本音と建前。(1.7)
部屋を掃除していたら、中学の時に先輩から渡されたCDが出てきた。
同級生が青春を謳歌している部活動には目もくれず、放課後は時間があれば新しい音楽を探しにTSUTAYAへ通い、情報交換をした。
CDは借りたのか?貰ったのか?
次に漫画本が出てきた。少女漫画ではなく喧嘩上等の少年漫画。
これまた、少年漫画を借りたのか?買ったのか?
ふと1人、顔が浮かんだ。
誰かの部屋が浮かんだ。
記憶を遡り、懐かしさとアイスクリームが溶ける夏を思い出す。
先輩から借りたと思っていたCDも喧嘩上等の漫画本も、1人の友だちと貸し借りしたもので、お互い返却は「気が向いた時でいいよ」と言っていた。それはきっと長く付き合いが続いていたからだろう。いつか返すタイミングがあると信じてやまなかったのかも知れない。
いつの間にか、おはようもおやすみも、交わす会話もなくなり、声も聞かなくなり、今の今まで別々に24時間を何度も繰り返している。
私が記憶の遠くに、貸したCDと少女漫画を置いてきたように、あの子の笑った顔も声も喋り方もいつの間にか遠くで朧気になっていた。
連絡する手段はない。同窓会にも行っていない。
でも、このCDと漫画本は「その時」がくるまで大事に取っておこう。そう思い、棚へ仕舞い直す。
でも....
淡い記憶でノスタルジックになった時、「私のスーパーカーのアルバムと、いくえみ綾の少女漫画は手元に戻ってきて欲しい!!!!」とこぼれた本音がそこにはあった。
おしまい。