見出し画像

保育園看護師のお仕事紹介シリーズ ⑥健康教育

こんにちは!現役保育園看護師のチロです。

保育園看護師の仕事の楽しさや専門性を発信していく『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』!

第6弾は、「健康教育」について解説していきます。

看護や医療の分野において「健康教育」というと、ヘルスプロモーションの考えに基づき行われる健康の保持・増進を目的とした専門家による教育的活動というイメージがあります。

保育園における「健康教育」は少しニュアンスが異なります。もちろん健康の保持・増進が目的ではあるのですが、対象はあくまで保育園児(乳幼児)であるため、どちらかというと園児の将来的な健康の保持・増進につながるためのきっかけをつくる教育的活動と言えます。より保育的な視点を持つことが大切なのだと思います。

今回は、改めて保育園における「健康教育」の目的やねらいについて考えた上で、健康教育を実施する際の流れについてざっくりまとめてみました。

また、これまで実施してきた健康教育についても簡単に紹介しています。これまでのお仕事紹介シリーズと合わせて是非チェックしてみて下さい!



「健康教育」の目的

冒頭では健康の保持・増進が目的であると解説しました。間違ってはいないのですが、やや長期的で範囲が広すぎるような印象を受けますよね。

保育園における「健康教育」の対象は0~6歳の乳幼児です。より短期的で、保育の視点から目的を再設定すると、「健康教育」の目的は子どもたち自身が健康で安全な行動をとれるように支援していくことになると思います。

保育所保育指針から読み解く「健康教育」

健康という観点から、子どもたちを支援・保育していくということについて、保育所保育指針の第3章「健康と安全」には下記のように記されています。

保育所保育において、子どもの健康及び安全の確保は、子どもの生命の保持と健やかな生活の基本であり、一人一人の子どもの健康の保持及び増進並びに安全の確保とともに、保育所全体における健康及び安全の確保に努めることが重要となる。
また、子どもが、自らの体や健康に関心をもち、心身の機能を高めていくことが大切である。

保育所保育指針(平成二十九年三月三十一日)(厚生労働省告示第百十七号)

健康・安全は、子どもたちの健やかな成長発達の土台であり、自然と自分の身体や健康について関心をもち、心身の機能を高めていけるような関わり・支援(=保育)をしていくことが重要だと読み取れます。

健康への関心も自分の身体への興味も、日常生活の中で自然と育まれるものです。そして、日常生活を営んでいく上で最も基本となるのは、食べて、出して(排泄)、遊んで、寝る、といった生活習慣です。

基本的生活習慣は、乳幼児期に獲得すべき最重要項目と言えるでしょう。そして、この「基本的生活習慣の獲得」こそ「健康教育」のテーマであり、ねらいそのものにもつながっています。

「健康教育」のねらい

「健康教育」のねらいは、5領域の「健康」から捉えると分かりやすいです。(保育の5領域については、別途ノート作成予定です。)

保育所保育指針の第2章「保育の内容」 の中に、各領域のねらい等が記載されています。1歳から3歳未満児へのねらいと、3歳以上の幼児へのねらいで、内容が異なっていることもポイントです。

1歳以上3歳未満児の保育に関わるねらい及び内容
(中略)
ア 健康
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。
(ア) ねらい
① 明るく伸び伸びと生活し、自分から体を動かすことを楽しむ。
② 自分の体を十分に動かし、様々な動きをしようとする。
③ 健康、安全な生活に必要な習慣に気付き、自分でしてみようとする気持ちが育つ。
(イ) 内容
① 保育士等の愛情豊かな受容の下で、安定感をもって生活をする。
② 食事や午睡、遊びと休息など、保育所における生活のリズムが形成される。
③ 走る、跳ぶ、登る、押す、引っ張るなど全身を使う遊びを楽しむ。
④ 様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽しむ。
⑤ 身の回りを清潔に保つ心地よさを感じ、その習慣が少しずつ身に付く。
⑥ 保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする。
⑦ 便器での排泄に慣れ、自分で排泄ができるようになる。

保育所保育指針(平成二十九年三月三十一日)(厚生労働省告示第百十七号)

3歳以上児の保育に関するねらい及び内容
(中略)
ア 健康
健康な心と体を育て、自ら健康で安全な生活をつくり出す力を養う。
(ア) ねらい
① 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう。
② 自分の体を十分に動かし、進んで運動しようとする。
③ 健康、安全な生活に必要な習慣や態度を身に付け、見通しをもって行動する。
(イ) 内容
① 保育士等や友達と触れ合い、安定感をもって行動する。
② いろいろな遊びの中で十分に体を動かす。
③ 進んで戸外で遊ぶ。
④ 様々な活動に親しみ、楽しんで取り組む。
⑤ 保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ。
⑥ 健康な生活のリズムを身に付ける。
⑦ 身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。
⑧ 保育所における生活の仕方を知り、自分たちで生活の場を整えながら見通しをもって行動する。
⑨ 自分の健康に関心をもち、病気の予防などに必要な活動を進んで行う。
⑩ 危険な場所、危険な遊び方、災害時などの行動の仕方が分かり、安全に気を付けて行動する。

