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恋の歩道、恋と青、僕らの青春短編


『病院へ帰ろうよ。』あの冬の声を、雪の声を。
白く美しい少女だった。

大学病院である少女との出会いがあった。
まだ冬が厳しく、雪の声がした。

まるで僕らは、春がまだかと問いかけ、まだ葉もつかない桜の木に問いかけていた。

月が僕に問いかける。
なにか言いたそうだったのに、
急に黙り込んた、、、

今はまだあの頃が忘れられない。

少女は小児科に入院していて、僕が病院のコンビニで小説の公募の雑誌を読んでいると、エントランス前から寄ってきて
『私も応募するんだよ。』眼をきらきらさせて僕へ問いかけた。

ノンフィクションに応募すると、少女はしきりに僕へ訴えかけた。ふとちらりとみると小説大賞2018というのに目が止まった。

『2人でこれに応募しようよ。』

また少女は眼をきらきらさせた。

病室で、僕はよく窓からその少女が本を読んでいるのを何の本か気にかかっていた。

ずいぶんと分厚い本だった。
周りでスマホをいじる少年を見向きもせず、もくもくと読んでいる。

僕は少女が何故、そこまで真面目にその本を読むか、今度聞いて見ようと思った。

次の日、泣いて少女が僕の傍へやって来た。

『別雑誌の私の公募原稿がそのままそっくりで大賞に選ばれてる!!』

『それで、どうしてそう思うの?』

『全く全て、1字1字、すべて一緒なの!!
悔しい』

少女の名前は明里。紺野明里。
どうやら、少年にノートパソコンのパスコードを視られ、不正に情報をネットに流したみたいだ。

結局、先に特許をとった者の物になり賞金も授与され、雑誌にも誰だか知らない女性が記事に写真と名前が載っていた。

『なんてことを!!』僕は動悸を隠せなかった。

陰で少年たちがヒソヒソと親に電話していた。
それから、明里は部屋から出なくなり本を窓空投げ捨てた。

僕が拾うと、それは医学書だった。


僕は、さすがに手が震えた、その雑誌にはフィクションです。と大賞者が強く訴え、明里のノンフィクションを大々的に否定された、真っ赤な恥な盗作だった。

『医学とその先の文明とは?』
題名もそのままだった。

警察署も、盗作の疑い深いと言っても著作権を取られた後じゃなあ。
と溜め息を漏らし、『本当にすまない。』
その事実を伝えたかったが、明里は部屋から他の集中治療室へ移っていた。

もうすぐクリスマス。
11月末の頃だった。

仲が良かった僕は、明里の親から詳しくは言えないが、癌が子宮に見つかり、他の臓器から転移したと伝えてくれた。

あんなに頑張ったのに。

僕は涙を隠せなかった。親御さんに名前を聞かれ、
珱太郎ですと答え、その後、

僕は外出時によそ見していたバイクに歩道ではねられ、僕も集中治療室へ入り、そこで明里と2人でクリスマスイブを過ごした。

B'zのいつかのメリークリスマスがかかって、ラジオのボリュームを少しあげた。

明里は大人だった、『今度は公募どころじゃないね。』

『僕は年末年始中に手術があるんだ。一番大切な、三度目の手術があるんだ。』


明里は、僕に『頑張って生きようよ、頑張ろうよ』
遠くのベッドで明里が手を振る、僕にとっても灯り。
クリスマスイブのイルミネーションみたいだった。

『僕もいなくなったりしないよ。来年こそ公募しよう。』

1月になり、手術は成功し僕は左脳に損傷を受けたものの、もとの気管支喘息ではなく、統合失調症もわずらった。

2月に入り、明里も集中治療室から出る事ができた。
無事、大きな手術は終わった。

雪の声、耳を澄ますと明里の声とノックする声が聴こえた。

病院を夜に気付かれずに、アーケードまで抜け出した。

明里に告白された。
癌が末期だと、最近判明して子宮をすべて摘出手術をしなきゃいけない。

『わたし、将来結婚出きるのかな?』

涙ぐみながら、僕へ告白し、今年度高校生になるけど私は、"本当は医師を目指していたの。"

明里は溜め息を漏らし、誰もいない11時のアーケードを2人で歩いた。

『なれるさ、病気にこんな耐えたんだもの』
頑張れ、頑張れ、君だったらなれる。

明里はキスを求めた、宇宙が灯りに包まれているようだった。

「わたしと結婚してくれますか?』

僕にとっても、大切な人だった。

『はい、僕も君となら話したいことがこれからもいっぱいある。結婚しよう。』


また雪の声がした気がした、


"病院に帰ろう"
『2人で謝ろう』


それから4年が過ぎ、明里は有名大学の医学部に入学した。
その翌日、明里は友だちと横断歩道を歩いているときに信号無視したトラックにはねられてく亡くなった。
季節外れに『いつかのメリークリスマス』をベランダで歌った。"君がいなくなることをはじめて、こわいと思った。人を愛するということに気がついた、いつかのメリークリスマス。"

ベランダで、洗濯物を取りこもうとしたら、涙が溢れ止まらなかった。泣き崩れる自分がいた。

あのアーケードに抜け出した夜のことを、
明里にプロポーズされていたのを思い出した。
『本当に本気だった、素直に受け取り、将来の約束をしたい』

"医学部に入ってほしい、その頃、まだその気があったら連絡して欲しい"

好きな言葉は、灯り。明里。

桜が今年も咲く

君が青春時代のほとんどを病院で過ごしたこと、
何度も 癌の転移が見つかったこと

高校受験の勉強もベッドでしたこと
ほとんど独学で、医学を学んでいたこと

本当に努力家だった、、

そう生きていれば 本当はそれだけで
学歴なんかより 生きている事の方が大切なんだ。

『ねえ、雪をかぶった桜の木は化粧をしているようじゃない?』頬やまぶたに雪がかかり泣いているようだった。

色白の君のようだ。 

立ち止まってる、僕のそばを誰かが足早に、通り過ぎる荷物を抱え幸せそうな顔で。


雑踏を歩いているとき、声がした。
『貴方は生きて』

雪の声がした。






#創作大賞2024

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