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2020年に実施したことまとめ(社内編)

 2020年は、新型コロナウイルスの流行もあり、例年と異なる1年でした。取締役になって1年目の私は、もちろん会社を成長させようと、目線を上げて始まった1年でしたが、中小製造業である弊社も新型コロナウイルスの影響を受け、決して良い業績ではありませんでした。
 そんな中でも他の会社も同様かと思いますが、思った以上にkintoneを中心に社内システムを構築することができたので、まとめたいと思います。

1.自社の状況(2021年1月)

 当社は創業70年を超えた製造業です。大阪の本社のほかに兵庫県や東京などにも拠点があります。社員数は50名弱で、自分専用のPCがあるのは30名程度となります。
 2015年から受発注・在庫を管理する基幹システムを導入、2017年からkintoneを導入し、案件管理や顧客管理などに活用しています。
 ISO9001も取得しており、文書はほぼすべて様式・台帳管理がされています。そのため、紙で印刷することを前提としたエクセル、ワードデータが豊富にあります。
 社員のITリテラシーは幅広く、非常に詳しい若手社員もいれば、「ブラウザ」の意味を知らない方や、「検索はYahoo!の検索窓でしか出来ない」と思っている方もいます。
 その中で、私は2020年1月から専務取締役・事業部長となりました。(管理職になるのは社会人経験でこれが初めてです)

2.kintoneの全社化

 2020年1月から、これまで営業と修理にしか配布していなかったkintoneのアカウントを自分専用のPCを持つ30人全員に付与しました。
 これまでは営業の案件管理と修理履歴のみに利用、と限定的でしたが、これで全社に利用することで全社の印鑑の廃止に取り組めるとともに、年間費用の会社負担が増えることで、より一層使い倒さねば!と決意を新たにしました。(30人×1,500円×12ヶ月=!!!)
 ※この時点では新型コロナの流行は全く想定していませんでした。
 また、この前にkintoneのポータルをカスタマイズしました。その時の話もnoteに書いていますので、ご参考までに。

3.共有カレンダーの導入(カレンダーPlus)

 kintoneで全社に共有カレンダーを導入しました。それまでは拠点ごとにホワイトボードで1週間管理していましたが、他の拠点では分からず、社内の不在電話が多くありました。
 kintoneにはカレンダーplusプラグインを利用しています。KOYOMIと悩みましたが、中小企業では年間の固定費はできるだけ減らしたいので、前年度の業績が良かったこともあり、一括購入できるカレンダーplusを選びました。
 導入当初は社員にはあまり予定を入れてもらえなかったのですが、2回の転機があり、うまく定着してくれました。
 1度目は社長が入れるようになったこと。手帳を持ち歩く社長からすれば、kintoneのカレンダーに入れるのは不便でやりたくなかったのですが、経理部にいる社長の奥さんが「入れてくれると非常に助かる」と言ってくれたことから、社長がよく入れてくれるようになりました。トップが使うと、やはり社員も使ってくれるようになります。
 2度目の転機は新型コロナウイルスの流行。2020年春の緊急事態宣言により、当社でも在宅勤務や時差出勤を行ったことから、誰がどこにいるか、をカレンダーに入れるようになりました。
 このように、kintoneの全社導入第1弾である共有カレンダーは5ヶ月ほど時間はかかりましたがうまく定着する事ができました。

スケジュールアプリの利用状況

4.クレーム報告アプリ

 全社導入したきっかけの一つが、クレーム報告のアプリを作ってほしい、という要望があったことです。こちらも導入時にnoteを作成しているので、詳細はこちらをご覧ください。
 ISO9001に基づき、お客様からのクレームを書面で管理しています。営業→部門長→事業部長→クレーム対応完了→対応報告→承認、、、と承認プロセスがあり、その間に報告書(紙)がなくなってしまう、ということがあったので、紙と押印をなくすことで、管理しやすくしました。
 その結果、クレーム処置期間平均日数が前年度の45日から、31日間に大幅に減少することとなりました。

