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『 朝、起きたら君がいない。 』


もう、別れるって分かってた。

理由なんていっぱいあった。

お互いに時間が取れなくなったり、笑いの沸点が違ったり、会わなくなったり…


飛鳥が、僕の事見てないなんて分かりきってた。



「退屈、、、」

ベッドに寝転がった僕らを朝日が照らす。

『何もすることないんだから仕方ないじゃん。』

「うーん…」

なんか予定作るべきだったなぁとか一瞬考える。
でも、そんな思考はすぐにベッドに沈む。

「つまんない...」

こうなると謝るしか出来なくなる。

『つまらない男でごめん。』


「ふふ」

気怠い朝に飛鳥の笑い声が響く。
なんだかんだ好きなんだなって思う。

「寝てないでなんかしようよぉ…」


そんなことを言われたって…


「じゃー、本屋いこ。ほらほら」

僕を無理矢理起こす。
朝日が嫌に輝くのを感じながら外に出る。

『なんか読みたいのあるの?』


「うん。気になってる本が1冊あるよ」


『ふーん』

飛鳥は知らない本を手に取っていく。
3冊くらい手に取った。

『あれ、1冊じゃなかったの?』

「いや、今気になったのよ」

本屋ってそういうものか。

古本の匂いが充満する店。
老いた店主。
そんな雰囲気になんとも言えない気持ちになる。

「なんかめぼしいものは無い?」

僕はとりあえず知らない本を手に取った。

「じゃあ、帰ろっか。」

会計をした。


袋を僕に持たせて笑顔で僕の前を歩く。


こういうのだよ。


こういうのが1番幸せに近いんだって。

そう思う。



「ほら、早く早く」

僕の足も速くなった。



ガシャンと家の扉が閉まる。

「ちょっとーゆっくり閉めてよ」

いつも怒られる。

『ごめんごめん』

飛鳥はいつもちょっとだけ不機嫌になる。

「本...読む」

『はいよ』

僕は袋を渡した。

「ほら、これ、あんたの」

そういえばそうだった。僕も本買ってたんだ。

『ありがと。』


やはり、聞いたことも無い本。
カバーが少しザラザラする。

「では」


飛鳥はもう、本に夢中だった。

ほら、もう、こっちも見てくれない。

僕は台所に立ってコップに水を出す。

入れすぎた。

少しづつ少しづつ飲んで。

飲み終わったころ、

君はまだ、本を読んでいた。

どんどん君に僕の興味が無くなっていくのが分かる。

『そっか』

時間の流れがゆっくり感じる。

僕は寝転んでる飛鳥に抱きつく。

「ちょっとぉ」

かまって欲しい。

こんな男嫌だろうか。

飛鳥は本から目を離した。

「読めないじゃん」 


飛鳥が、笑った

『それが目的』  

僕も、笑う。 

何も面白くないけど

笑うんだ。

『はい、おしまい』 

そんな声に急に現実に戻されたような感覚に陥る。

やっぱり最近、僕に興味が無くなってるね。

「なに?」



『ちょっと寂しくなった。』

「そうなんだ」

別れたくない。

別れたくないんだ。

ははは、と部屋には君の笑い声が響く。

怒られてばっかで、飛鳥がどう思ってるのか知らないけど

少なくとも僕は

僕だけは

なんだかんだ、好きなんだって、思う。





やっぱり僕の勘が当たった。

「別れよっか」

僕は黙った。

気が無くなった、とか他に好きな人が出来た、とか何でもいいから。

理由が知りたかった。

「私たちね、このままじゃだめな気がするの。」

「なんか、絶妙に合わないなって気がして」


僕を、見て欲しかった



「ちょっと、黙らないでよ」

そう言って笑う君の笑顔はこれまでに無いくらいに下手くそだった。


「好きだよ」

それは、今言うなよ。


『ありがと。僕も』

諦念に近いものを抱える。
もう、ダメっぽいな。

『そうか』

「だよ」

僕はベッドにダイブした。

飛鳥を見ると、ほぼ泣いてる。

埃が舞うから辞めてっていつも怒るのに
今日は怒らないんだ。

『寝よ』

「うん。」

君の横顔を見る。

『なんで泣いてんの』

僕は冗談交じりに鼻をさすった。

「わかんない...」

可愛い奴だなって思った。

それから、寝て、起きた。


横を見る。


期待なんかしてないけど君はやっぱり居なくて、


『うん、あぁ...そっか...やっぱり...』

ほんのりと声が揺れた


僕が買った本を手に取った。

そういえば、読んでなかったなぁとページをめくる。


『ヒーローもんかよ...』

端的に言えば、

主人公が、悪者を捕まえて、世間に賞賛され、

ヒロインと結ばれる話。

そしてその後半は英雄の後世。

はい、めでたしめでたし、みたいな物語。

僕とは真反対の人生に嫌悪感を抱く。

それと同時に、ページをめくる度いちばん辛かったのが、


なんで、



『なんでヒロインの名前が、君なんだよ、、』


目を見張った

こういう、小さな偶然、

大嫌いだ。


やっぱり隣に君はいない。

この先、

君はどうせ、英雄みたいな男と付き合うのだろう

僕みたいなつまらない男じゃなくて、

そっちの方がお似合いだ。

『君と、、、結ばれたかったな』

僕だって、

台所に立った。

台所からも見えなくなった君を


ずっと想っている。


泣きそうになってまつ毛を伏せる。


この家に染み付いた香りが胸に詰まる。


君が置いた観葉植物に目をやると

君の声が頭に反響した。


"この部屋面白味ないなあ"


そういえば、と思い出したように

植物に水をやろうと水を入れる。


『うわ、かかった』


こんな僕のどこを好きになったのだろう。

ずっと考えてたら、何も手につかなくなって


本当、情けないな

そんな姿は英雄とは程遠いものだと思った。


思って、水を拭いた。








もう、会いたくなった。











格好悪いけど、君も同じだといいなって。






『朝、起きたら君がいない。』


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