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スリム国ジャパンでアメリカ人を健康にする長期滞在型レストラン構想

 外国人観光客が増えました。気になるのはアメリカ人旅行者の体型。OECDレポートによるとアメリカ人の73.1%は肥満を含む太りすぎです。ハンバーガーにフライドポテトにコーラ。おいしいですね。一方日本はOECD諸国中もっとも肥満が少ない国です。「スリム国ジャパン」の魅力でアメリカ人を健康にする長期滞在型の飲食店ビジネスができそうです。日本の経済的なやせ我慢はもう限界。この企画で日本を太らせたいですね。
(ホームページは「ニッチな飲食店」で検索してください)

●平均医療費1万ドル。ターゲットは70%が肥満のアメリカ人

 OECDのレポートによるとアメリカの一人当たりの医療費は年間で10,948ドル。OECD諸国で群を抜いて高額です。盲腸の手術でも300万円はかかるようです。
   
 アメリカの健康保険は日本とは異なり複雑です。未加入の人もいます。また医療過誤の訴訟に備え高額な医療費になっているようです。アメリカ人にとって健康は命の問題だけではなく「医療費で破産する」問題でもあります。
  
 さらにアメリカ人の平均寿命は78.9歳でOECD諸国の平均以下です。「アメリカ人は毎日懸命に歯磨きする」と聞いたことがあります。だれもが健康保険を使える日本人とは意識の次元が違っているようです。アメリカは健康づくりに問題があります。
   
 健康の基本は食生活です。元祖アメリカのハンバーガーにフライドチキンとコーラ。炭水化物・油脂・糖分などカロリーが多すぎます。
   
 OECDのレポートによるとアメリカ人は「肥満を含む太りすぎの割合は男女平均で73.1%」となっています。女性は69.0%。男性は77.3%とOECD諸国でも最高値になっています。
   
 日本人は男性33.0%、女性22.3%。ほかの国と比べて格段に低い数値です。貧しいと思われて、また終戦直後のようにアメリカから脱脂粉乳が届くかもしれません。
   
 近ごろの研究で太らないためには、タンパク質や野菜を一定以上摂取してカロリーをコントロールすることが大切なのはわかってきています*。肥満の解消には食習慣を変えることが重要になります。
   
 アメリカは3億人以上の人口。さらに日本の4倍以上のGDP大国。高額所得者がいます。オーガニック、ビーガンなど先進的な考えをもつ人もたくさんいます。新しい飲食店ビジネスのターゲットはアメリカ人です。


*厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると18歳以上の推奨タンパク質摂取量は、1日男性65g、女性50gとなっています。また同様に「健康日本21」では1日野菜350gの摂取を推奨しています。

●世界に誇る食事と温泉。潜在顧客層は40万人のアメリカ人

 海外からの観光客も回復してきています。2023年9月の米国からの訪日客数は156,600人でした。コロナ禍前の2019年9月と比較して23%も多くなっています(日本政府観光局)。
  
 国土交通省観光庁の調査では、来日前に外国人観光客がもっとも期待するのは「日本の食事」。以下ショッピングや自然などが続きます。次ぎに来たらなにをしたいかを尋ねると、トップは同じ「日本の食事」。そして2位には「温泉」があがってきます。来日して日本の温泉に魅了されたのだと思います。日本の魅力は食事と温泉と言っていいですね。
   
 アメリカ人観光客の3分の1は来日が2回目以上のリピーターです(観光庁令和元年調査)。2023年の訪日アメリカ人はおそらく180万人を超えると思われます。となると約60万人がリピーター。その約70%、40万人が「肥満を含む太りすぎ」です。長期滞在ができる客数はぐっと絞られことでしょうが、それでも市場は十分に存在すると言えます。
  
 OECD諸国でもっとも肥満率が少ない「スリム国ジャパンのおいしい食事と魅力的な温泉で肥満解消を」と言えるはずです。


●世界から追い風。スパ(温泉)で療養する「ウエルネスツーリズム」

 ウエルネスツーリズムの時代です。リピーターの増加でありきたりの観光旅行の時代ではなくなりました。厚生労働省でも「医療ツーリズム」に力を入れようとしています。病気の治療のためにやってくる海外の人たちを受け入れるビジネスです。すでにアジアではシンガポール、韓国、マレーシアなどが一歩進んでいるようです。
    
 ウエルネスツーリズムは流通科学大学教授西村典芳の『ウエルネスツーリズムによる地方創生』によると「…構成要素を、休暇中のヘルスケアや治療・回復、リラクゼーション、食事療法、運動、スキンケア・美容などがあげられます。」としています。
    