クレームの対応完了期間の減少

5.工数入力アプリ

 当社では、10年以上前から技術者の作業工数把握のため、エクセルファイルに工数を入力していました。
 内容としては、一人ひとりがそれぞれのファイルにデータを入れていき、1ヶ月が終わると経理部が一人ひとりのファイルを開いてまとめ、案件ごとに割り振り、集計する、という作業を黙々とこなしていました。
 そこで、kintoneに日時と、案件番号、作業項目を入力できるようなアプリを作り、自動集計できるようにしました。
 kintoneの場合、作業項目ごとに集計するには項目と同じ数の集計要のフィールドを作らないといけないので苦労しましたが、案件ごとや機械ごと、新入社員がどんな製品をつくっているか、ということがわかるようになりました。また、設計チームの在宅勤務があったので、具体的な作業時間を把握することが出来、業務管理もしやすくなりました。

工数入力アプリ

6.設計依頼アプリ

 こちらは印鑑をなくすプロジェクトの一貫として実施しました。出張中の営業が、この書類を提出するために印鑑を本社に預け、印鑑を代わりに押して提出するなどをしていたので、kintoneで管理することとしました。
 この頃には、説明もほどほどで社員がみんな使い初めてくれているので、プロセス管理を行うことが会社で一般的になってきていることを実感しました。

設計依頼アプリ

7.生産工程管理アプリ

 工場では、ロット番号を取得し、その進捗を管理をエクセルで行っていました。エクセルでは共同で開けないため、作業者が自分の工程が完了すれば手書きで記入して、それを工程管理者が手打ちでエクセルに入力し、また紙で印刷する、というアナログなことをしていました。(この仕組を作ったのも私なのですが、そもそもが当初は手書きだったことを考えるとちょっとずつ進歩しています‥)
 kintoneアプリでは、まずロット情報を入力することでロット番号を取得できますし、同時に作業指示にもなります。作業者が自分の作業をタブレットを用いて入力することで(キントーンは入力しづらいのが欠点)、進捗管理ができるようになりました。まだ途中ですが、工場の中にもkintoneが入っていくようになりました。

作業番号台帳アプリ

8.不良率管理アプリ

 7.生産工程管理アプリでロット情報をkintoneに入れることで、そのデータを用いた情報の入力がしやすくなりました。これまでロット番号、製品コード→製品名→作業日をそれぞれ手打ちで入力していたのが、ロット番号を入力すれば、それ以外の情報が自動で入力されるようになりました。

9.設備管理アプリ

 設備管理アプリは、初めて社員からの要望100%で制作したアプリです。過去noteに記載しましたので詳細はこちらをご覧頂けますとありがたいです。

設備管理アプリ

10.設備の持出台帳アプリ(アプリ制作者の育成)

 9.設備管理アプリが出来、その持出管理をしたい、とのことで持出台帳アプリを製作することとなった。ここで、新入社員に「作ってみて」と依頼したところ、ほとんど質問されることなく1日で作り上げてしまいました。あとで聞きに来ることを想定して1しか伝えてなかったのに自分で調べて10を作ってしまい、「恐ろしいやつ」となりましたが、頼もしいkintone管理の後任が出来た、と嬉しくなりました。
 このアプリの特徴は、プロセス管理のステータスを、9.設備管理アプリにも表示できるようにし、どちらのアプリを見ても、貸し出し状況がわかるようにしてある点です。rex0220さんの関連レコード集計プラグインとともに「こういうことできるよ」と伝えると当日中に作ってしまう、本当に優秀です。

11.カイゼン提案アプリ

 入社してから3年でかなりの数のカイゼンに取り組んで来たつもりです。社員と話していても、「ここを変えたい」という声を聞くようになり、それなら自分で変えてみてほしい、そしてそれをしっかり評価する会社でありたい、と思い、カイゼン提案アプリを作成しました。

 改善していく過程を部署のみんなが見てくれたらよいかなぁと思ってはじめました。そうしている中で他の課でも新しく改善をスタートされてきたのでそこが一番良かったと思っています。

