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鴨島1ワークキャンプ参加者レポート1

自己紹介

はじめまして!2022年鴨島1ワークキャンプリーダーを務めましたしゅうです!3月17日から31日の15日間の開催で、前半2人・後半1人の参加がありました。共催団体は徳島市内を中心にまちづくりに取り組むNPO法人びざん大学です。

徳島では2020年夏の中長期ワークキャンプで約一か月滞在していました。そのときは花ロード(徳島駅前の道路沿いの花壇に花を植える活動)、遊覧船の運営サポート、徳島市内の小学校や保育園で子どもと交流など活動が多岐にわたりました。なかでも印象に残っているワークがオンライン児童館プロジェクトです。コロナ渦における子どもたちとの新たな関わり方として鴨島児童館とオンラインで交流するという取り組みです。鴨島ワークキャンプではその開催時期の状況により、実際に児童館に訪問したり、子どもたちとオンラインで交流したりと繰り返してきました。どれも新しいことに挑戦し、さまざまな成果を上げてきました。この流れを引き継ぎ、子どもたちや地域との関係をより発展させたいと思い、リーダーに名乗り上げました。

背景と目的

鴨島児童館は徳島県吉野川市にある公立の児童館です。0~18歳からの子どもたちが無料で利用できる施設で、子どもたち同士が年齢の差を超えてみんなで仲良く遊ぶ空間です。そのなかに協調や摩擦が生まれ、子どもたちが成長していくという教育の場としての意義もあります。また児童館では、乳幼児向けの読み聞かせや保護者向けの子育てサポート、児童向けの生け花、俳句、絵画教室などさまざまなイベントを積極的に実施しています。長期休暇はたくさんの子どもたちが遊びに訪れ、繁忙期を迎える児童館の運営のサポートをするためにワークキャンプが開催されます。

徳島の若者は大学を契機に県外へと出ていくケースが多いのが現状です。有名企業に就職するには県外に出ていくほかありません。徳島におけるこの教育や雇用の機会の少なさが人口流出を進め、街の活気が失われていきます。決して徳島に魅力がないわけではありません。豊かな自然と人々のあたたかいぬくもりはむしろ教育に向いているのではないでしょうか?機会不平等の問題への解決にアプローチすべく、ワークキャンプを通じて子どもたちと交流の場をつくります。県外から学生が集まり、自分たちがもっているスキルや経験を活用し、子どもたちに貴重な学びの機会を提供します。子どもたちが新しい体験から「気づき」を得ることで視野を広げてほしいという願いがあります。

以上の背景をもとにワークキャンプの開催目的は以下の3点です。

  1. 繁忙期の鴨島児童館の運営をサポートする

  2. 鴨島児童館の子どもたちに出会いと多様な学びを届ける 

  3. 徳島という地域の現状を肌で感じるとともに、地域活動への参加を通じて地域課題解決の方法を考える

2022年鴨島1ワークキャンプの目標

鴨島ワークキャンプで意識されるキーワードのひとつに「国際」があります。過去にも子どもたちに国際交流の機会を提供しようという試みが行われており、主にオンラインでの外国人との交流が実現しています。今回のワークキャンプでは異文化にスポットライトを当て、「イースター」を紹介しました。都心部では徐々に広がりを見せているイースターですが、徳島ではほとんど浸透していません。クリスマス、ハロウィンと並ぶ春のイベントとして海外では一般的なイベントです。イースターに関する異文化体験により、世界に目を向けるきっかけをつくることを目指しました。

しかし、ワークキャンプが一方的にイースターを提示するだけでは不十分です。子どもたちと一緒に児童館をイースター仕様に作り上げることこそに達成感があります。したがって装飾に用いる工作は子どもたち主体で制作してもらいました。子どもたちが積極的に取り組むことで、自主性や協調性を体得してもらう意図があります。工作を通じて自分の興味のあるものや得意なことを見つけるきっかけになることを期待しました。また自分たちが作り上げたものに愛着を持ってもらい、イースターに関心を持ってもらうという狙いもありました。

