『どこにでもある鍵屋...UNLOCK』 .03.1
開かなくなったもの、なんでも開けます。 by 鍵屋
一番初めはこちらから。
このお話は、こちらの続きです。
第三話『ドラマツルギーの表舞台』
店先の石畳の上で、確かに狭くなっていく空を晏理は見つめていた。不気味に笑う雲が、二羽のカラスを吸い込んでいくところが目に映った。
(晴れるといいけどな......。)
openの看板をかけ、店の扉を開けて中に入ると、入れ替わるようにサキが中から出てくるところだった。
「いらっしゃいませ。鍵屋です。こちらへどうぞ。」
晏理はいつも通り、お客を中へ案内した。
今日のお客は、細身のパンツに黒のライダースジャケットを着た、背が高く、細身で筋肉質の男性だった。
「...お一人ですか?」
「あぁ。今日は、これを開けていただきたい。」
その男性は、淡々とした口調で、そう答えると、カバンの中から手のひらに収まるサイズの小さな箱を取り出した。
「中身は知らない。だが、重要なものだと聞いている。慎重に開けてくれると助かる。」
「承知しました。では、この契約書にサインを......そして、別に名前と連絡先を、ここに書いていただけますか。」
「あぁ......。」
”神崎護”
その男は、そう紙に認めた。
「晏理〜。サキがいないんだけど。知らない?」虎史はそう尋ねた。
「え...いないの?どこに行ったかな。悪いけど、キッチンの下の方とか、見てみてくれる?」
「わかった。探してみる。」
晏理の眉間に皺がよる。目の前の男性を一瞥した後、窓の方に目を向け、また男性の方に向き直ったときには、既にその顔には笑顔が戻っていた。
「すみません。お騒がせしました。では、本当にこの箱を開けてしまってよろしいのですね?」
「お願いする。」
工具を取りにその場から離れる晏理。
すぐに、奥のキッチンでサキを探している虎史の元に駆け寄り、小さな声でこう呟いた。
「少しまずいかもしれない。虎史はサキが見つからなくても、ここにいてくれる?出てこないで。箱は俺一人でなんとかするから。」
「......。」
「お願い。すぐに片付けるから。」
「......わかった。何かあったら......よろしくね。」
「了解。待ってて。」
晏理がその場から立ち去るのを確認した虎史は、キッチンの一番下の端にある戸棚の中に入り、その中にあるスイッチを押した。
つづく。
※フィクションです
では、また次の機会に。