 導入して3ヶ月、まだまだ数は少ないですが、社員の一人からこのようなコメントを頂き、もうすでに導入した価値があるな、と感じます。そんなすぐに成果が出るわけでは有りませんが、チラチラとアプリを開いて進捗を確認してしまいます。
 2021年1月(導入後3ヶ月)現在で、カイゼンの提案数は11件、完了は5件、年間カイゼン額は15万円です。まだまだですが、これが蓄積していってくれるのが嬉しいです。

12.休暇申請アプリ

 経理部に対してkintone化したいものは、という質問を行うと、真っ先に回答が出てきたのが休暇申請書でした。
 これまではスケジュール含め、自分のPCを持つ方のみを対象としたアプリでしたが、この休暇申請アプリはPCを持たない社員を含め全社員に対しての初のkintoneアプリでした。
 注意した点は2つ、1つは社員名をルックアップで取得したこと。全社員分のアカウントは作成するとコストが高くなるので、社員名簿アプリを作成し、そこから社員名を取得することにしました。
 もう一つは時間の集計。お昼休みを抜いた時間を集計するために計算式プラグインを用いて正確な時間が出るようにしました。
 この結果、ひと月に40枚の紙を削減出来ました(…小さい)。なにより、部署間でこの書類を押印するために輸送する手間が省けることが出来ました。

13.研修報告アプリ

 従来、社内・社外の研修を行うと紙で提出していた研修報告を、kintone化しました。従来の業務の流れは「受講者」が報告書を書き「社内講師」が押印し、「社長」が押印し「経理部」と渡り、経理部で手書きで個人ごとの台帳を作成していました。
 この手書き台帳、書道を習う社長の奥さんの達筆で書かれており、過去10年、100枚以上の束は一種の作品のように感じます。
 12の休暇申請アプリとともに、このアプリは60歳になる社長の奥さんの業務負荷を少しでも下げようと取り組んだ成果です。 導入前は「こんなん使えない!」とか「仕事を取るな!」とか言われたらどうしよう‥とドキドキしながら進めてましたが、導入後は「楽になった」と言っていただきましたし、色分けや一覧表示について追加要望もしていただき、積極的に使ってくれるようになりました。

14定価表アプリ

これまでは、エクセルで作られた、紙で提出することが前提の定価表しかなく、提出する前提のために情報量も少なく、かつ検索もしづらいフォーマットになっていました。営業に確認すると、ここ3年、代理店やお客様に紙で提出したことがない、とのことでしたので、紙の出力はもうやめました。
 定価表をkintoneで一覧で表示できるようにし、また電話で問い合わせが来るような項目を追加して、商品マスターのようにしました。※実際には、設計情報などと同じ製品コードを共有し、アプリは分けているものの、情報は共有できるようになっています。
 また、アプリの説明部分に分類ごとに製品一覧のリンクを設定することで、電話対応するときもマウス操作だけで特定の商品の金額を回答することができるようになりました。これにより、これまで営業事務だけしか回答できなかったことが、別の部署でも電話で即答できるようになりました。

定価表

15.入金日管理機能の追加

 当社は、大型機器の受注もあり、手形取引が多くあります。その中で、営業側から経理部へ受注日と入金日を報告するのですが、それをkintoneにより自動化しました。
 代理店マスターに取引条件を入力し、手形の場合は、締日の○日後という情報を入力します。
 案件情報に、案件の納品日を入力すると、代理店の締日と手形の振出日が自動で計算されるシステムを構築しました。
 これ、営業部長から「できるやろか?」と言われ「出来ますよ!」と軽くOKしたものの、今までで一番長く、難しい計算式となりました。

案件締日計算

 実際にデータが入った後の達成感はなかなかの物がありました。

回収表

 ここまでがkintoneによりシステム化、デジタル化によるカイゼンで、下記はGoogle のスプレッドシートを用いたカイゼンや、その他のアプリケーションの導入についてです。

