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『 夏と麗、さよならの星空 』

今から10年前、私が中学生の時、廃ビルに幽霊が出るという噂があった。


「飛鳥パイセ〜ン」

「なんだよ」

「たこやきアタ〜ック」


そう言って後輩の美月がたこ焼きを口に無理やり入れてきた。


「ちょ、やめ、ん、あっふ」

「スキありです」


一発本気のげんこつを入れて置いた。


「やーにしても飛鳥さんの地元良いとこですね〜」

「商店街もちょくちょく閉まっていってるけどね」

「でも〜、飛鳥さんと私のラブラブアツアツたこ焼きがあればそれだけでいいじゃないですか」

「殴るぞ」

「きゃー、いたいけな乙女になんてこと言うんですかぁ〜」


無視して、私は小学生、中学生、高校生時代の記憶を並べてみる。


仲のいい友達、家族、勉強、部活、生活


そのどれもにピンとくるものなんて無かった。


「べつにいい思い出なんて、なんも無いけどね」


遠くの小学校で、午後5時頃を告げるチャイムが鳴った。


私は怖いもの知らずだったのか、あの廃ビルに何度も忍び込んでは、幽霊を探していた気がする。


今となっては誰もその怪談を覚えてはいない。


だけど、凄く大事なナニカを、蝉の鳴き終わる時期に、置き去りにしてきた。


そんな気が、する。











切れる息、こつっ、こつっ、と冷たくて乾いた音。暗い暗い階段。


こつ、こつ、こつ。


古い廃ビルの非常階段を、上がる。


スチールの階段の出す音だけが、狭いスペースを響き渡る。


蒸し暑さに、シャツが張り付くような汗をかきながら、私はひたすらに足を動かす。


どうして私がこんな徒労をしているか、と言うとこのビルのエレベーターが故障していたからだ。


ボタンを押した時は、やっぱり、と声に出さずには居られなかったくらい、この建物は古臭かった。


嫌な静かさと、奇妙な空気を感じながら。考えないようにしようと考えれば考えるほど、私はひたすらその嫌な気配を吐きそうになるくらい感じたのだった。


「でも、もう、もうこんな思いも…もう…最後だから…」そう呟きながら、なんとかなんとか足を運ぶ。


私は中学校の生徒の中でも、割と真面目な方だったと思う。


宿題は毎回完璧に出したし、テストも、それなりに頑張って高い評価を受けられるくらいの成績を出して、学級委員を押し付けられるくらいには優等生だ。


だけど、いつも、どことなく息苦しさが拭えなかった。


友達は少し居たけど、数えられるほどで多くはいなかったし、キャラが無くてクラスメイトには意識されない。


だけど都合のいい時だけ役割を押し付ける。


この前は、不登校の子の家に溜まっているプリントを届ける役割をさせられて流石に困った。


お母さんが出てきて、「あら優しい子ね」と言われた。


"齋藤さんは優しいから"

"齋藤さんは真面目だから"


