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難解な文章を超えた先の快楽(高村薫編)

小説紹介第13弾!

「レディー・ジョーカー」 高村薫

1997年発売

本日紹介するのは兎に角難解な文章が持ち味の女傑・高村薫。

元々外資系の商社で働いていたのですが、1990年日本推理サスペンス大賞でデビューしました。

こういう言い方すると今ならコンプラ違反かもしれないけど、過去の女性作家にはなかった重厚で硬質な文体で、正直読みやすいとは言えない作風が持ち味。

でもその難解さを超えた先に、得も言えない快楽があり、コアなファンを沢山持つ稀有な作家さんです。

既に1993年に(マークスの山)で直木賞を受賞しています。

(マークスの山)から続くシリーズを、合田雄一郎シリーズとして現在6作続いております。

そのシリーズ三作目が今作です。

グリコ・森永事件がベースになっています。

ささやかな薬局を営む男、町工場でギリギリの生活をしている男、障害のある女児を抱えるトラック運転手、在日としての葛藤を放つ信金勤めの男、惰性で刑事稼業を続ける男。

何の繋がりも無い五人は競馬場で知り合いました。

世の中の総てに恨みを抱えた五人が、大手企業から大金をせしめる計画を立てます。

どう考えても不可能な計画でしたが、運命の歯車は男たちに味方し出します。

捜査に出たのは合田刑事。

果たして無事に計画は成功する事が出来るのか?

という物語。

勿論実際の事件の真相は今でも闇の中なんで、大半は高村さんの創作なんだけど、リアル感あり、前半の読みづらさを超えたらグイグイ引き込まれます。

大長編だし、エンタメ小説とは違うので、読書慣れしてない人には結構苦行かもしれないけど、その先にある快楽を、ぜひ体験してみてください。

それでは高村薫のマイベストスリーを紹介です。

第三位 黄金を抱いて跳べ 1990年 日本推理サスペンス大賞にしてデビュー作。既に映画化されております。デビュー作というのもあり、難解さは薄くエンタメ性もあります。初めて読んだ時、男性作家だと思ってました。それ位硬質な文体でした。

第二位 冷血 2012年 合田シリーズ第5作目 世田谷一家殺人事件がベースの物語。カポーティ―の名作と同タイトルで話題になりました。これも大長編ですが、人間の業を見事に描いた傑作です。

第一位 レディー・ジョーカー 1997年 今作から実際の事件をベースにする事が多くなった高村作品。なので書く前に、恐ろしい程の資料を読み込んでいると思われます。細部まで拘った事件の真相。小説を超えてノンフィクションの香りもする程です。

以上三作がお勧めなんですが、合田シリーズは出来たら(マークスの山)から順に読んだ方が楽しめると思います。

ですが結構の苦行です(笑)

我慢強い人なら、絶対納得いく読了感です。

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