とどけ
別れ
「また、入院ですか。どれくらいの期間になりますか」
「家族には自分で話しますので、連絡はしなくていいです。」
今まで、そうしてきた。
自分のことは、自分で決める。
私の病気だから、家族に相談しても結局最後に決めるのは、自分なんだから。
いつか、別れる時が来ると思って過ごしてきた。
この病気になってから、長くは生きられないと言われてきたから。
覚悟もできていると、そう思っていた。
でも。
こんなに急なの。
えっ、また帰れるんじゃなかったの。
私、このまま、ここで。
こんな体調で、こんな気持ちで娘や主人に会って、何を話したらいいの。
心配なことばかり。
これから、ひとりで大丈夫かって、先に逝く私が心配しても仕方ないか。
「お父さんと仲良くやってね。会えば、お互い喧嘩ばかりしてるから。」
ふたりを残していくのは、やっぱり心配だけど、こればっかりは仕方ないか。
こんなに急に私が逝くのなら、もう少し話をしておいた方が良かったね。
あなたが生まれて、あのお父さんが毎日早く帰ってきて、あなたをお風呂に入れたり、寝ている姿をみて、ニコニコしていつまでもベッドから離れなかったこと。
あなたが進学先も就職先も自分で決めてしまって、お父さんも私もちょっと寂しいと思ったわ。
同時に、逞しく育ったねって、二人で話していたこと。
いくらでも、思い出は尽きないわ。
これからのことお願いします。
届け
どんな時も表情をかえないあなた。
わがままになってもいいんですよ。
ぐっと、胸の中に思いを押し込んでいませんか。
あなたの中ですべてを解決せず。
誰かを頼ってもいいんです。
辛いと言えてますか。
我慢してませんか。
ずっと我慢してきたから、我慢していることに気づかないのかもしれません。
自分の心に正直になってみて。
後にしないで、今です。
大切な人に、自分の気持ちを伝えましたか。
話していないことはありませんか。
泣きたい時には、泣いていいんです。
自分だけで抱えこまないで。
気持ちを吐き出せたらと願う。
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急な病気の悪化や事故などで、家族と十分な時間がとれないままお別れすることがあります。
そうなった時に、家族との時間をもっと過ごしたら良かったと後悔することがあります。
自分の気持ちや辛さを出せない人もいます。
そうならないためにも、普段から家族との時間が持てたり、辛さを吐き出すことができるのがいいですが、なかなかそうはいかないものです。
「あの時、もっと話をしていたら」などと、思うことがないのが一番なのですが。
人間という生き物は、完璧ではないので、後悔することがいくつもあるのかもしれません。
ひとりひとりの人生に関わり、その人に関わることはその家族にも関わることであり、どのように人生の最期を過ごすのかと考えてしまいます。
ただ、私の人生ではなく、ひとりひとり違う人生。
正解も不正解もなくて、人の数だけ人生があるというように、最期の過ごし方も人の数だけあります。