鴨島ワークキャンプは他と比較して特徴的な性質があると考えます。例えば農業のワークだと収穫や草刈りなどのように成果が可視化しやすく、参加者も労働力として役に立ったという実感を持てます。一方で鴨島はテーマが教育や地方活性化と漠然としており、何をもって達成できたかを図るのが難しいです。
また、ワークキャンプの目的として新しい経験を提供するとありますが、子どもたちがそれを求めているとも限りません。メンバーがやってほしいことに付き合わせるというのは一歩間違えれば単なる自己満足に陥ってしまい、ボランティアの意図に反してしまします。子どもたちは走り回っているほうが楽しいのです。ワークキャンプのやりたいことと子どもたちのやりたいことのバランスが重要なポイントです。
これには関係づくりと環境づくりが不可欠です。前者は子どもたちとの信頼関係を築くことを指します。よく知らない人にイースターといわれてもおそらく興味を示さないでしょう。子どもたちと全力で遊び仲良くなったうえで、ワークキャンプから新しい物事を提供するという流れが効果的です。後者は子どもたちが関心を向けるように雰囲気を作り出すことを指します。児童館内の壁の装飾やイースターエッグペイントを実施しました。工作や装飾によってイースターを身近なものにするための工夫をしました。

以上から今回のワークキャンプの目標は以下の2点です。

  1. イースターを通じて国際性を涵養する

  2. 新しい気づきを促す

これらの目的達成のため、子どもたちとの関係づくりおよび環境づくりを行いました。

ワーク内容

フェーズ1 関係づくり・環境づくり

ワークキャンプの前半はコロナの影響により、児童館にくる子どもの数が少なかったです。それでも遊びに来てくれた子どもたち一人ひとりと向き合い、親睦を深めていきました。ドッジボールやサッカー、鬼ごっこなど子どもたちがやりたい遊びに混ざって交流しました。遊んでいくうちに、この子は負けず嫌いだとか、あの子はしっかりしているだとかいうように性格はわかってきました。児童館では、年齢はバラバラでもみんなで同じ遊びをします。年長者はリーダーシップを持ち、年少者は周囲に協力します。それぞれが自分の立ち位置がわかっていて、すべてがうまく調和してみんなが楽しめる環境が生み出されていました。なにより遊んでいるときの子どもたちの目は輝いていました。ここにワークキャンプの企画が入り込む余地が果たしてあるのか不安でした。

みんなで鬼ごっこ!

少しずつ部屋の壁にイースターの装飾を始めました。子どもでも簡単に作れる折り紙や工作をメンバーで試行錯誤しました。メンバーでもサンプルを飾り、子どもたちが興味を持つように工夫しました。何人かつくってみたいという子どもがいたので装飾の効果は十分あったと思います。

フェーズ2 イースター紹介

ワークキャンプ中盤になるとコロナの規制も緩和され、児童館のイベントも開始されました。子どもたちも少しずつ遊びに来るようになってにぎやかになってきました。

はじめに取り組んだのはイースター紹介動画の制作です。子どもたちにわかりやすくイースターについて教えるため、映像で伝えることにしました。動画では、イースターが外国の文化であり、たまごやウサギが象徴であることを説明しています。また今回新たな取り組みとして、コロナが心配で児童館に来れない子どもたちへのアプローチにも挑戦しました。自宅で工作をして児童館に持ってきてくれた子には、イースターエッグをプレゼントするという企画でした。動画末尾で宣伝して、児童館に行かなくてもワークキャンプに関わることができるようにしました。
この動画はイースターエッグ(後述)の前に子どもたちに見せました。ただし3分間の動画を集中してみるのは難しく、うまく活用できませんでした。動画の内容や尺に関しては今後の課題として残りました。

また、エッグペイントの体験も行いました。市販のプラスティックを用意して、ペンや絵具で自由に塗ってもらいました。これはかなり子どもたちに人気で自分の作品作りに没頭していました。手を絵具だらけにして塗り絵をするというのは普段できないらしく、「絵具ってこんなに楽しいんだ」とつぶやいていた子もいました。イースターエッグは館内の装飾に使用する予定でしたが、自身の作品に愛着を持ってくれたらしく、喜んで持って帰ってくれました。家庭でもイースターという新しい海外の文化を共有してくれたと思います。

エッグペイントに熱中!