周りは言う。愛想笑いでそれに答える。


そんな日々、もう、うんざりだった。


みんな、嫌いだ。


帰宅途中、そんな憂鬱と共に下を向いて歩いていると今朝のクラスメイト達の会話を思い出した。


学校に来るまでの大通りを逸れて、横道に出たとこ、裏路地のようなとこに、奇妙な廃ビルがあること。


そこでは何やら、"出る"ということ。


それは同年代くらいの男の子だ、ということ。


親に聞いてみると、危ないからあそこには絶対に行ってはダメ、と言われたこと。


今度肝試しにいこーぜ、と同じクラスの男の子は言う。


えー、怖いのやだよーと仲良さげな男の子が返す。


私はそのとき、なにそれ、馬鹿じゃないの、とそれくらいにしか思ってなかった。


ぼーっと下を向いて歩いていたせいか、気づけばいつもは通らないその商店街の大通りに私は居た。


その話、確かめよう。


なぜかそう、思ってしまった。


そう思うと変に怖さもありつつワクワクして、抑えられず横道に入る。


もう、夢中、というか、魅入られたように薄暗いビルに入った。


こつ、こつ


音の反響が弱まってきて、顔を上げる。


そこには錆びた扉があった。


「やっと着いた…」


私は呟くと、冷たいドアノブに手をかける。


きぃっ、と音を上げてそのドアは開いた。


真夏の匂いがした。


ギラっと視界に映ったのは太陽だった。


途方もない時間をかけて階段を登り、久々に浴びた眩しい夏の夕日にくらっともしながら、私は前を向いた。


「何も居ないんかい」


突っ込んで、笑ってしまった。


ちょっと安心して、前に進んでみる。


ほぼ、同じ背丈の建物が並ぶ通りだ。


景色は存外いいものではなかった。


帰るか


そう、心の中で唱えたときだった。


こつ


そんな音が聞こえた気がした。


こつ、こつ。


体が、硬まる。


何かが、階段を上がる音だ。


こつ、こつ、こつ。


それも、近くなっている。


屋上に向かっているということが想像したくなくても想像できた。


こつ、こつ


急に止まって、ほっ、としたのもつかの間だった。


きぃっ


ドアの音だった。


「うわっ!」と"それ"は声を出した。


咄嗟にギュッと硬くつぶった目を開けると


目の前には、同年代らしき男の子が懐中電灯とグミの袋を片手にこっちを見て驚いて固まっている。


「ひゃ、なになになに!」


そんな情けない声が私から出る。


男の子は怯えたように


「いや、そっちこそなに!」


と言った。


数分経つと、冷静になったのか、このおかしな状況を客観視して私と男の子は同じタイミングで爆笑してしまった。


少し落ち着いて、「ねえ、あのさ」と私は話しかけてみる。


「ん?なに?」

「あなたって、ここに出るっていう幽霊?」


我ながら、アホみたいな質問だった。


「へ?」


間抜けな声が、彼から漏れる。


どうやら私の見当違いだったみたいだ。


「幽霊、か。たしかに、そうとも言えるね」


幽霊くんはやけに面白そうに笑った。


おちゃらけたそんな顔が、印象的だった。


それから私は学校が終わると、塾が無い毎週火曜日と木曜日にそこに寄った。


幽霊くんはいつも質問ばっかしてきた。


「好きな色なに?」とか「学校はどういう所なの?」とか「星好き?」とか、話題には困らなかった。


それに、質問に答えると彼は目を輝かせて必死に「そうなんだ!」と言ってみせる。


それが、堪らなく、好きだった。


幽霊くんはいつもグミやらチョコやらお菓子片手にビルの屋上に現れる。


幽霊くんが現れるのは決まって5時30分頃だった。


私は暗くなってから帰っていたのだけど、彼は私が帰ってからもそこに残っていたようだった。


夜は何しているの?


