二十四節気とゆたかな暮らし#05
皆さんは、日々の暮らしの中で四季の移ろいや、日本の豊かな文化に触れる瞬間はありますか?実は、少し意識を向けるだけで、私たちの日常はより豊かに彩ることができます。
例えば、二十四節気という暦を知ると、季節の変化をより繊細に感じ取れるようになり、その季節に合わせた行事や習慣を取り入れることで、心にゆとりが生まれ、生活にも潤いがでてきます。
日本文化の素晴らしさを多くの方と共有したいという思いから、「二十四節気とゆたかな暮らし」でご紹介した内容の一部を、ここでお伝えしていきたいと思います。豊かな日本文化の旅に、皆さんもぜひご一緒しませんか?
今月のこよみ
立冬 11月7日(木)
空はまだ秋の装いを見せていますが、暦の上では今日から冬。紅葉はまだかなと楽しみに待っている所ですが、季節は確実に移ろいつつあるようです。朝晩の冷え込みが日に日に強くなり、上着の出番も増えてきましたね。
立冬を迎えると、スーパーやデパ地下では鍋物の材料が目立つようになります。温かい出汁の香りと湯気に包まれながら、家族や友人と囲む鍋は、冬の醍醐味。この季節ならではの旬の食材も豊富で、松茸や秋刀魚から牡蠣や鰤へと、少しずつ冬の味覚へと変化していきます。
日が暮れるのも随分と早くなりました。まだまだ秋の余韻を感じる立冬ですが、少しずつ冬支度を始めていきたいですね。
小雪 11月22日(金)
立冬から二週間ほど過ぎ、まだ寒さはそれほど厳しくなく、穏やかな晩秋の日々が続くころです。小雪という名の通り、北国では初雪の便りが聞かれ始めます。都会でも、朝方には薄っすらと霜が降りることも。
暖かな日差しの中にも、冷たい風が時折顔を出す季節。この程よい寒さが、温かい食べ物の美味しさを一層引き立ててくれます。
庭先では、冬の草花たちも静かに芽吹きの準備を始めています。人々も冬支度に追われる頃ですが、まだ本格的な冬の到来までは少し時間があるこの時期、晩秋の静けさを楽しみながら、心穏やかに過ごしたいものです。
今月の行事
新嘗祭 ~神様に収穫の感謝をする宮中行事~
収穫の秋も深まり、田んぼには稲穂の代わりに藁が積まれる風景が広がる季節となりました。11月23日は勤労感謝の日として親しまれていますが、この日は古来より「新嘗祭(にいなめさい)」として、その年に収穫された新米や農作物を神様に感謝を捧げる大切な祭事の日でもあります。
新嘗祭は、天皇自らが新穀を神々に供えて、収穫への感謝を捧げる宮中行事。稲作が始まった古代から続く、日本の農耕文化に深く根ざした伝統行事です。五穀豊穣への感謝と、翌年の豊作を祈る、実りの秋を象徴する行事といえるでしょう。
全国各地の神社でも、この時期になると新嘗祭が執り行われます。新米をはじめ、秋に収穫された野菜や果物なども供えられ、農作物の恵みに感謝を捧げます。また、新米で作られたお神酒や、収穫物で作られた神饌(しんせん)を供えることも。
現代では、田んぼや畑で汗を流す機会は少なくなりましたが、食卓に並ぶ一粒一粒の米や野菜には、今も変わらず多くの人々の想いと手間が込められています。新嘗祭は、普段何気なく口にしている食べ物の背景にある、農家の方々の労苦や自然の恵みに思いを馳せる機会でもあります。
季節の変わり目、新米の炊きたてご飯の香りに包まれながら、日々の食事に感謝の気持ちを新たにする、そんな静かなひとときを過ごしてみるのはいかがでしょうか。
旬のもの
駿河湾の恵み、秋香る極上の「サクラエビ」
透き通るようなピンク色の小さな体に、つぶらな黒い目。愛らしい姿で「駿河湾のルビー」とも呼ばれる桜えびは、秋から初冬にかけてが旬。実は、日本での漁場は駿河湾だけという貴重な食材で、漁は春漁と秋漁の年2回に限定されています。
小さな体ながら、栄養価は驚くほど豊富です。良質なタンパク質はもちろん、カルシウムが特に豊富で、殻ごと食べられることから手軽なカルシウム補給源として注目されています。また、抗酸化作用で知られるアスタキサンチンにより美容や健康維持に役立つ優れた食材といえます。
生食はもちろん、かき揚げや天ぷら、炊き込みご飯、また、釜揚げを乾燥させた「素干し」は出汁としても重宝されます。サクラエビならではの華やかな香りと旨味が凝縮され、チャーハンの具や、お茶漬けの薬味、パスタやサラダに振りかけると、見た目にも美しく、香り高いアクセントに。特に素干しは栄養成分が凝縮されており、手軽に栄養補給ができる優れた食材です。
最近では、サクラエビの資源保護にも注目が集まっています。限られた漁期と漁場で大切に育まれた桜えびを未来に残すため、伝統的な漁法と、新しい資源管理の取り組みの両立により、この貴重な恵みを守り継いでいく努力が続けられているのです。日本で唯一の漁場である駿河湾でのみ水揚げされる季節限定の特別な味わいと豊富な栄養価を兼ね備えた食材だからこそ、一層大切に味わいたい食材です。
おわりに
ハロウィンの賑わいが過ぎ去ると、街は一気に年末モードへと景色も変わってきましたね。これから迎える師走は、あわただしい日々となりがち。その前の11月は、心と暮らしの冬支度をゆっくりと整える大切な時期かもしれません。まだ穏やかな晩秋の日差しが残るうちに、来たる冬への準備を始めていきましょう。