怪獣のキーホルダーと鍵
落ち葉に混じって、怪獣のキーホルダーがついた鍵が落ちていた。
持ち主さんは、鍵がなくて泣きそうになっているかもしれないのに、そんなことは関係なしの笑顔の怪獣。
持ち主さんが気づきやすいように、そばの塀の上に置いてきた。
翌朝、同じ場所を通ったら、
夜通し持ち主を待っていただろう怪獣は、塀の上でうつ伏せになっていた。
私の母は、専業主婦だった。
父が子どもの頃、学校から帰っても親は忙しくて家にいず寂しい思いをしたからと、母が働くことを許さなかった。
いつ家に帰っても必ず母がいた。
自分で家の鍵を開ける友達が大人に見えて、鍵っ子に憧れた。
用事で母がいない日は、鍵を無くさないように大事に持ち歩き、鍵を開ける滅多にない瞬間のために走って帰った。
結婚し、子供が生まれても共働きの我が家は、娘が小学校にあがり、鍵を持たせなければならなくなった。
背伸びをしても鍵穴に手が届かない小さい娘。
台に上がって鍵を開ける姿は今思い出すと、ぎゅっとなる。
ひとりでの留守番で寂しい思いをさせることや何かあったらと心配ごとはつきなかった。
鍵っ子に憧れ、親がいないと知ると喜んでいた子どもの頃の自分。
自分の子が鍵っ子になって、両親の気持ちを思い出していた。
鍵を落とした人はどんな人だろう。
小学生かな、自転車に乗った高校生かな、急いでいたのかな。
家に着いて、困っていないかな。
早く怪獣に迎えがきますように。
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読んでいただきありがとうございます。
エッセイの書き方を試しています。
怪獣のキーホルダーを出勤途中で拾いました。
「時間がなくて急いでいて落としたのか」
「ひとり暮らしの人だったら、帰宅後困っているだろうな」と、
思いながら、落ち葉に埋もれないよう、見つけやすいように塀の上に置いてきました。
鍵を見て、子供の頃のことなどを思い出しました。
ありきたりですが、親になって気づいた自分の親の気持ち。
親とは違う、親になった自分たちの在り方を感じた瞬間でもありました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
まだまだ書き方を模索中。
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