16.受注・在庫状況管理のスプレッドシート化

 当社は、工場が兵庫県、営業が大阪にいる状況のため、このやり取りを電話、slackとエクセルシートで行っていました。
 共通のエクセルシートで情報のやり取りを行っていたので、しばしば「あ、編集したいのでエクセル閉じてください」という電話のやり取りをし拠点間で行っており、非常に無駄だなぁと感じていました。
 エクセルを単純にスプレッドシートに変えるだけではつまらないな、と思い、色々詰め込んだ結果、年初から計画してから実施は8月になってしまいましたが、これにより情報伝達速度は格段に上がったと思います。
 具体的には、受注残データと製品在庫データを同じデータにすることで、自動で残在庫が集計され、また現在生産中の仕掛品の情報も追加することで、納期回答のスピードが格段に短縮されました。
 また、入力回数やエクセル数も減り、工場と営業、双方の入力作業も減らす事ができました。

17.Zoomの導入

 当社は、社内においては拠点間の打合せが多いのでSkypeを利用していましたが、2020年4月の緊急事態宣言時にZoomを契約し、活用しています。これまでは拠点ごとに行っていた朝礼が、在宅勤務者、出張者、別拠点も含めて全体で行う事ができるようになり、顔を合わす機会を増やすことが出来たのは良かったです。また社長自ら積極的に利用していることもあり、社内のアレルギーもなく順調に利用頻度を増やすことが出来ています。

18.全社研修会のWEB開催

 当社では、毎年1回、全社員が一同に介し、研修会を行っていました。各部門が自分たちの仕事について発表する機会でしたが、2020年は全社で集まれなかったため、Zoomを利用したWEB開催で行いました。
 WEBプレゼンにみんな慣れていないため従来の発表時間を短くしましたがその結果、発表者が増え、いつも聴くだけだった社員にも発表の機会ができたこと、またZoomのブレイクアウトルーム機能を使ってグループワークを行ったり、これまでと違う取り組みができました。

19.新商品開発会議の開催

 今年は、社外に出る時間が少なかったこともあり、社内の会議を増やしました。その中で、社員からの希望で新商品開発会議を主催してほしい、という意見がありましたので、実施しました。もともと若手を巻き込んで新商品を作りたい、という思いはあったのですが、誰もついてきてくれなかったら、とダラダラ先延ばしにしていました。
 これについては、実際行ってみた結果、2つの新商品開発をスタート出来ましたし、それ以外にもいくつかの種がありました。
 詳細はまた別で記したいと思いますが、ここから新しい会社が始まる!と若手を含めて感じる事ができた良い機会でした。2020年だけで計5回実施しました。今後も継続的に新商品を生み出していきたいと思います。

20.Google Workspaceの導入

 正確には本格導入は2021年1月からですが、当社ではGoogle Workspaceの導入を決めました。こちらの経緯についても、近日中に投稿する予定です。
 導入を決めたのは、知り合いの中小企業の社長から「Google Workspaceは、新しい働き方を示してくれる」という言葉を聞いたから。
 導入をずっと悩んでいましたが、オンプレミスサーバーが壊れたことを機に導入することにしました。

まとめ

 以上、2020年に社内において取り組んだことを箇条書きにしてみました。こうして振り返ると、kintoneを始め、様々な取り組みが出来たと思います。そしてシステムの導入には、新型コロナウイルスの流行による働き方の変化があったことは間違いないですが、良かった点は流行してから動き出したのではなく、流行前にシステム化を進めていたことです。
 例えば流行時にkintoneのカレンダーがなければ、別のスケジュール管理が定着してしまっていたかもしれません。「会社にいないからホワイトボードのカレンダーをやめてkintoneを使ってみようか」と今までのルールを一足飛びに変えることができました。
 
 しかしながら、これだけ取り組んでも新型コロナウイルスの影響を受け、当社の業績は昨年と比べて大きく下降しました。
 経営者、事業承継者としては社内の体制構築を一段落し、2021年は新しい価値を生み出す仕事に取り組んでいきたいと思います。

以上、ご一読いただきましてありがとうございます。

わぁわぁ言うております、お時間です。さようなら。

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千種純(三田理化工業_RACOON)
大阪市在住の89年生まれ 父親経営の中小メーカーに在職。 グロービス経営大学大学院卒業 事業承継や、組織の変革、文系から見た社内システムの構築について掲載予定 好きなもの:サッカー(ガンバ大阪ファン)、漫画(オールジャンル)