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ちぎり絵物語 2

『不思議なF子』

何を言われても「ファンタスティック!」としか言葉を発しない女の子がいた。
社会からは人とまともに話すことができないと判断されているその女の子はあまり人とコミュニケーションを取らなくてもいい小さな町工場で働く事になった。

その工場で一緒に働いていたのは少し年上の男の人と女の人。
この2人はそれぞれに家底があるものの毎日顔を合わすうちに仲良くなり恋に落ちていた。
誰にも言えない秘密の関係。

「ファンタスティック!」何を聞いてもその言葉しか発しないF子にはどうせ伝わらないだろうとその男の人と女の人はF子の前では堂々と隠し事や秘密事を楽しく話し合っていた。

とある暑い夏の日のこと。
社長が従業員に気を遣って「おーい。暑い中ご苦労さんっ!なんか飲み物買ってくるけど何が飲みたい?」と3人に聞いた。

「私は冷たい麦茶でお願いします!」
「僕は三ツ矢サイダーで!」

「ファンタグレープ!」

。。。

一瞬工場内の空気が止まった。

「F子。。。今お前。。。なんて言った。。。」

「ファンタスティック!」

聞き間違いやったんか。男の人と女の人は確かにF子から放たれた「ファンタグレープ」という言葉を聞き逃さなかった。

「どっちやF子っ!お前ほんまは人の言うことを理解できるんか!」

男の人と女の人の額に冷や汗がこれでもかと流れ落ちた。
今までF子の前だけで話をしていた秘密事や隠し事のほとんどを本当はF子に理解されていたんじゃないかと焦りを隠せなかった。

「もう一度聞くぞF子。何が飲みたい?」

社長がF子に優しく聞く。

するとF子は

「ファンタグレープ」

真顔で答えた。

一緒に働く男女はその後二度とF子の前で秘密事を話さなくなった。

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