そう、聞いたことがある。


「えー、内緒だよ」

「いいじゃん、いつも私ばっか質問されてるんだし」

「たしかに……」


彼は悪戯っぽく、にやっと笑って


「人を呪っているんだよ」


そう答えた。


少し怖気付きながら強がって「なに?私のことは呪わないの?」と言う。


彼はお菓子の袋を置いて、懐中電灯を顎の下に持っていき、「もう呪ってるかもね」と幽霊らしくこたえた。


強がりな私はまた「ふーん、まあ負けるわけないけどね」と、口をついた。


そんな私に幽霊くんは「あははは」と笑う。


「そんなことするわけないじゃん、友達だし」

「友達?いつから?」

「え、違うかった?」


正直嬉しかった。


全身の細胞が活性化するみたいな、そんな感じを覚えた。


「あ、ねえねえ、もうすぐ7時だよ」

「うわ、じゃあね、幽霊くん」


彼はうん、と言って朧気な目で空を見上げ始める。


いつまでも見ていたいな、と思いながら、私は屋上のドアに手をかける。


はっとしたように、彼は声をあげた。


「ねえ、名前、なんて言うの?」

「私の?」

「そりゃあそうでしょ」

「え、教えない」

「嘘でしょっ?」


あはは、と私は笑う。


「齋藤飛鳥」

「飛鳥ちゃん、ね」

「そうだけど、なに」

「なんでもない。ばいばい、飛鳥ちゃん」



気がつけば、長い時間、彼と過ごしていた気がする。


雨が止み始めた日からもう既に夏休みが始まるになっていた。


「ん」と言って私は手を差し出す。

「えぇー…」


彼はいつも惜しそうにしながらも私にお菓子をちょびっとくれる。


「ありがと」

「まあ、いいよ、べつに」

「幽霊のくせに、優しい。」

「くせにってなんだよ」

「へへっ」


優しくしてくれる存在が。友達、と呼べる存在が出来たのが、私は嬉しかった。


それどころか、それ以上の気持ちを、私は抱いているようだった。


「ねえ、飛鳥ちゃんってさ、好きな人居る?」

「は?居るわけないじゃん」

「ほんとに?」

「う、うん。私はね、みんな嫌いなの。」

「なんで?」

「だって、みんな私に押し付けてくるんだもん。前だってね、不登校の子のプリントを届けに行って…」

「優しいね、飛鳥ちゃん」

「優しくなんかない!」


そう答えると幽霊くんは、ははっ、と愛想笑いした。


「あんたは?」

「えーっと、僕もね、みんな嫌いだったんだけど」

「幽霊らしい」と私は言った。

そんな時、「でもね」と彼は言う。


「今はね、好きになれる気がするんだ。」


何故か、胸が熱く、なった。


「人をね、好きになった方がいいよ。飛鳥ちゃんも」


彼はそう言うと私に向かってグッドサインをした。


「なれないよ…」

「大丈夫だって、飛鳥ちゃんは、優しいから」


なぜだか堪らなく、胸が熱くなった。


幽霊くんの言う、" 優しい "は、他の人が言う
" 優しい "とは何か違くて、暖かいような気がした。


「あ、もう7時だよ」


彼がいつも通りそう言う。


唐突に、今日が " 最後 " な気がした。


夕空から、温かい風。


ひやりと伝う、私の汗。


「あのさ」


勇気を出して、私は聞いてみる。


幽霊君はいつも通り、私が帰る時間になると、ぼーっと空を仰ぐ。


その姿に、声を、かける。


「ほんとは、夜、何してるの?」


彼はいつも通り、答える。


人を呪ってる、と


「そうじゃなくて」と私は言う。


「ホントの、方」


「えーっと」


彼は笑う。顔を赤らめて、笑う。


キラリ、と夕日が光った。


恥ずかしそうに、笑って答える



