タイムカプセルをもう一度。10 ─終─
もう届くことの無い背景。
1番愛した君へ。
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数年後。
〇〇:ドレスってやっぱり着たいもんなの?
美月:当たり前じゃん!
〇〇:へぇー
結婚式の会場選びに来ていた。
〇〇:ここ良さげだね
美月:だね!
〇〇:すっごい目キラキラさせてるじゃん笑
美月:ちょっと//恥ずかし//
〇〇:なんで顔赤くなってるの笑
♢
美月:新居も探さないとだねー
〇〇:だねぇ
少し明るい夜に沈黙が流れる。
だけど、それも心地いい。
美月:ねえ、〇〇.....
〇〇:何?
美月:ほんとに、私で良かった?
多分それは、これからわかる事だと思う。
〇〇:美月ちゃんには居なくなって欲しくない。
また、あの3人の中の1人が欠けることは耐えられない。
美月:そっかぁ笑
安心したように微笑んだ。
夜の川は少し暗く、街の光が反射して、煌びやかに光る。
もう君に届くことの無い。
そんなあなたがいない背景。
先日。
掃除をしていたら、あのタイムカプセルが見つかった。
前見た時よりも、枯れて朽ちた一輪の花。
僕の2枚の手紙、麻衣さんの僕宛ての手紙。
僕はおもむろに1枚取って中身を開けた。
拝啓、透過した僕へ
そう書き始めていた。
少し恥ずかしくなって、
破りそうになった
やっぱ、やめた。
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和:先輩!仕事中ですよ!
〇〇:あ、ごめん思い出に浸ってた。
和:はぁ、仕事してください…
〇〇:ごめんごめん笑
就職した会社に、和も入って来た。
和:これ今日中に終わらせないといけないんですからね!
〇〇:わかってるよ
和:終わったらなんか奢ってください。
〇〇:やだよ笑
和:ちぇ
♢
もう来週には式を挙げる予定だ。
美月:そういえばさ、
〇〇:うん。
美月:タイムカプセル、埋めたの私なんだよね。
〇〇:へぇ、そうだったの
美月:あんまし驚かないんだ笑
〇〇:何となくね
美月:麻衣さんにお願いされて…
美月:麻衣さんが〇〇のこと好きだって分かってたから、届いて欲しくなくて少し深くに埋めちゃった。
〇〇:僕あれ手で掘ったんだぞ
美月:ごめんね…
〇〇:まあ、いいよ。多分それも、思い出だし。
〇〇:花なんていくらあっても綺麗じゃん。
美月:何それ笑
僕は時々、"思い出"を"花束"に形容する。
花言葉ありきの花がないように
花がそれ自体の価値を持っているのだと思う。
タイムカプセルに埋めた、
あの一輪の花は枯れて朽ちてしまったが、
一緒に埋めた"花束"はまだ腐っていなかった。
でも、同時に大事な"花束"を忘れてしまっていた
だから、僕は
もう枯れても、腐っても、朽ちてもいいから
タイムカプセルを二度と埋めない。
〇〇:お昼食べよっか!
美月:うん!
〇〇:何がいいかなぁ
美月:今ならなんでも食べれる!
〇〇:ええ?笑
美月:なんで笑ったぁ?笑
そうして、笑いあった。
完