100時間で技術士二次試験に合格した勉強法 【前半】
『効率的に勉強し、出来るだけ短い期間で技術士二次試験に合格したい』
と考えるの人のための記事です。
当面は無料公開します。
(傾向把握については、今後、有料化するかも知れません。)
後半はコチラ
建設業界(主に土木)における最重要資格として、最初に思い浮かぶ資格は『技術士』だと考える人は多いでしょう。
なぜなら、公共事業の業務発注における監理技術者となるために必要な資格の中で、最もメジャーかつ信頼度の高い資格だからです。
昇格要件や資格手当の対象としている会社(主にコンサルタント)も多く、職種によっては技術士の取得=一人前の技術者のような扱いをされる場合もあります。
このため、土木業界では(特にコンサルタント業に従事する技術者には)、取得時期が早いか遅いかで人生が大きく変わる資格のように思います。
私は会社の中では割と若い時期に取得できたのですが、自身は技術士取得を契機に、色々と環境が変わっていったように思います。
技術士を持っているということで、『技術力が高い』という評価をもらうようになりました。
私自身も、技術士取得を契機に、業務に役立つ他の資格についても取得する意識が働き、他の資格も取得しました。
この頃に、資格取得を通じて、朝活で技術的な勉強をする習慣がついたことで同年代の同僚達と比べて技術力や知識が徐々に差がついてきたように思います。また、専門技術以外の様々な分野の本を読むようになったのもこの頃からです。
時間経過ととも実績も積み上がり、手前味噌ではありますが、社内的にも技術力という点で一目置かれるような存在になったように思います。
資格取得だけで、その様な状況になったわけではないですが、技術士試験に取り組んだこと、実際に技術士資格を得たことが、私の技術的経歴を変えていく契機の一つであったと思います。
さて、そんな技術士試験ですが、建設部門では二次試験の合格率は10%程度の狭き門となっています。
優秀な技術者であるにも関わらず、受験にあたってのノウハウを知らないせいで何年も資格取得にチャレンジされる人も多いです。そして、結果的に数百時間という膨大な時間を試験準備に投じなければならないケースもよくあります。
『効率的に勉強し、少ない勉強時間で技術士試験に合格したい』と考える人が多いのではないでしょうか?
私は運が良かった部分もあるとは思いますが、技術士(建設部門)の二次試験に1発合格しており、筆記試験の勉強時間は100時間程度でした。
Webで調べた限りでは、技術士(建設部門)の二次試験の合格者の平均的な勉強時間は、300~500時間くらいのようでした。
平均的な勉強時間と比べると、私の勉強時間は短くはありましたが、受験前には『余程、変な問題が出題されなければ、多分合格するだろう』という自信もありました。
このような自信を持てた理由は、私がメンターから教わった正しい勉強順序と勉強方法で十分な勉強をしてきた自負があったからだと感じています。
勉強開始時点での知識や文章作成の経験値にもよりますが、正しい勉強順序、勉強法を知っていれば、100時間程度の勉強時間で技術士試験は合格することが可能といえます。
※ 当時の私は、特別知識が多かったわけでも、論文を沢山書いた経験があったわけでもありません。普通の中堅技術者だったと思います。
しかし、技術士二次試験を初めて受験する人の多くは、論文試験という特殊な試験であるがゆえに、『どの様に学習を進めたらよいのか分からない』のではないかと思います。
本記事では、メンターからの指導に私の経験も踏まえ、技術士試験(特に建設部門)のための効率的な勉強順序と学習の進め方を紹介します。
本記事を読んでもらうことで、以下のことが分かり、効率的な資格勉強が行うことができるようになると思います。
技術士試験で求めれる知識
想定問題の設定方法
論文作成の練習の方法
私が建設部門で技術士資格を取得しているため、記の内容は建設部門を受験することを前提としておりますが、他分野でも応用できるTIPSを中心に記載しますので、他分野を受験される人でも参考になる部分はあると思います。
私自身の受験時期は今(2024年)から10年以上前で、当時から時間が経過していますが、昨今の試験問題の傾向を確認しても、本記事の内容は問題なく適応できると思いますし、受験対策の根本的な部分は変わらないと考えます。