「▉▉▉▉▉▉▉」と。



「あ、そうだ、明日、ここに来てよ凄いもの見せてあげる。」



彼はそう言って笑った。


もう月が見えかけていた。



その次の日水曜日だったけれど、私はあのビルに向かった。

でも私はあのビルに行く途中、熱中症で倒れて、結局行くことはできなかった。


なかなか重いところまで症状が進んでいたらしく、入院せざるを得ない状態だった。


体は怠さで満ち満ちていた。


そんな時でも私はあのビルに行けないことをちょっと申し訳なく思った。


実に暇な2日だった。


テレビはニュース番組しか付いていないし、不自由極まりなかった。


退院すると、速攻あそこに向かった。


けれど、いつの間にかそこにあったのは、いつもの入口ではなくて、立ち入り禁止の看板だけだった。


どうやら取り壊しが決定されたらしかった。


私は泣き出してしまいそうになった。


必死に必死に、彼が言ったことを思い出そうとしてみる。


「▉▉▉▉▉▉▉」


そこだけが、ノイズが入って思い出せない。


彼の名前も、幽霊くん、以上は知らない。


立ち尽くして、こんなことなら、ちゃんと好きだって伝えておけばよかった。


なんて、そんなことを思った。



優しい男の子の幽霊との、青い青い夏は、唐突な終わりを、告げた。











あ、と思った。


商店街を逸れて横道。


「ちょっとぉ、飛鳥さぁーん、どこ行ってるんですか〜」


声も気にせず思い出した場所に入ってゆく。


新しいビルが、そこにはあった。


色や、形は違う様に見えるけど、あのビルはたしかにここにあったんだ。


もしかして、と私は思った。


私の忘れ物。


置いてきてしまった大切なもの。


迷わず入ってみる。


あのビルと、びっくりするくらい、造りが同じだった。


こつ、こつ、こつ


階段を、私は上がってゆく。


新しく建てられたらしいビルの屋上に向かって。


こつ、こつ


階段が出す音は少し変わっていて、以前よりくぐもっている気がする。


「飛鳥さぁーん、上、なんかあるんですか?」

「いや、わかんない」

「ちょっとぉー、疲れましたぁ」


上って上って、やっとのことドアの前に立つ。


やっぱり、少しだけ夏の匂いがした。


ドアを開ける。


ばたん、と言ってドアが閉まる。


思い出したように、蝉が鳴き始める。


あの頃とおなじ、景色に少し懐かしさを覚えた。


けど、そこには、何も無かった。


お菓子の袋の一つや二つも、幽霊の痕跡も。


なんだか寂しい気持ちになった。


「やっぱり、居ない、か。」

「なになに、飛鳥さん、どーしたんですか」

「いや、なんでもない」

「え?ほんと?飛鳥さん大丈夫ですか?」

「ほんとに、なんでもないってば」


涙が出そうになった。


「ごめん、ちょっと1人にして。」

「えーと、分かりました。下で、待っときます、ね…」


山下はぼそぼそ、と何か言いながらドアの方に行った。


少し経って、ばたん、とドアの閉まる音が聞こえた。


私は、何を勘違いしていたんだろう。


どこかで、彼は、居る、そう確信していた。


そこで、ふと、山下がぼそぼそと言ってた内容に引っかかった。


たしか、山下はこう言ったのだ。



「ここ、フェンスなかったら危ないな。」



私の頭に、不意にバチッと、電気を受けた時のような強い衝撃が襲う。


あまりの衝撃と痛みに、頭を押さえる。


私が、ここであった幽霊くん、とは何者なのか。


そういえば、前のビルには、フェンスは無かった。


クラスメイトの会話。危ないから近寄るなって言うのは、その事?


