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脅してない?”危険性”ではなく”達成感”で高める医療安全文化

「脅してない?」
実は、これは子育て関連の本に記載されていたものです。
 
「これをしないとだめな大人になるよ。」
「これをしないとこんな怖いことが起こるよ。」
親心からついつい言ってしまうが、そういう脅しだけではのびのびと子供を育てることはできないということが記載されていた。
 
この記事を読んでいてふと医療安全管理者も同じ場面を引き起こす可能性があると感じた。
 
医療安全に関わっていると他のスタッフよりたくさんの安全と真逆の危険についての情報を得る。
つい、みんなに提供したくなる。
これも伝えたい。みんなのために。
こんな危険がある、こんなアクシデントが他の病院で起こったらしい。早く伝えてあげなきゃ。
 
これはもちろん必要なことだが、あまり強調すると安全を盾にスタッフを「脅す」ことにつながる。
安全な医療を提供することが質の高い看護を提供することになり、結果として自分たちが仕事をする上で達成感ややりがいを得られれば理想的だ。
 
これを実感したのは、「4点柵の危険性」をスタッフに伝えたときだ。
ここでいう4点柵とは、ベッド柵を両側、頭側も足側もつけることで患者の行動を制限することにつながるため抑制として扱われる。だから実施する際は患者家族の同意や必要性をアセスメントする必要があり、ほとんど行うことはない。しかし4点柵を転倒予防として行うことがあり、その柵を患者が乗り越えようとして転落し頭部外傷など重大なアクシデントを発生するおそれがある。
実際に転落の結果、急性硬膜下血腫を発症し亡くなった事例があることを知り、私はなんとか4点柵の危険性を伝えたいと思った。
なぜならば転倒後のインシデントレポートに改善策として「4点柵」があげられていることがあったからだ。
 
医療安全通信に書いた私の題名は、ずばりそのもの「4点柵の危険性」。
4点柵による転落のアクシデントの事例を伝え、転倒予防として3点柵+ベッド周囲の環境整備+離床センサー(立ち上がったときや起き上がったときになるセンサー)による対策を提案した。
ただ4点柵は抑制にあたるため、認知症認定看護師からの意見も聞きたいと思い、一緒に医療安全通信を作成した。認知症認定看護師は「そもそも患者が動こうとしている欲求は何?排泄?夜間眠れていないの?そもそも日中離床できている?」という視点から3点柵+患者さんのベッドサイドの環境を整えること+離床センサーが転倒予防につながるとを丁寧に記載していた。
結果、私だけでは不十分だった看護の視点を入れた医療安全通信が出来上がった。
 
ちなみに、この医療安全通信を発行し、認知症認定看護師の方たちと活動したことで、その後半年以降4点柵の実施率が明らかに低下し業務改善として報告することが出来た。
 
ついつい脅してしまいがちな医療安全であるが、質の高い医療の提供につなげたい、そして働く人たちの満足感も高めたいと思った。

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