問題文の作成や評価を行う試験官の立場になったことを想像すれば、自然のことかと思います。(ちなみに私自身は試験官としての経験はありませんが、委任の相談を受けたことがあります。)
本記事の対象者としては、以下のような人を想定しています。
技術士試験(建設部門)を初めての受験する人
(特に「河川砂防」「道路」「都市計画」「鉄道」「港湾航空」「建設環境」)の受験を考えている人)※これまで独学中心で勉強をしてきた人
合格水準の論文を書くための基本事項を知らない人
効率的な勉強方法を再確認したい人
※ 建設部門でも、「土質及び基礎」「鋼構造及びコンクリート」「施工計画」「トンネル」「施工計画、施工設備 及び積算」については、個別技術の要素が強く、選択科目独自の傾向があるので、本記事で紹介する内容がそのまま当てはまりにくいです。「電力土木」については所掌が経済産業省となるため、同様に本記事の内容が当てはまるかはわかりません。
本記事の構成は次のとおりです。
技術士試験(特に建設部門)のための効率的な勉強の進め方を紹介します。
※ 5.は今後、別記事にします
※ 本記事は当面(3月いっぱいを目処)は、無料記事とします。
二次試験の筆記においては、本記事の1.2.の内容を知っているか否かで、準備すべきことが変わります。
受験者目線に立つと5.の練習方法を最初に読みたくなると思いますが、『急がば回れ』の精神で、まずは本記事にて1.~4.を読んで基本を押さえることをお勧めします。
私が部下に指導する時も、まずこれらを最初に教えてから、具体の論文作成方法や個別課題についての指導を行っています。
今後、別記事で論文作成の練習方法、書き方のTIPSを記載していきます。
本記事とこれらを知っていれば、どこから手を付けたら良いか分からないということはなくなり、『闇雲に過去問を解いてみたけれど、合格レベルの骨子や答案のストックが作れない』という事態は避けられるのではないかと思います。
1.技術士試験で要求される知識・能力
そもそも技術士試験ではどのような知識、能力を審査されているのでしょうか?
ここを押さえることが一番大事です。
旅行者が地図と装備を準備するように、資格勉強も問われている知識、能力を知ったうえで勉強をすることが大事です。
スポーツに例えるなら、『自分が何の競技をしようとしているのか理解する』ということです。
サッカーの試合に出るのに、野球の練習をしても意味はないですよね。
いきなり過去問から論文作成の練習をするのではなく、試験の審査基準や設問設定の背景を理解することからはじめましょう。
(過去問中心の試験勉強をすることはOKですが、上記のことを把握していなければ、要点を抑えた勉強ができないので効率が悪いです。)
技術士試験で問われる知識・能力は次のとおりです。
(技術士試験で問われる知識・能力)
技術士二次試験(建設部門)の筆記試験で問われる知識とは、『国土交通省における重点課題とそれに対する方針(=重点政策)』である。
問われる能力は、その知識を設問に応じて、小論文としてアウトプットする能力である。
つまり、答案は国土交通省の公表資料等を参考にしながら作成する(=(国の想定する課題と対策方針を理解して、答案を作成する)必要があるということです。
答えを聞くとなんてことはないですが、ここを分かっていないと、間違った資料検索をすることがあります。
ただし、建設部門の中でも、土質及び基礎、鋼構造及びコンクリート、施工計画、鉄道、トンネル、施工設備 及び積算については、個別技術の要素が強くなるため、選択科目独自の傾向もあるように思います。
独自の傾向というのは、『国土交通省の公表資料だけではカバーできない細部技術に関する設問が増える』という意味です。
よって、これらの科目を選択する方は、個別の傾向分析が必要になりますのでご注意ください。
2.出題傾向の把握方法
直近の試験問題の出題傾向を例に示します。
下表は、建設部門の必須科目と選択科目のうち河川砂防を抽出して令和元年度以降の4年分の試験問題のリストです。
本記事を書くために、私の主観で概要をまとめたものです。
(ダウンロードして頂いてOKですが、後述するとおり、ご自身でも整理することを推奨します。)
近年の試験問題の傾向としては以下のような特徴が挙げられます。
