「モンスターズ:メネンデス兄弟の物語」

Netflixで「モンスターズ:メネンデス兄弟の物語」を見た。1980年代に実際に起きた事件を元に作成された。
メネンデス家の兄弟が両親を殺害し、その後の裁判でメネンデス家の秘密が証言され、有罪となるのか無罪となるのか、真実はなにか、ハラハラする展開だった。

両親や祖父母を殺害することを尊属殺人(parricide)という。日本では尊属殺人罪は通常の殺人罪より罪が重く、死刑か無期懲役となっていた。しかし、家族を殺害する背景は複雑であることが多く、どんな事情があっても死刑か無期懲役というのは罪が重すぎるということで、1995年に刑法から削除されたとのこと。

一方米国では、以前より尊属殺人だからといって量刑が重くなるということはなく、その殺人が計画されたもの(謀殺:premeditated murder)かそうでないかによって、第一級殺人か第二級殺人に分けられる。第一級になると死刑か終身刑を課されることが多く、計画していたか衝動的な犯行であったかが重要な争点となる。このドラマでも計画性があったかが大事な争点であった。
また、米国では基本的に陪審員(jury)による判決となるため、陪審員の心証が重要となる。この兄弟は小さい頃からの両親の仕打ちを主張して、陪審員の同情を引いていた。

親や子を殺したから一律に罪が重くなるというのは確かにおかしいと思う。家族だからこそ、そこにはやむを得ない事情も含まれていることもあるだろう。もちろん虐待されたからといって殺していいわけではない。殺人以外の方法をとるべきである。しかし今の社会システムで虐待を止めることはできないだろう。児童相談所へ相談しても証拠がなければなかなか動けないし、学校でのいじめで先生に相談したらその後にさらにいじめがエスカレートするのと同じ構造で、報復を恐れて子供が他の大人に相談することも難しいだろう。虐待としつけの線引きも難しい。「親ガチャ」という言葉にあるように、生まれた家庭によって環境が違うのは仕方ないことだが、子供の身体や精神が壊されてしまうほどの環境は阻止しなくてはならない。それがその子のためでもあり社会のためでもある。定期的に子どもの様子がみれる、子ども食堂は一つの有用な対策だろうと思う。あとは監視カメラは現実的ではないが、音声を録音できる機器を子供に持たせることができれば虐待の発見に有用かもしれない。現実的には、地域でお互いに関係を密にして、おかしなことがあればすぐに気づけるような地域社会をつくることが一番の対策かもしれない。


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