さらに、子どもたちとの関係性も徐々に深まってきたので、装飾の手伝いも提案していきました。ウサギの折り紙やたまごの形をした色紙の塗り絵、輪飾りなどを作ってもらいました。こちらも子どもたちが持って帰ってしまう場合が多く、装飾に使う分はあまり確保できませんでした。後日、自分の作った作品を探して、「これはわたしがつくったの!」という情景を想像していましたが、挫かれてしまいました。子どもたちの手によって館内を装飾したいという趣旨がうまく伝わらなかったからでしょう。それでもイースターとたまごとうさぎが結び付いてくれたのではないかと思います。

子どもの作品を装飾中!

フェーズ3 エッグハントイベント

ワークキャンプの終盤にはイベントを開催しました。合計20人程度の子どもたちが集まってくれました。中高生を中心に準備を手伝ってくれたり、子どもたちも説明をしっかりと聴いてくれたので円滑に進めることができました。関係づくりを入念に行ったため、互いに仲がいい中で運営できたのがイベント盛況につながったと思います。イベントではイースターの定番ゲームである「エッグハント」を経験してもらいました。エッグハントでは隠されたイースターエッグをみんなで宝探しします。またケーブルテレビの取材も来ていただきました。

日本人メンバーだけではどうしてもイースターを外国の盛り上がるイベント程度にしか紹介できませんでした。さらに、公立の児童館ということもあり、宗教観を持ち込むこともできません。そこで、現地の雰囲気や伝統を補足するため、ドイツ出身の国際交流員の方を児童館に招聘しました。

ドイツ出身の国際交流員に来てくださいました(^^)/

イベントではまず、ドイツの食・建物・産業やイースターの楽しみ方を写真をつかって説明してもらいました。子どもたちの中でイースターはぼんやりと浸透していたので、すんなりと理解できたと思います。国際交流員の問いかけに対しても積極的に答えていました。

イースターって聞いたことあるひとー?(かなり広まってきました)

続いてルール説明です。児童館館内に色を塗ったイースターエッグを隠し、それを見つけてもらいました。見つけたイースターエッグを国際交流員のところへ持っていき、その色を英語もしくはドイツ語で答えてもらいました。正しく答えられた子にはドイツのお菓子をプレゼントしました。ゲーム開始前には英語とドイツ語の色の表現を確認し、他言語に触れる機会にもなるようにしました。

みんなでドイツ語の発音

いよいよゲーム開始です。エッグを隠した部屋に子どもたちが一斉に入りました。小さい子どもが先に行けるように配慮してくれたようです。一心不乱に引き出しの中を見たり、机の下を探したり。年齢関係なく楽しんでくれたようです。「赤ってドイツ語でなんて言うんだっけ?」と頭を悩ませながらも国際交流員の方とのコミュニケーションをとっていました。

ドイツ語でなんていうんだっけな?