必須課題は、技術者倫理、SDGsの観点からの記述が求められる。
災害激甚化、循環型社会、老朽化、カーボンニュートラル、DX、人口減少といった近年の国土交通省で重視されているキーワードが目立つ。
特に災害激甚化については、毎年、必須、選択のいずれかで確認される。
強キーワードに対する設問は複数年、継続する場合が多い。
1.に記載した近年の国土交通政策の重点課題に対応する問題が設定されていることが分かります。
この根本的な問題設定の考え方は、10年以上前から変わっていませんし、今後も変わらないものと考えられます。なぜなら、国土交通省の発注する業務の監理技術者として技術士資格保有者を求めているのは、『技術士資格保持者は国土交通政策の課題と解決方針について十分理解していること』だからです。
さらに言えば、そういった背景を踏まえれば問題作成と評価は国土交通省関係の技術者に一定程度、頼らざるを得ないと考えられます。(勿論、民や学からも参加されていると思いますが。)
他分野の技術士試験においても、白書からの出題が多い傾向があるようですので、おそらく全部門の共通の出題傾向を推察すると技術士二次試験では、『受験部門を所掌する省庁における重点課題とそれに対する方針』が問われるものと考えられます。
この基本さえ押さえていれば、情報収集や論文作成、添削においてどのような視点をもって取り組めば良いかが、自ずと分かると思います。
また、受験年度の出題問題の推定にも非常に有用です。(詳細は後述)
後は、情報収集と論文作成テクニックの習得に一定の労力と時間を投下すれば、合格は見えてくるでしょう。
3.令和6~7年度の出題傾向予測
1,2を踏まえて令和6~7年度の出題される課題を抽出すると次のような項目が出題される可能性が高いと考えます。
※ 私見につき『異論は認める』とさせてください
大規模地震災害に対する総合的な対策の在り方(課題抽出・具体策)
大規模地震が施設管理に与えるへの影響と対策(選択科目別)
超過外力に対する総合的な対策の在り方(課題抽出・具体策)
大規模災害発生時における復旧支援の在り方(課題抽出・具体策)
社会基盤の維持整備における建設DXの在り方(課題抽出・具体策)
令和6年の元旦に発生した能登半島地震により、大きな被害が発生しており、ここでの被災状況や被災後の対策において発生した課題を踏まえた設問がなされる可能性は高いでしょう。
以下は、東日本大震災が発生した翌年の2012年の二次試験では、耐震設計の在り方が建設部門の必須課題として問われました。
また、以下のとおり、河川砂防では選択科目でもに耐震に関わる課題が選ばれていました。
ちなみに、私が受験した2011年は東日本大震災が発生した年ですが、そのタイミングでも選択課題では2題、耐震に関する課題が出題されています。
地震災害対策は我が国における継続的な重要課題であるため、常に設問とされる可能性が高いですが、大規模な地震被害が発生した直後は特に設問として選定される可能性が高いです。
平成28年の熊本地震の翌年にも、地震に関する設問が複数の選択科目で問われていました。
この理由として、地震対策をはじめとする超過外力に対する対策については、一定程度、考え方が確立しているため、社会的課題としての関心度が高まっている場合にはすぐにでも設問にすることが可能だからです。
そう考えると、令和6年度の試験でも必須科目、選択科目の双方で取り上げられる可能性が高いです。
一方で、復旧支援の在り方については、まさに現在、対応中のものであり、今後時間をかけて課題と対応の精査がされるため、設問になるのは令和7年度以降かと推定します。
※ 私見につき『異論は認める』とさせてください(2度目)
4.重点政策・最新情報の確認方法
重点課題の確認
1.にて『国土交通省における重点課題に関する知識』が求められることを説明しました。
ここでは、国の重点課題の把握方法について記します。
受験者は土木業界で10年近くの経験を有している中堅以上の技術者ですから、国土交通政策の基本的な流れは業務を通じてある程度は把握しているかと思います。
しかし、それらの情報の多くは細分化された専門分野の知識であることが多く、全体を俯瞰して確認する機会は意識していなければ意外と少ないのではないでしょうか?