突如取り壊しが決まった、例のビル。


記憶は、いつだって書き換えの効くものだ。


なんだ。


忘れたくなかったもの。


大事な人。




入院中の、ニュースだ。




あの日、私が熱中症で倒れた日。


彼が来い、と言った日。


幽霊君は、いや、あのいつも来なかった不登校の子は、ビルの屋上が少し崩れて、最上階から落ちて、亡くなった。


即死だったらしい。


幽霊くんをずっと幽霊だと思い込んでいた。




幽霊くんは、人間だったんだ。




「幽霊、か、そうとも言えるね」と言った理由は、不登校の彼なりの罪悪感だったのだろう。


彼の言ったことを、思い出してみる。


記憶の中の、彼に、『夜、何してるの?』


そう聞く。


そう聞いても、彼は恥ずかしがって、真面目に答えてはくれない。


『星は好き?』と過去に質問されたことがある。


私はひねくれていたから、そのとき


「星は…あんまり好きじゃない」


と答えた。


だからあの時、なかなか言ってくれなかったんだ。


『ほんとは?何してるの?』


夕日が落ちそうな中、もう1回、そう質問する。


彼は、恥ずかしそうに笑って、答える。




「 星をみてるんだ 」




全部、気づいてしまった


不登校の子に、プリントを届けに行った時、その子のお母さんに、「来月からうちの子学校行くから、よろしくね」と言われたけど、結局来なかったことも。


人は好きか聞かれた時に、「今はね、好きになれる気がするんだ」と彼が言ったことも。


彼は、学校に行こうと頑張ろうとしている途中で、いや、頑張って決意したときに、亡くなったんだ。


全部、気づいてしまった。




いや、違う。気づきたくないことを、気づかないようにしていたのだ。




こつ、こつ、こつ


山下だ。1人にしてくれって言ったのに。


どういう顔をすれば良いだろうか。こういう時、どういう顔をすれば、正解なんだろう。


こつこつ、こつ。


ドアに背を向けて、私は三角座りする。


きぃぃ


ばたん。


ドアが開いた。


「うわ、びっくりした」



「なーんだ」





「飛鳥ちゃんか」




「えっ…」と私は疑問符を頭に浮かべることしか出来ない。


あの時の彼はあの時の感じで、いつもの定位置に座ると、私に顔を向けて、変わらない笑顔でにこっと笑った。


目が、堪らなく熱くなって、潤んだ。


「ん」と、泣きそうな私は手を差し出す。


彼は「えぇ」と苦笑しながらも、ブドウ味のグミを私の手に2粒出す。


「ありがと…」


「いいよ」


夕日が、落ちかける。


6時頃。


夏の日落ちは遅い。


泣きそうな私の顔を、彼は覗き込む。


「ねえねえ」


私は必死の思いで「なに?」と答える。


「飛鳥ちゃんは、人、好きになれた?」


私は泣きそうになりながら答える。


でもその答えは、その質問に、じゃないかもしれない。


「まあまあ、かな」


その回答に、彼は「いいね」と笑って見せた。


日が落ちて、段々暗くなる。


「あ、そうだ、今日の夜、ここに来てよ凄いもの見せてあげる。」


「ごめん、それはちょっと難しいかな」


「なんで?」


「友達と、ここに来ててさ。」


「友達、出来たの?」


そうだ。あのとき、仲のいい友達は、幽霊くんくらいしか居なかった。


「うん。」


「その友達のこと、好き?」


「生意気だけど、好き、かな。」


「僕のことも、好きだった?」


「……うん…とっても。」


彼はいしし、と笑った。


柔らかな風が吹く。


日が暗くなって、落ちてゆく。


もう、夜だ。と思った頃、彼はもうそこには居なかった。


7時を過ぎていた。


彼は本当に、そこからもう " 居なくなった " 気がした。


小中高、ずっとずっと、彼が支えだった。


立ったまま、空を、見上げる。


ありがとう、さよなら、そう言うために。


「…わっ!」


あまりの驚きに、目を見開く。


綺麗な綺麗な、星空だった。


きらきら、とした星たちが、無数に私の真上にある。


あまりにも綺麗で、私は泣きそうになる。


彼が見せたかったのは、これのことか。


「うわぁ……すごい」


山下はそう言って、目を輝かせる。


「なんだ、来てたの」

「はい、飛鳥さんが〜あまりにも遅いんで〜」

「そっか」


そう言って、私は寝転がってみる。



私は星の一つ一つに、願い事をする。



どうか、この景色を忘れることがありませんように。



『ね、すごいでしょ?』



そんな声が、聞こえた気がした。


私は微笑む。


夜風が頬に吹き付けた。


8時。


もう、こんな時間か。


「よし、一通り見たし、帰ろっか。」

「そーですね〜、さっ、ご飯に行くとしますか。」

「何食べる?」

「飛鳥さんの食べたいものならなんでも、だって今日は飛鳥さんの奢りですから」

「えーっとね、お肉!ってちょっとまって奢らないからな!」

「あははっ、行けると思ったのにー」

「んな上手くいくか、ふふっ」


まあでも、ちょっと、奢りでもいいかもな、と思った。


「ケチぃ〜」と言われながらビルを出て、横道から商店街に戻る。



「まあ、いっか、気づかせてくれたし」

「え?どういうこと?ちょっと?飛鳥さん?」

「お肉食べにいくぞ、はやく」

「え、なんかわかんないけどやったぁ!」



そこには元通りの日常、元通りの街が広がっていた。














『夏と麗、さよならの星空』







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