イベントは無事終了しました。子どもたちは、イースターを外国の文化として認識することができ、異文化体験の機会となりました。また、外国人との交流を通して、海外への扉をたたくきっかけを提供することができました。この経験が外国へのアンテナを張るとともに、世界とのコミュニケーションの手助けになればうれしいです。

成果

以下、地域に残した成果を整理します。

① 繁忙期の児童館をサポート
児童館職員はイベントや年度締めで多忙なので、作業に集中できるよう子どもたちの遊び相手になりました。学生と遊ぶというのは普段ないため、新しい刺激にもなったと思います。特に乳幼児向けのイベントは保護者さん同士の交流の場でもあるので、子どものお世話は重要です。初めて会う大人との交流を通じて、コミュニケーション能力を育むのもワークキャンプの大きな役割でした。

② イースターを通じた異文化体験の提供
2週間を通じて児童館の壁にイースターの装飾を行いました。イースターは徳島にはほとんど浸透しておらず、子どもはもちろん大人の方も知らない人が多かったです。児童館に遊びに来た子は装飾品に目が行き、イースターという外国のイベントが春にあることを認識してくれました。またエッグペイントやエッグハントなど現地の文化も体験する機会も提供できました。ドイツ出身の方も招き、ドイツ文化やイースターについて説明してもらいました。イースターを通じて異文化への関心の入り口を示せたと思います。

③ 子どもたちの新しい気づきを促進
イースターの装飾品は基本的に子どもたち主体で行いました。自らが企画にかかわったという自信や自己肯定感につながったと思います。またみんなで行動することで、協調性やリーダーシップを感じてもらいました。さらに、普段できない経験を通じて、自分の好きなものや興味のあるものを見つけるきっかけになりました。

④ 鴨島児童館中高生チームの結成
ワークキャンプメンバーを見て児童館に通う中高生がボランティアに興味を持ちました。装飾品づくりやイベント準備で手伝ってくれました。ワークキャンプがボランティアの入り口になっているということです。彼らはワークキャンプ終了後も徳島でのボランティア活動に参加しています。ユース世代にボランティアを広めることができました。
また、今回は子どもたちの関係性づくりに注力しました。今後のワークキャンプでは中高生がメンバーと子どもたちの架け橋となり、運営を円滑に実施できると思います。

課題

以下、ワークキャンプ運営で浮かび上がった課題を整理します。

① 企画の趣旨が子どもたちに伝わらなかった
子どもたちと一緒に館内をイースター装飾するというのが企画趣旨でした。しかしそれを詳しく説明する機会もなく、またなかなか理解してもらうのも難しかったため、異文化体験に留まってしまいました。イースターという目新しいものを根付かせるというところが精いっぱいで、館内装飾を通じて自主性や達成感を体得してもらう段階にはたどり着けませんでした。児童館に来る子どもも日々変わっていくので、いかにワークキャンプのやりたいことを共有するかは大きな課題になると思います。

② 自宅で過ごす子どもたちへのアプローチ
コロナ渦における新たに子どもとの交流のため、児童館に来ていない子どもも企画に関わることに取り組みました。そのひとつとして制作した動画内で自宅で工作をして児童館を持ってきてくれるよう宣伝しました。しかし、工作してきた子どもはゼロ。そもそも動画の視聴回数が少なかったです。児童館のSNSを有効に利用してすべての子どもに働きかけることが理想的です。今後感染が再び拡大した場合のワークキャンプ運営のヒントになるとも思います。

③ 子どもたちのフィードバックを得るのが難しい
 子どもたちに異文化体験や気づきの促進に努めましたが、これがどれほどの効果があったかは疑問です。子どもの言動から一部に影響を与えることができたのは確かですが、すべての子どもの感想を聞くことはできませんでした。新しいものを提供して子どもたちに変化を与えることが目的であったために振り返りの時間は設けるべきだったと思います。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございます。回数を重ねるごとに進化し続ける鴨島ワークキャンプ。そのバトンをつなぐことができたのは大変うれしく思います。できたこともできなかったこともたくさんありますが、成果と課題を次回以降につながっていけば幸いです。地方教育という難しい課題に対してメンバーが知恵を出し合って解決の糸口を見つけるという2週間でした。楽しさも難しさもありましたが、非常に有意義な時間を過ごすことができました。徳島ならびに鴨島児童館のさらなる発展のため、このバトンを受けとってくれますことを切に願います。

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