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助け合いの日本の歴史 4

『万葉集』は、日本最古の歌集であり、奈良時代に編纂されました。この歌集には、貴族から庶民まで幅広い人々が詠んだ和歌が収められており、日本の古代社会や人々の心情がよく表れています。
『万葉集』の中には、助け合いや協力、共感をテーマにした歌も多く見られます。以下に、いくつかのエピソードや歌を紹介します。

◯助け合いや協力をテーマにした万葉集の歌

1. 家族や友人との絆を詠んだ歌

『万葉集』には、家族や友人との絆を大切にする歌が多く収められています。これらの歌は、助け合いや支え合うことの大切さを詠んだものです。

・家族愛を詠んだ歌

「東の 野に炎の 立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ」(万葉集・巻三・443番)

   - 作者: 柿本人麻呂

意味: 東の野に炎が見え、その光景を振り返ると、月が西に傾いていた。この歌は、遠征に赴く兵士が家族を思いながら旅立つ様子を描写しており、家族との絆と別れの悲しみが表現されています。

・友人との友情を詠んだ歌

「吾が宿の 梅の下枝に 居る鶯 君が来ませば 鳴かずあり待む」(万葉集・巻八・1428番)

   - 作者: 不明

意味: 私の家の梅の木の下にいる鶯よ。友人が来るのを待って鳴かないでいておくれ。この歌は、友人を待つ心情と、その友人との再会を楽しみにする様子が詠まれています。

2. 共同体の支え合いを詠んだ歌

『万葉集』には、農村や漁村などでの共同作業や、地域社会での支え合いを詠んだ歌も見られます。これらの歌は、古代日本における共同体の重要性を示しています。

・田植えや収穫を詠んだ歌

「春の野に すみれ摘みにと 来し我そ 野をなつかしみ 一夜寝にける」(万葉集・巻十・2207番)

   - 作者: 不明

意味: 春の野にすみれを摘みに来た私が、その野原があまりにも懐かしく、一夜を過ごしてしまった。この歌は、野での仕事の合間に感じる自然の美しさや、集団での作業を通じて感じる連帯感を詠んでいます。

・漁労を詠んだ歌

「海ゆかば 水漬く屍 山ゆかば 草生す屍 大君の へにこそ死なめ かへり見はせじ」(万葉集・巻十八・4094番)

   - 作者: 大伴家持

意味: 海で死ぬならば水に沈む屍となり、山で死ぬならば草の根に埋もれる屍となるだろう。私は大君(天皇)のために命を捧げる覚悟でいるので、後ろを振り返ることはしない。この歌は、国を守るために働く人々の覚悟と、その背後にある仲間や家族への想いを描いています。

3. 異郷での助け合いを詠んだ歌

防人(さきもり)や遠方へ赴く人々が詠んだ歌には、異郷での助け合いや故郷への想いが込められています。これらの歌は、遠く離れた場所での苦労や、仲間との連帯感を表現しています。

・防人の歌

「父母が 須恵の中山 踏み越えて 吾が来るまでに 慰めかねつも」(万葉集・巻二十・4350番)

   - 作者: 不明(防人)

意味: 父母が見送ってくれた須恵の中山を越えて、私がここに来るまでの間、どれだけ心配していたことか。この歌は、遠い異郷に派遣された防人が、故郷に残した家族を思う心情を詠んだものであり、家族との絆と助け合いが表現されています。

・旅人の歌

「旅人を 憂と悲しと 打ち嘆く かその草根を 引き蔽ひつつ」(万葉集・巻三・443番)

   - 作者: 柿本人麻呂

意味: 旅人が憂いと悲しみに打ちひしがれて嘆く様子が、枯草に覆われている。この歌は、旅の困難さとそれを支え合う心を詠んだものです。


『万葉集』に見られる助け合いの精神

『万葉集』には、古代の日本社会における助け合いや連帯感が、家族や友人、地域社会の中で自然に育まれていたことがよく表れています。
これらの歌を通じて、古代の人々が互いに支え合い、共に生きることの大切さを理解していたことが伝わります。

『万葉集』の歌は、当時の人々の生活や心情を知るための貴重な資料であり、現代においても共感を呼び起こす力を持っています。
それぞれの歌に込められた助け合いや協力の精神は、時代を超えて受け継がれている日本の文化の一部です。

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