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『地面師』今昔物語

現在話題の『地面師』。

Netflixで実際にあった不動産詐欺事件をモチーフにしたドラマ『地面師たち。』が話題を呼んでいる。

皆さん知っての通り、五反田の古旅館の土地・建物を、所有者の独り住まい女性が入院している間に、所有者になりすまして大手不動産取引業の積水ハウスから55億円もの大金を詐取した大事件だ。

この事件では十数人の犯人が各々役割分担して大金を見事に詐取している。

計画した内田受刑者は、詐欺師集団でも有名人で、これまでも他人の土地・建物の所有者になりすまして転売して大金を手にしていて、なかなか足が着かない様に痕跡を残さないプロの地面師で有名だった。

詐欺罪の最高刑が10年なので、ドラマみたいな殺人を犯すリスクを避けて、現金を海外口座やマネーロンダリングして隠している。その為、10年の懲役を我慢すればその大金を手にする事ができるので、もし捕まっても出所したら夢の生活が待っている。

実際この積水ハウスの事件も55億円の行方はわかっていない。

配当のバランスを考えても、均等割でも一人4億円強、仕事のパワーバランスがあるので、主犯格は倍の8億円は手にしたと思う。10年で割っても、年収8,000万円は刑務所で3食昼寝付きで得ることを考えると楽勝と言えよう。

殺人や他の罪で、娑婆に一銭も残っていない受刑者と比べると雲泥の差だ。

実は私も20年近く前に地面師の手伝いをやった事がある。

ドラマの『地面師たち。』の詐欺手法は、なりすましの婆さんの身分証明書と演技が事件の要となっている様だが、被害者側の会社が焦っていて、所有者の本人確認をしっかりやらなかったのが被害の原因で、被害者の焦り、証明書の信憑さの確認を怠って被害に遭っている。

今の時代はパソコンやITが進んでいるので、見た目の公的身分証明書は簡単に作れる。だが、免許証番号や印鑑証書、住民票の照会を怠わなければ被害は防げていた。

昔の手法は、本物の所有者を特定して、勝手に住所移転し、移転先で新たに印鑑登録し、本人になりすまし免許紛失やパスポートの再発行などを行い、本人が気付く間に所有する物件を勝手に売っていた。

今ではマイナンバーカードなどがあって、セキュリティがしっかりしてるので、勝手に住所移転などできないが、やろうと思えばできてしまう盲点もある。ここでは割愛する。

また、狙いの土地を探すのも大変だった。実際に法務局にあくせく通い、土地の登記簿閲覧をして謄写(写メは許されている)し、カモリストを作成していた。

大きくやるとすぐバレるから、30〜100坪程度の土地で、高齢者が所有していて、なるべく複数所有している人がターゲットだった。

所有者は自分の土地などあんまり関心なくて、一つぐらい無くなっても気付かない。勝手に住所移転されても、公的証明書なんて普段使わないから気付くまで時間が掛かる。

気が付いたら自分の土地が売られていて、法務局に自分では無いと発覚しても、所有者は名義が戻って来るので被害はない訳で、被害者はその土地を買った不動産屋だ。

昔の手口をもう一つ紹介すると、法務局に閲覧の際に、登記簿自体を改竄すると言う手口があった。昔は電子登録などなかったので、登記簿台帳を見せられた。その台帳の中にある目当ての土地の登記簿自体を偽物に差し替えたりしていた。

紙の材質、色、文字などあらかじめ写メと目視で計測して、そっくりなモノをすり替えて、そのご登記簿謄本を被害者が取得に来ても改竄した登記簿謄本が交付され、売却したり、土地を担保に金を借りたりしていた。

地面師もイタチごっこで、あの手この手で他人の土地・建物を狙っているので、皆さん今一度住民票取ってみたり、登記簿謄本をあげて確認した方が良いと思う。

次に狙われているのは貴方の土地かも知れません。

秋山呂玖

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