 具体的にはスパ(温泉)とウォーキング、森林浴などで長期間の療養と保養をすることです。
   
 先進国ドイツでは100年以上の歴史から300か所以上の専用の保養地があり、専門の医師などもいて保険も適用されるようです。
   
 この考え方を参考に、日本の食事、温泉、ウォーキングや地域イベントへの参加などで長期的に滞在する仕組みをつくります。これによって健康的な食事の習慣を身につけられます。

●実施案。アメリカ人を健康にする長期滞在型レストランとは

 朝・昼・夜の三食の提供がメインです。温泉とウォーキングと地域交流のための宿泊施設を設置します。同じ場所ではあきてしまうでしょう。1か所に1週間ずつ滞在し4か所で一か月を過ごすプログラムにします。
  
 マーケティングの基本の4P(製品・場所・価格・プロモーション)でざっと全体を考えてみましょう。
(1)製品(プロダクト):健康な食習慣をつくる1か月滞在型プログラム
 日本食の特徴を生かすことが基本になりますね。ご当地の和牛やブランド豚、地域の新鮮な魚介類、豆腐などの大豆タンパクも食べられるようにしましょう。地元の新鮮な野菜や果物のサラダやデザートは魅力的なはずです。低脂肪と植物性タンパク、食物繊維が多い日本型の食事です。
  
 朝・昼・夜の1日3食×30日で90食です。シェフや料理長と管理栄養士が綿密にメニュープランをたてる必要があります。アメリカ型の食事から日本の食事になじむような工夫も必要です。
   
 「どうしてもハンバーガーが食べたくなったと脱走する客が出たらどうするか」。「専任の捜索隊を用意…」。ここでは考えなくていいですね。
    
(2)場所(プレイス):夏は涼しい地方4か所、冬は暖かい地方4か所
 日本の酷暑を考えると場所選びは大切です。あとは温泉ですね。世界でも有数の温泉国日本、全国どこでも大丈夫そうです。暫定的に2コース4か所ずつ選んでみました。いかがでしょうか。
    
 北海道。説明はいりませんね。瀬戸内海の美しい夕日、三陸の自然と海の幸、富士山と温泉…。気が付けば自分の行ってみたいところばかり。

(3)価格(プライス):総額は必然的に高価格
 食費、宿泊費、活動費、移動費用。1か月です。さらにサポートスタッフも。かなりの費用がかかるはずです。しかし円安でもあり、少し高くても大丈夫そうです。
   
(4)プロモーション:コンテンツ・マーケティングと口コミ
 アメリカからの集客なのでネットがメインになります。大切なのは利用したお客さまの口コミです。一般の飲食店ビジネスも同じです。友だち・知人からの口コミでネットの情報で確認しています。さまざまな角度からの情報(コンテンツ)を豊かに十分に提供し、双方向のコミュニケーションができる体制が必要です。

●まとめとして。ウエルネスツーリズムで次のステージに

 次のビジネスターゲットも考えましょう。世界で糖尿病患者がもっとも多いのは中国です。約1億4090万人。次いでインド。約7420万人です(2023年6月26日朝日新聞)。
   
 糖尿病になってしまったら病気治療が必要です。問題は糖尿病にならないようにすること。過剰なカロリーを摂らない食習慣です。日本の食事と温泉を中心にした滞在型飲食店ビジネスなら食習慣の改善ができるはずです。 
   
 中国とインド。ともに10億人を超える人口で大きな市場です。日本に長期に滞在する余裕のある層も十分存在します。同じアジアなので米などの食事に親和性があります。日本でのウエルネスツーリズムで日本食のファンになってもらいたいですね。
  
 地域特有の美食を求めて旅する「ガストロノミーツーリズム」も日本のおいしい食事なら狙えます。しかし牛肉と鮨、高級ワインとフルーティな日本酒の連続では満足できません。これからは「健康をつくるおいしい食事」です。
   
 食に関する考え方が問われるものと思います。肥満の人が少ない「スリム国ジャパン」。温泉の国でもあり世界のなかでも特に魅力的な日本の食事であるならば、世界からのウエルネスツーリズムの観光客を呼び込めるはずです。
   
   
 私もスリムです。ここ何十年も。太りたいですね。いやいや財布のことです。ポイントカードじゃなくて…。

<参考文献>
藤澤理恵『図表でみる医療2021:日本』OECD雇用局医療課2021年11月9日 
西村典芳『ウエルネスツーリズムによる地方創生 ~健康長寿を目指して「お散歩で日本を元気にする」』カナリアコミュニケーションズ2022
羽生正宗『医療ツーリズム アジア諸国の状況と日本への導入可能性』慶應義塾大学出版会 2011
ジョージ・L・キング、ロイス・フリッピン/桐谷知未訳『世界的名医が教える脱・糖尿病の最新戦略』日経BP 2017

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