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Photo by
komaki_kousuke
はちみつは
「ハチミツは、大丈夫だった?」と、彼女から手渡されたのは、はちみつ紅茶の包み。
「ひと息つく時、これを飲んでるの」と、微笑みとともにプレゼントしてもらった。
「はちみつ大好き。甘い紅茶なの?」と、私。
私と彼女の性格は、正反対で、彼女は小さい時から、曲がったことは嫌い、匂いや味にも敏感。身の回りも整理整頓が行き届き、親や先生にもいつも褒められ、優等生な彼女。
社会人になってからも、彼女は男性ばかりの職場で、真面目な仕事振りと負けず嫌いな性格で、どんどん昇進し部下を持つような立場になった。
たまに会うと、誰にも負けないという気迫が表情にも言葉にも出ていて、怖いくらいだった。
ところが、結婚して1年後。
子育てを優先したいからと、あっさりと仕事を手放した。
子どもの話しをする彼女の表情は、とても柔らかい。
やさしさを幾重にも纏っているみたいだ。
彼女とたくさん話しをして再会の約束をして別れた。
私は家につくとさっそくお湯を沸かし、ティーパックを静かにカップに落とす。
ゆっくりと茶葉が広がっていき、褐色に染まっていく。
鼻の先を微かに甘く香りがくすぐる。
口の中は、ふんわりと甘い。
この紅茶を飲むと、彼女のやさしい表情とともに癒されている。
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シロクマ文芸部 お題 「はちみつは」から始まるで書いています。
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