガーの思惑とは別に、アントナプーロスの従兄の計らいでアントナプーロスは遠く離れた精神病院へ入院する事になる。
その後、夫婦仲の冷め切った食堂のマスターであるビフ、シンガーに心寄せる思春期の少女・ミック、飲んだくれの男ジェイク、規律に厳格で家族から敬遠されているコープランド医師のそれぞれの状況を描いている。
彼らはシンガーの不思議な魅力に吸い寄せられるように彼の家へ集まるようになる。
そして、シンガーはアントナプーロスに面会をしに行く。それが最後の邂逅だとも語られる。
第二部は、それぞれの主要人物の身の回りに起こった出来事を中心に描かれており、最後にシンガーはアントナプーロスに会いに旅立ち、淡々とした調子でシンガーの変容ぶりが語られ、容易に予想できる衝撃的な出来事までを描かれている。
第三部は、シンガーのいなくなった世界での主要人物のその後の機微が書かれている。特段、目を見張るような展開はない。

総評としては、まず、第一部でなぜシンガーとアントナプーロスとの面会が最後であると書いてしまったのか?それによって、第二部の最後の展開が読めてしまう。
みんながシンガーは常に正しく判断し理解している冷静で信用のおける人物だと認識しているが、実際はまんなの言っている事のほとんどを理解しておらず、みんなを少し奇妙に感じていたシンガー。
実世界もそんなものかも知れないし、多くを語らず、常に微笑んでいる方がいいのかもなと、ちょっとだけ思えた。
訳者の村上春樹が危惧しているように、起伏のない展開が今の世の中に行け入れられるとは思えないような作品ではある。ただ、文学作品とはこういうものであるし、人々の日常の感情の動きや当時の背景からくる世の中の雰囲気などが描かれるものであると思う。
WW2直前の陰鬱とした雰囲気や当時のアメリカ南部の黒人の心持ちなども知れるし、アメリカの古典的文学としては有りなのかも知れない。
が、結局はつまらない。

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