「ハインリッヒの法則」から~ヒヤリハットレポートを増やすために~
今年度は、「安全」が守られず命が失われた痛ましい事故が起こった。
知床遊覧船の沈没、幼稚園のバスの園児置き去りの事故だ。
これらの事故のニュースでは、このような大きな事故の背景にはいくつもの軽微な事例があるという「ハインリッヒの法則」が報じられた。実際に2つの事故ともに、以前軽微な事例が発生しており、その時にきちんと対策を立てるべきだったとも報じられている。
医療の世界でも、軽微な事例、そして実際にインシデントが発生する前に気づいたヒヤリハット(患者影響度0レベルの事例)事例を報告できるシステムの構築が求められる。ヒヤリハット報告の数が多い施設ほど医療安全文化が醸成され、リスク感性が高いと言われることもある。そのため「今年度はヒヤリハット報告を○件出す」という目標を出している部署もあるかもしれない。
以前、医療安全管理室に配属になる前に0レベルレポートの提出が少ないことについてスタッフにインタビューを行ったことがあった。(看護研究にするためであったが、コロナ禍でその学会がなくなりそのまま私のエネルギーもなくなりお蔵入りとなった)
インタビューの際に行った質問の中で「0レベルレポートを提出する際に、躊躇することがあるか。ある場合は原因はなにか?」については
①どんな事例がヒヤリハットにあたるか分からない
②業務が忙しく、レポートを書くのを後回しにするうちに忘れてしまう
③実際にインシデントが発生しておらず患者に影響がないから、つい書かなくてもいいかと思う
④先輩のインシデントを未然に防いだ場合は、レポートに書きづらい
⑤ヒヤリハットレポートを提出しても、業務の改善につながっているのか分かりづらい
という意見が挙げられた。
このときのインタビュー結果を少しでも参考にしたいと思い、医療安全管理担当者の頃は
①0レベルレポートとして挙げられた事例を「GOOD JOB事例」としてまとめて、スタッフに回覧する
②0レベルレポートの提出形式は、以前の医療安全管理者が簡素化してくれていたため、インシデントレポートと比較すると記載内容が簡単であることをアピールする
③ヒヤリハットレポートから業務改善につなげられたこと、まだつなげられていなくても現在検討中のことなどを医療安全通信に記載して、レポートが将来のアクシデントの予防や業務改善につながっていることを伝える
④0レベルレポートの多い部署は、手作りの表彰状を作成
などの取り組みを行った。
私の取り組みだけではなく、病院全体が医療安全を重要視してくれるからだと思うが、0レベルレポートは増えており全レポート数の20%近くまでになっている。
病棟勤務に戻り、スタッフから「ダブルチェック(薬剤など二人でそれぞれ確認することで医療事故の発生を防ぐ仕組み)で気づいたんですが、これって間違えやすいですよね。ひやりとしました。レポート書きます。」と自発的に報告してくれる様子をみると、これらの取り組みが将来の大きな事故を防ぐことにつながればと切に思う。
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