初めて読んだ安部公房氏の作品について

 私が初めて安部氏の作品を読んだのは高校生の時でした。
 タイトルは「公然の秘密」(新潮文庫、安部公房作「笑う月」にて収録)。この作品を授業で扱ったのが、初めての安部公房体験でした。
 どことなく灰色で白黒の世界を連想させ、冷たくて奇妙な感覚を感じていたことを記憶しています。

"弱者への愛にはいつだって殺意がこめられている"

 それはチューニングが合うように、私の思想に深く入っていきました。
 分かるという共感ではなく、自分が見透かされてしまったような気持ち…。私の中にある公然の秘密を言い当てられたような文章。

初めての安部公房氏の作品は、そんな後ろめたいものでした。

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