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4期絵本探求ゼミ 第1回

★講座の目的:「絵本理論を学び、自分の経験をベースに自分の頭で考え、言語化できるようになる」こと
★テーマ:4期のテーマは2つあり、1つは「絵本の絵を読み解く」
2つめは「翻訳」

1.ミッキー先生との出会い


2014年12月習志野市立大久保図書館にて、石井桃子の翻訳についての講演会があり、講師が『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつける~「声を訳す」文体の秘密~』の著者竹内美紀氏でした。この絵本探求ゼミの講師ミッキー先生との出会いでした。東洋大学の社会貢献活動の一環とのことです。その時に『クマのプーさん』は何回も改訳されていたことを知りました。石井桃子の児童書について翻訳自体を研究されている方がいらっしゃることを知り新鮮な思いがしました。

2『クマのプーさん』の残念な思い出


第1回ゼミの講義で紹介された『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』(灰島かり/著・研究社)をさっそく読んでみました。ミッキー先生はこの本のもとになった灰島かりさんのカルチャーセンターでの絵本翻訳教室を受講され大学院での翻訳絵本の研究の道に進まれたと伺いました。
この本を読んで絵本の翻訳が「なんて大変なことなのか」と驚きました。
「あ~この本がもっと前からあったなら」もっと楽しみながら宿題ができたのにと思いました。家にある『クマのプーさん』は1973年発行の岩波少年文庫(第19刷)です。入手した当時私は保育士養成の学校に通っていて英語の授業でこの『WINNIE-THE-POOH』に出会いました。講師が毎回英文を読んでくださいました。今も楽しそうな声が耳に残っていますが、耳でよく聞くこともせず、ひたすら英文を目で追っていました。宿題で翻訳するときも、子どもがどうしたら楽しんで聞いてくれるか、耳で聞いて分かりやすい文章かなど全く考えずにいました。そして途中で日本語訳のこの本を買ってしまいました。なんともったいないことをしてしまったのだろうと。でも英文の本を見たからこそプーのなんとも言えない間違いにクフっと笑うことができました。

3.第1回で選んだ翻訳絵本


『三びきのこぶた』イギリス昔話
瀬田貞二/訳
山田三郎/画
福音館書店
1967年
選書の理由は家の中で翻訳絵本を探したところ瀬田貞二訳が多かったこと、その中でも読み聞かせだけでなく人形劇にして演じた思い出深い絵本です。最後に残った三びきめのこぶたとおおかみのやり取りで、最後にこぶたがピンチを乗り切り安心して幸せに暮らせる日がやってきます。最近は語りのテキストに使用。
ゼミの講義でミッキー先生から訳者の「息づかい」という言葉がありました。
瀬田貞二訳「ふうふうのふうで、このいえ ふきとばしちまうぞ
『三びきのこぶた』(瀬田貞二/訳、山田三郎/画、福音館書店
石井桃子訳「フッとふいて、プッとふいて、この家ふきたおしちゃうぞ
『イギリスとアイルランドの昔話』(石井桃子編・訳、福音館書店、1981年)
石井桃子訳は楽しい言葉で好きですが、私の息づかいは瀬田貞二訳のほうがあっているようです。
ミッキー先生から自分にあった方を選んでとお話がありました。
その後調べていくと石井桃子訳『三びきのこぶた』のペーパーバック絵本が福音館書店から以前出版されていたことが分かりましたが、図書館にも所蔵がありませんでした。
 瀬田貞二訳と石井桃子訳では息づかい以外にもう一つ違いがあります。
名前の違いです。
ごんべさんの うらだよ」(瀬田貞二訳)
スミスどんの家の畑だ」石井桃子訳)
ずいぶん感じが違います。

「名前ひとつにも、音の意味と文化的な背景、そしてそれが果たす役割があります。」「聞き慣れない名前は、異文化の音に触れる絶好のチャンスです」 『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』「音と意味と文化背景」より

「瀬田さんと石井さんという子どもの本の翻訳の大師匠の仕事について、少しだけ書かせてくださいね」「瀬田さんは『がらがらどん』に代表されるようね、すばらしい名人芸を残してくれました。瀬田さんの翻訳については『ほらほら、見て。すごいでしょ!』と説明するところがたくさんあります。ところが石井さんの翻訳は、説明や解説がとっても難しいのです。原作とあまりに一体化しているために、どこがどう、と指摘しにくい。でも石井さん以外には生みだせない、美しくて強い日本語なのです。この説明できないほど原作と一体化するところが、石井さんのすごさなのだと深く頭をたれる思いがします。」『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』「翻訳のステキ」より

こんなに深く考えられた翻訳絵本を読むことができる日本の親子は幸せだなと感じました。

4.声の文化


第1回のゼミで「声の文化」について講義がありました。『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるか』283ページに石井の「声を訳す』ことについての記述があります。「声を訳す文体とは、音読にふさわしいだけでなく、大人とは異なる子どもの物事の認識の仕方や物語の読み方に沿うものであり、昔話をはじめとする伝統的な『声の文化』の文体を継承し、子ども向けの文体で『語る』ものであった」と。子どもは『文字の文化』に入る前の「声の文化」に生きているのであると。

このような子どもに『ちいさいおうち』を翻訳するときに、原作が昔話特有の語りの様式をもっていることを石井桃子は理解し、さらに子どもの「時」の認知の仕方を考慮して翻訳していること知りました。

5.第1回の感想と今期の課題


当たり前のように読み聞かせしていた絵本の翻訳ってこんなに難しかったの!奥深い!と思いました。絵本はテキストだけでなく絵が一緒に物語っていること。絵本は声の文化。子どもは文字も絵として見ていること。
子どもの視点で絵を読むことを今回学びました。
読み聞かせをしていて、すらすらと言葉が出てくる絵本や、地味に思うがずっと長く読み継がれている絵本の秘密が理論的に言語化できるようにこれから約半年間学びを深めていきたい。
途中経過であっても期限内に振り返りを言語化して読んでいただけるように4期はできると良いと思います。
9月24日にペンちゃんがnote勉強会を開催してくださり、25日から始めてみました。課題の目標に1歩を踏みだせてうれしいです。有難うございました。
 


『三びきのこぶた』瀬田貞二やく 山田三郎 え 福音館書店

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