ひとりぼっちのユウタ
1人で過ごす事が好きなユウタという少年がいた。
ユウタの実家は喫茶店を営んでいて、ユウタはそこに来る常連のおっちゃん達と話をする時間が大好きだった。
おっちゃん達は色んなことを教えてくれる。
昔のファッション。
昔してたちょっとヤンチャな事まで。
ユウタにはその話のどれもが今自分の身の回りにいてる人や時代とは少し違ってキラキラして見えた。
ユウタは中学生になると周りの友達とはあまり馴染めないなと感じることが多くなった。
ある日、家のクローゼットにじいちゃんが昔着ていたであろう服を見つけた。その服を自分で着てみると意外にもカッコよく思えた。
ユウタはおじいちゃんのお下がりのその服をとても気に入った。
ユウタは流行りや時代なんかに囚われず自分のファッションを楽しんだ。
学校の遠足にもお気に入りのおじいちゃんのお下がりを着て出かけた。
周りの友達はユウタの事をバカにした。
「なんやねんその服。いつの時代のやつやねん笑」
自分でいいと思った服を着ているだけやのに。
周り子と少し違うだけでみんなからバカにされる。
ユウタはだんだんと周りの友達からから孤立していった。
ユウタは自分の周りから友達がいなくなって行くのをとても寂しく感じた。
その影響かユウタはよく1人になり本を読むようになった。
給食の時も誰と喋ることもなく1人読書。
給食の時間が終わるとチャイムが鳴ったがその本には栞がついていなかった。
ユウタは給食についていたちっちゃな紙のおしぼりを栞代わりに使った。
「お前。それおしぼりやで?栞も買ってもらわれへんの?可哀想に」
ユウタを横目で見ていた友達が笑いながら言った。
「別におしぼりとしてだけじゃなく、今欲しいのは栞やったからちょうどそこにあったおしぼりを栞として使う事の何が悪いねん」
ユウタは逆に人におしぼりと言われたらそれをおしぼりとしてしか使えないその友達の方がおかしいと思った。それと同時にその言い方にとても腹が立った。
ユウタは周りのみんなが自分の事をわかってくれたり面白がってくれる事がないのをとても寂しく思った。
だんだん学校に登校する事も減り、中学生やのにタバコを吸うようにもなった。
夜には一人で学校へ出かけ校舎の壁にアルコールマーカーで大きく落書きなどをして遊ぶようになった。
壁に絵を書いてる時間だけがユウタを満たした。
「ユウタとは遊んだらあかんで」
周りの大人は自分の子供をできるだけユウタに近づけないようにした。
ユウタは常にひとりぼっち。
卒業も近づいたある日、学校のクラスでは最後にクラスメイトとの親交を深めるために各クラスの教室で一晩寝泊まりするという宿泊行事が行われた。
なんとも楽しそうな行事だ。
楽しく宿泊行事が行われていたがそこにユウタの姿はない。
もー誰もユウタの事を気にかける友達なんていなかった。
楽しい宿泊行事はあっという間に時間が経ち、消灯時間になった。
AM2:00みんなが寝静まった頃ユウタはまた1人学校に現れいつものように壁に落書きをし始めた。
とその時。
学校を大きな地震が襲った。
教室の中にいる生徒たちは驚き同時にどうしていいのかわからなくなった。
街の電気は停電し、どこに避難していいのかもわからない。
余震があるかもしれない。
とにかく運動場まで避難したいが建物の中は真っ暗のまま。
手元を照らすライトも何もなく身動きが取れない状態が続いた。
泣き出す生徒もちらほら出てきて、先生達もパニックになった。
そんな時、廊下の向こうから少しの灯りが近づいてきた。
1人の生徒が叫んだ。
「ユウタや!」
そこには灯りを持ったユウタがいた。
「みんな!俺が先頭で足元を照らしたるからついてこい」
教室にいる先生、生徒は皆ユウタが持っていた灯りを頼りに運動場へ避難した。
余震もなく、誰1人怪我することもなく運動場で朝を迎える事ができた。
「ユウタ。なんであの時灯りなんか持ってたん」
先生の1人がユウタに聞いた。
「いや、俺友達もおらんし宿泊行事なんかおもんないからさ、またいつも通り夜中に1人で学校きて壁に落書きしててん。ほんならあの地震。みんなのワーキャーって声が聞こえてきたから持ってたアルコールマーカーにライターで火をつけて灯りにしてみんなのところに向かってん」
その時だけはユウタがタバコを吸っていること、アルコールマーカーで校舎に落書きをしていた事を注意できる先生なんていなかった。
その日をキッカケに周りの友達はユウタの事をヒーロー扱いするようになった。
あんだけバカにしたおじいちゃんのお下がりファッションを真似し出す生徒まで出てきたぐらいに。
ユウタの周りには常に人が集まるようになり、同級生や後輩はユウタの言動やファッショなどを真似し出すようなった。
ユウタを崇拝する生徒まで出てくるようになった。
今やユウタの周りには常にたくさんの人がいる。
が、ユウタの中の寂しさは埋まることがなかった。
ユウタは普通に接してくれる友達が欲しいだけやった。
結局ユウタはずっとひとりぼっちだ。