名前も知らないごきげんよう
今のバイト先で働き始めてから毎日行き道にある喫茶店に通うようなった。
初めてその喫茶店に入った日のことは今でも覚えてる。
人を寄せ付けないようなツンとした印象のママがキッチンに立っている。
話しかけていいんかな。
その話しかけにくい雰囲気からいつもママが立っている奥のキッチンから1番距離のある入り口の横の椅子に座るのが僕の決まりやった。
個人で経営するタイプのお店やから毎日行くにつれお店の中では2人きりという日もちらほら出てきた。
毎日顔を合わせてたら、次第にママから話しかけて来てくれるようになった。
毎日の僕が座る位置も入り口からキッチンの方へだんだん近づいてくるようになった。
今では食パンを一枚サービスしてくれたり、ゆで卵をサービスしてくれたり他のお客さんからの差し入れなども分けてくれはったりする。
ママは年中無休でこの喫茶店に立ち続けてるけど、お客さん達が全国各地のお土産やその時にあった話を持って帰ってきはるからママは色んなことを知っている。
僕もどっかへ出かけた時はこの喫茶店にお土産を持って行ったり、その時あった話をママに話したりする。
そんな時間が楽しい。
で、また後日に常連さんに会う事があればこの前のお礼を伝えたり、逆にお礼をしてもらえたり。
気持ちいい関係がこの店にはいっぱいある。
ママは僕に名前も職業も聞かない。
僕もママの名前を知らない。
今まで名前も知らない人と毎朝顔を合わせて話をするという経験がなかった。
自分の中で初めてで、不思議に思うこの人との距離感がなんかすごく心地いい。
毎朝顔を合わせてたわいもない会話をする。
ただそれだけだ。
この喫茶店は豊かな感じがする。