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〈風のカーテンが吹くとき〉

ショートストーリー/風のカーテンが吹くとき(884字)

夏目漱石:道草

『世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない』

今回は山根あきらさん主催の
#青ブラ文学部  のお題に沿って書きました。
宜しくお願いいたします。




夏目漱石:道草
『世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない』




私は流れるような白いカーテンから
薄暗く光る青い空をみていた

風が吹くと
白いカーテンが靡くたびに私の心も少し揺れる

白いカーテンはまるで心の移り変わりを写す
ある晴れた日は透けるようにまばゆく光る
ある雪の降った日は寂しげにそこに佇む


このカーテンは雨の日も晴れの日も
曇りの日も
私が間違えて窓を開けっぱなしにしたときでさえ
ずっと変わらず佇んでくれている。

強風の風が吹いたならば、
そっと優しく盾になり
微風が流れてきたならば
そっと優しく席を譲る

あなたのような美しい人になりたい
あなたこそが本当に必要とされる人なのに

私はそんな役目はないと遠慮がちにいう

私の部屋は、
クローゼットと化粧台以外は殆どが整理整頓されている
クローゼットも大分とリサイクルに出したり
処分をして片付いてきた。
これでもかと言うくらい、
プラスチックの透明の3段ボックスからは綺麗に折り畳まれた洋服が出てくる
一体誰がこんなにも洋服を買ったのだろうと

世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない


捨てるものと捨てないものを
ひとつずつ取捨選択していく

そっと心に迷いが出る


その時カーテンが大きく揺れた
四角い大きな窓から流れるように
風が吹いたならば
白いカーテンは大きく揺れる


私への応援だと思った。
そっと支えられた私は目の前の洋服をひとつ手に取る
想い出がそっと心を駆け巡っていく


あなたと過ごした時間も
あなたが励ましてくれた時も
あなたと選んだこの洋服も
私はきっと一生捨てることは出来ないだろうと


私は例えボロボロになっても
この想いだけは決して離してはいけない。


風が吹く。
そっと優しく頬を撫でた。
冷たくて、爽やかで、私の涙に触れて、
本音が流れていく。そよ風とカーテンの間に揺れて
青い空へと旅立っていった。

そっと私の心は少しだけ自由になれた。
そして想い出の洋服をまた
クローゼットの奥にそっとしまう。

世の中に片付くなんてものはほとんどありゃしない

白いカーテンはただ、風と同じように
メロディーを奏でるように
ただただずっと揺れている。




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