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学生寮で段ボールと格闘する(その1・寝具とキッチン用品を買う)

9月6日にLondon School of Economics and Political Science(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカルサイエンス)の学生寮に入居してからというもの、4日間くらいは生活環境を整えることに没頭していた。大学を卒業したての若さがあれば、多少の不便は気にならないと思うが、30代も半ばを過ぎて家族を持つと、Quality Of Life(クオリティー・オブ・ライフ)を向上させることは最重要事項の一つになってくる。それは単身留学中でも変わらず、そういうわけで、毎日、部屋でせっせと大量の段ボールと格闘していた。
 
まず、部屋の基本装備は以下の通りであった。8畳間くらいの広さの室内にベッド(枕と掛け布団なし)・机・棚二つ・クローゼット・窓のカーテン(一部破損)・シャワー・トイレ(ペーパーホルダーなし)・ヒーター・ゴミ箱だ。「寮に到着する前にベッド、バス、キッチン用品は購入して配送しておくことをお勧めします」と管理者が言うので、入寮前日から、学割が効く生活用品サイト「UniKitOut」(ユニキットアウト)や「Amazon」「IKEA」「MUJI(無印良品)」などで寝具、タオル、フライパンや皿、炊飯器などを大量に購入し、配送してもらった。実際、これらを街中に買いにいっていたら大変な荷物でにっちもさっちもいかなかっただろう。

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特筆すべき購入品は、「BRITA」(ブリタ)のポット型浄水器(2・4L)である。イギリスの水道水は飲めるようだが、硬度の違いもあってか、おいしくはない。そこで前から着目していたこのポット型浄水器で水道水をろ過して飲んでみたところ、まろやかになって臭みもなく、ごくごく飲める。料理用にも使えるので、共用キッチンに持ち運んでいる。ミネラルウォーターを買う必要がなく、カートリッジの交換も経済的で、これはいい買い物をした。海外生活のいい相棒になりそうだ。

とはいえ、これら日用品の買い物に約10万円かかった。でも生活必需品なので仕方がない。この物価の高いロンドンでは、高額な支出にいちいち心を痛めていられない。無駄な買い物をしないことを徹底するだけである。

ちなみに、ロンドンの通販サイトは粒ぞろいなので紹介したい。まずは大学から紹介された「UniKitOut」だが、大急ぎで寝具やキッチン用品をそろえたい学生にとって、彼らの翌日配送サービスはありがたい。だが、彼らが提携している「DPD」という宅配業者の事情に左右されるので、安心してはいられない。実際、私が注文した寝具は翌日来なかったため、ベッドでジャケットを布団代わりにして寝ることになった。さらに、セミダブルサイズで注文したベッドリネンはシングルサイズが届き、「交換お願いしまーす」とメールしたら「すみません! 私たちのスタッフは記録的スピードで働いており、たまにミスをするんです。間違って届いた商品はお友達に寄付してください」と返信があった。寄付って誰に?と思っていると、すぐに代替品が送られてきた。そんなやりとりもなかなか面白い。

「Amazon」を選ぶ理由は何といっても当日・翌日配送サービスなんだけれど、学生寮あてだからなのか、届くのはたいてい夜8時過ぎの最終便なので、フライパンや菜箸を注文する場合は注意が必要である。

「IKEA」は郊外に店舗があり、配送サービスを利用するのが便利なのだが、システムが少しややこしい。最寄りの店舗に在庫がある商品と、配送サービスだけで取り扱っている商品と、スーパーなどの提携店にあるロッカーにお客自ら取りに行く商品があって、どれを選ぶかで買える商品と買えない商品がある。カゴに入れたランドリーバスケットなどが支払いの場面になって、上記の理由で消えていた。本当にややこしい。

「MUJI」は言わずと知れた無印良品なのだが、彼らの魅力的な商品が発送されるまでに5日かかる。「あれ、そろそろ問い合わせた方がいいかな?」と思っているところで宅配業者から「お届けするまで2日かかります」というメールが届いた。気長に待てる人にはお勧めであるが、タオルや食器くらいであれば繁華街の店舗に買いに行った方が早い。

繁華街へは「チューブ」と呼ばれる地下鉄が便利

次に、食料品である。幸い、寮の近くにはスーパーマーケットが3店ある。徒歩8~10分の距離にある「Lidl」(リドル)は格安スーパーで、野菜や精肉・乳製品・総菜パン・日用品など豊富な品ぞろえがうれしい。徒歩3分以内の「Sainsbury’s Local」(セインズベリーズ・ローカル)も一通りそろっていて、特に有難いのはしっかりした薄切り肉が売られていることだ。薄切り肉は日本と違って「豚ロース」とか「豚バラ」という表記ではなく、「Unsmoked Bacon」(アンスモークド・ベーコン)となっている。これはモスクワも同じで、ベーコン売り場に行かなければ、薄切り肉はいくら探しても見つからないのである。最後に、徒歩7分くらいの「Tesco Express」(テスコ・エクスプレス)は比較的規模が小さく、一度覗いてからは行っていない。

それから忘れてはいけないのが、しょうゆや味噌、ポン酢などの日本の調味料とお米だ。私は辛いものが好きなので韓国料理や中華料理もよく作る。そうすると、キムチや豆板醤や火鍋の素なども入手したくなる。そこでまずは日本食のオンラインショップ「WASO」(ワソー)や「T.K.Trading」(ティー・ケー・トレーディング)で一通り調味料などを購入し、次に中華街にある格安アジア系スーパー「Loon Fung Supermarket」(ルン・ファン・スーパーマーケット)に中国や韓国の食材を探しにいった。

「Loon Fung Supermarket」はいつもにぎわっている

このアジア系スーパーというのはとても優れたもので、だいたい中国・韓国・日本の食材や野菜(白菜やチンゲン菜など)は売っており、加えてタイやインドの食材や鍋・ガスコンロなどの調理器具まで取り扱っているところもある。そして何より安い。私がモスクワとロンドンで経験した限りでは、日本の食料品を日本食スーパーで買うより、アジア系スーパーで買った方が安い。そして各国の食料品まで見られるから楽しい。「Loon Fung Supermarket」から白菜や黒酢や春雨やカップヌードルやらをトートバッグいっぱいに詰めて出てきた時は、楽しすぎて何のためにロンドンに来たのか一瞬忘れていたくらいだ。こうした食材にかけた費用は約4万円。これも初期投資の一部なので、日本で買うより高くても気にしないことにした。

※「その2・自転車を買う」に続く

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