長唄 まかしょ
まかしょ???聞き慣れない、変な日本語ですよね。
いったいどんな演目なのでしょうか👏
あらすじ
「月雪花名残文台(つきゆきはななごりのぶんだい)」という七変化舞踊の雪の部にあたる曲です。江戸市中を白い衣を着て「まかしょ まかしょ」と叫びながら鈴(りん)を振って町を歩き、寒参りの代参をする修行者の物乞いをする姿を舞踊化したもので、クドキやチョボクレもあり粋でくだけた曲の面白さと軽快な踊りが見せどころの作品です。
まかしょの由来
寒参りの代行するといって江戸市中を巡り歩いた修行者の物乞いをする姿が舞踊化されたもの。
首から下箱(げばこ)をかけ手には鈴(りん)を持ち天神像が描かれた護符を撒いて金を乞う、いわゆる「願人坊主」なのですが、子どもたちは護符欲しさに「まかしょ、まかしょ(撒いてくれ、撒いてくれ)」と囃し立てたことから「まかしょ」と呼ばれるようになったそうです。
なるほど「まかしょ」とははかけ声だったんですね💡
余談ですがこの「まかしょ」は江戸にのみ存在した物乞いだったそうです🗼
まかしょが人気なわけ
今回は素踊りでご覧入れますが、本衣裳は白羽二重の着物を東からげにし、帯も角頭巾も手甲も脚絆も白ずくめで日本舞踊の中でも独特な変わった扮装をします。
クドキでは恋ゆえに身を持ち崩してまかしょに成り下がった姿が描かれていたり、そうかと思えばチョボクレでは廓ばなしになり、花の吉原の花魁道中や、秋の吉原の俄(にわか)、安女郎買いなどを銭錫杖を手にして面白く踊ります。
シャレの多い一風変わった趣向の舞踊で、くだけた曲も相まって踊り手としてたっぷりと見せどころがある演目と言えます。
上品さがある曲とは決して言えませんが😂設定もわかりやすく、肩の力を抜いた雰囲気が観る人にも踊る人にも大変人気のある1曲です。
「だらしない風情を腹の中におさめて、ある種の品格を持って踊る」ことが求められるかなり高度な演目なんですよね。こういった役回りを踊れるようになると舞踊家として成長できそうな気がします。(筆者談)
チョボクレとは
最初から最後まで見どころ満載の演目なのですが、強いて言えばやはり「チョボクレ」の部分です。
銭錫杖を持ってすごぶる軽快に踊るまかしょのチョボクレ。
チョボクレとは、江戸時代の門付け芸で「願人坊主などが錫杖や鈴を振りながら米や銭を乞うた」ことそのものを指しています。
ひと昔前では物貰いは表の門口から堂々と入ってきて「何かくれッ」と言っていたのだそう(今では信じられません💦)
しかも江戸の物乞いはタダで貰っては行かず、芸をやるとか、祈祷をやるとか、祝い詞をのべるとか、必ず人が喜びそうなものを用意していたというのだから、与える方も受け取る方も、何とも人情あるやり取りで興味深いなと感じ入ます🙌
🔹まかしょの最後の歌詞
〽︎そのご祈祷に乗せられて でれれんでれれん口法螺を 吹く風寒き夕暮れに 酒ある方を尋ね行く 酒ある方を尋ね行く
全てを物語っていて苦笑いせずにはいられません😂
美しい品格のあるものが日本舞踊の全てではありません。洒脱なものを題材にしたこういう踊り、是非楽しんでください!
立方(たちかた)
藤間華酔(ふじま かすい)