はじめての執筆依頼
仕事終わりに上司から、
「原稿執筆の依頼が来ているけど、どうする?」と、声をかけられた。
執筆の依頼なんて、思ってもいなかった出来事。
断る理由はない。
看護師になって、かれこれ30年以上。
いつかは自分の看護を文字にしたいと密かに思っていた。
昨年、上司との面談でも「いつか看護について書きたい」と、宣言していた。
6月下旬、医療、看護雑誌の出版社から、執筆の依頼がきた。
患者さんや家族の意向、看護師の意見を取り入れた、患者さんの安全に対する取り組みを行い、学会で発表した。
それを雑誌社の方が目に留めてくれた。
こんなチャンスはないので、「はい、喜んで」と、言いそうになるのを堪え、ニヤつきそうな口もとをマスクに隠し「やってみます」と、執筆を開始した。
7月8月の週末は、朝からカフェに行き、執筆作業。
データを再集計しなおし、図を作成した。
言葉の意味を調べ、文献を確認しなおす。
出版社からの依頼内容や注意事項を確認しながら作業をすすめる。
何とか、3年間の取り組みをまとめあげ、上司に提出。
早めに取り掛かったが、上司から手直しが入り、9月に入っても修正を繰り返す。
締め切りに間に合うのかとヒヤヒヤした。
上司からのオッケーも出て、ようやく完成。
締め切り前日に出版社にメールで提出。
出版社の担当の方から、「編集作業に入ります」と言う返信をもらった時は、憧れていた「書く仕事」が、一歩前進した気分だった。
編集作業の結果が待ち遠しい。
どれくらい修正箇所があるのか。
学会に発表したものをベースに書いているので、ありえないとはわかりつつも、「趣旨に合わない」「書き直し」と言われるんじゃないかと不安もよぎる。
それから3週間。
出版前の見本と校正刷が送られてきた。
プロの仕事なので当たり前だが、図の配置やグラフも整っている。
校正内容は、入力ミスの指摘程度だった。
訂正箇所をメールで返信し、作業完了。
全8ページ。
自分で書く仕事を掴みとったわけではないが、書くことに臆病にならずにチャンスが来たらすぐに掴む。
行動しないと見えない世界がある。
作家じゃないから、書くプロじゃないから、書き慣れてないからと思っていては書くハードルはいつまでも高いまま。
「えいっ」と、踏み出すことも必要だ。