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【感想】★★★★「聖の青春」大崎善生

評価 ★★★★

内容紹介

■重い腎臓病を抱えつつ将棋界に入門、名人を目指し最高峰リーグ「A級」で奮闘のさなか生涯を終えた天才棋士、村山聖。名人への夢に手をかけ、果たせず倒れた“怪童”の生涯を描く。第13回新潮学芸賞受賞。

感想

29歳の若さで夭逝した実在の天才棋士・村山聖の半生を描いている。
文章自体は稚拙な所もあった。特に心理描写にはしつこさがあり、ありふれたフレーズが多かった。
内容は、聖が幼少期は活発で、普通の子供であった描写があり、ある日熱を出してしまうが、それを放っておいた為にネフローゼという疾患になってしまう。入院中に父から与えられた将棋に嵌っていき、将棋の才能を開花させていく。聖の純真にもワガママな性格が見事に表現されていて、それが作品にはまっている。その性格は生涯変わることなく、最期の時にはその性格ゆえの寂しさを醸し出した。
ラストの聖の最期のシーンは、細かい描写を分刻みのようなスピードで紡いでいくが、それが読者をその場にいるような感覚にさせてくれる。ただ、後日談的な聖の棋士仲間などの感想めいた描写はげんなりした。一つのささやかエピソード程度にして、余韻を残すべきでは。残された人たちは、どんなどう思っているのだろうと想像させて欲しかった。
また、谷川や羽生のようなライバルとの関りがもっとあるとより一層良かった。
作品を通して、『村山聖』という魅力的な人物を巧く表現しており、愛情あふれる素敵な作品だった。何かに没頭し純粋な気持ちで研鑽していく事の美しさを思い知る事が出来た。将棋を知らない人でも十分楽しめる良作です。

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