全体像を効率よく確認できる資料として国土交通白書を紹介します。
国土交通白書とは国土交通省が毎年作成する、国土交通行政の課題に対する重点政策を網羅した資料です。
※ 地震対策については、防災白書も前半は読んでおくと良いです。
※ 後日、防災白書のまとめ記事をかきます。
国土交通白書は全編で400ページ弱あるのですが、全頁を読む必要はありません。私が受験した時にも必要な箇所を拾い読みで問題ありませんでした。
(↓は国土交通白書が更新されているので削除しました。ただし、「必要な箇所を読めばよい」という基本的な考え方は変わりせん。)
拾い読みの方法について私が行うなら、という方法を参考までに記載します。これが正解というわけでないですが、合格者のやり方の一つとして紹介します。
(第一部)
まずは第一部で全体的な課題を把握します。これも、直近の試験問題の傾向を見ながら、必要なところをピックして確認すればよいでしょう。
時間を掛けるととキリがないので、1~2時間かけて全体をザっと読んだら、個別の論文作成の練習をすれば良いと思います。
その後、個別課題の論文執筆時や振り返りのタイミングで、関係する箇所を再確認すれば良いです。
(第二部)
第二部については、令和3年度版では10章で構成されていますが、技術士試験では問われにくい章も多いです。2.で作成した過去問リストの分析結果を勘案して確認箇所を決めます。
私見ですが、令和3年度版ならば、1章,2章,10章をひとまず抑えれば良いと感じました。
あとは、第一部と同様に、今後の論文の骨子作成時や執筆後の復習時に必要に応じて、必要な箇所を読み返すことで良いでしょう。
具体の個別課題・対策の確認
次に、具体の個別課題と対策の確認方法について記載します。
具体の個別課題・対策については、過去問や想定問など具体の課題に挑む際に調べるのが良いです。これは、自分で骨子等を作成に挑んでいるときでないと、頭に入っていかないためです。
選択科目の過去問演習を行う際に、対応する具体の個別課題・対策は、国土交通省の委員会資料や予算説明資料で確認することが出来ます。
予算資料だと過去の流れが分からない場合があるので、各課題毎の情報が知りたければ、個別に国交省の公表資料や委員会資料を検索します。
長寿命化、地震対策、超過外力、DXなどの主要テーマは、まとまった資料があるので、そちらを読んで概観を掴み、より細かい事例を調べる時に予算資料を把握することで良いでしょう。
予算資料まで確認しなくても論文は書ける場合が多いです。個別施策の内容を読んでおくと理解度が進むので、余力があるならば、各テーマ3~4つくらい施策の個別事例を調べておくと良いです。(どちらでも良いです。)
「国土交通省」「予算概要」で検索すれば、国土交通省のホームページにて各局の予算概要が公表されているHPがヒットします。
これらの公表資料を参照すれば、個別課題・対策が詳細に確認できるかと思います。(50~60ページ程度のPPT資料ですが、「予算の項目毎の内容」の中で、細かく確認ができます。)
予算説明資料で確認できたキーワードをベースに、さらに検索をかければ、より詳細な公表資料も確認できます。
より効率的な方法として、合格者の過去問の答案を購入し、その答案を参照して、分からない内容を上記の手順で検索するという方法があります。
若干のコストが必要ですが、受験者のレベルを問わず有効です。
答案を購入するかどうかは、過去問演習をいくつか実施してみて、骨子作成が自力で可能かどうかを参考に判断すると良いです。
周りに合格者がいるなら、その人達から答案をもらいましょう。
私が受験した時は、先輩方の合格論文を3人分(計9題)を読ましてもらって、相場観を確認しました。
注意点として、合格論文といってもピンキリで、ギリギリA判定の論文も含まれる可能性も否めません。よって、合格論文の相場感を把握する目的であれば、5つくらいの事例は読んでおくと良いと思います。
過去の受験で複数回A判定の評価を受けている人は、合格論文の相場観は概ね理解しているでしょうから、必ずしも購入する必要はありません。
初受験の人でも、技術士試験を受験する中堅クラスの技術者であれば、自分の専門分野については一定の知識が備わっているという場合は、自力である程度、骨子作成が可能な場合も多いと思います。
その場合でも、初受験ならば合格レベルの答案を見ておくというのは、到達点をイメージするという点で有効です。
登る山の高さを予め知ってから準備する方が良いですよね。
5.論文作成の練習方法(別記事)
いよいよ、論文作成の具体の練習方法について記載を、、、
と思ったのですが、長くなりそうなので、別記事(100時間で技術士二次試験に合格した勉強法【後半】)とすることにしました。
別記事の内容も重要なので、実際に論文作成の練習に着手するまえにご一読しておくと、合格レベルの答案を作成するためのコツがわかり、より具体的な勉強法のイメージが出来るかなと思います。
6.まとめ
本記事では、技術士試験において問われる知識と、情報収集の具体的な方法を説明しました。
今後、別記事(100時間で技術士二次試験に合格した勉強法【後半】)では『論文作成のコツ』や『留意点』について記載していきます。
本記事と別記事の内容を読んでおけば、『どこから手を付けたら良いか分からない』、『どんな勉強をしたら良いかわからない』ということはなくなり、『闇雲に過去問を解いてみたけれど、有用な答案ストックが作れない』という事態は避けられるのではないかと思います。
効率的な勉強法を知っていたとしても、仕事をこなしながらの資格試験の準備は大変です。それでも技術士は、苦労して取得するメリットは十分ある資格です。
『次回の受験で確実に合格する』という強い意志をもって頑張りましょう。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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