保育所保育指針(平成二十九年三月三十一日)(厚生労働省告示第百十七号)

要は、保育そのものと同じように「健康教育」も各年齢や発達に合わせた関わりが重要だということです。当たり前なことですが、忘れてはいけない大切なポイントです。

また、上記の引用文献を読むとお分かりの通り、「健康」は生活の土台であるため、日常生活のすべてが「健康教育」の場面になりうるのです。あとは、その日常をどのように切り取って、再設定し、「健康教育」という活動に落とし込んでいくのかが、保育園看護師としての専門性にもつながっていくと個人的には思っています。

保育園看護師が実践している「健康教育」の実施手順

保育園看護師として、「健康教育」という活動は下記のような流れで実施することが最も理想的だと思っています。

  1. 保健計画に記載

  2. グループ担任と協議

  3. 活動準備

  4. 実施

  5. 記録(振り返り)と次回の計画

  6. 家庭との連携

簡単に各項目について解説していきますね。

1.保健計画に記載

前述したねらいや目的は、あらかじめ計画することで、より意識的になることができるはずです。保育園は「保健計画」という年間計画書を作成しているため、大まかな活動予定は保健計画に落とし込んでおくことが大切です。(「保健計画」も保育園看護師の大切なお仕事ですね。後日まとめて共有予定です!)

2.グループ担任と協議

保健計画を元に、実施時期が近づいてきたら各グループの担任と予定を調整します。グループとしての現状を確認したり、課題や支援の方向性について話し合ったりして、計画していた活動をより具体的にしていきます。

この時、必ずしも計画していた活動を遂行する必要はありません。子どもたちの姿は毎年異なりますし、その時々で健康に関する課題や伝えたいことも変わるからです。今、子どもたちに必要なことを展開してあげてください。

そして、何より担任と連携をとることが大切です。なぜかというと、「健康教育」はあくまできっかけづくりに過ぎない活動だからです。

一番イメージしやすいのは「手洗い指導」です。年齢・発達に応じて、毎年正しい手の洗い方を伝えていますが、子どもたちに単発で伝えただけでは絶対に習慣化しません。毎日、毎回、手を洗う度にどれだけ保育者が意識的に子どもたちと関わることができるかが、習慣づくりの最重要ポイントになります。

日常における保育者の意識を向上させることも「健康教育」の裏テーマだと言えます。そのためには、保育園看護師が単独で活動するのではなく、必ず担任と二人三脚で計画、活動していく必要があるのです。

3.活動準備

計画を具体化したら、活動準備をします。対象となる園児が興味をもって参加できるよう、ありとあらゆる工夫をする必要があります。

絵本や紙芝居の読み聞かせ、エプロンシアター、寸劇など、保育現場でよく見る集団対保育士の場面では、視覚的教材を多く使用していることが分かりますね。

言葉や文字を一生懸命学んでいる最中の子どもたちにとって、一目見て意味が分かるような図やイラスト、動き、音などの感覚的かつ直観的に理解できるものがあると、それだけ興味を持ちやすく、印象にも残りやすくなります。その効果を「健康教育」でも最大限利用していきます。

使用する物品や視覚的教材を準備することと並行して、記録も残しておくとよりよいと思います。指定の書式は特に定められていませんが、活動のねらいや目的、実施予定日時、配慮すべきこと、使用物品、活動内容(時間軸)、反省などを記載しています。

記録を元に再度担任と相談したり、必要なら主任や園長とも共有したりして園全体を巻き込んで展開していくことで、健康教育の質をボトムアップしていくことができると、より理想的だと思います。

4.実施

あとは実践あるのみです。実際に子どもたちに健康教育をしていると、思わぬところで鋭い質問が来たり、予想に反して興味がなさそうだったりと、様々な反応が返ってきます。

こればっかりは経験と慣れの両方が必要ですし、園児との信頼関係があるかどうかも重要です。日頃からラウンドや保育、ケガや体調不良時の対応等において子どもたちと関係性を築くことを意識していると、子どもたちは自然とリラックスして参加してくれるような気がします。

とりあえず、ハキハキと、声に抑揚をつけて、動きを大きく、面白く、楽しく、やってみて下さい!自分が楽しいと思える活動は、子どもたちにとっても楽しさが伝わっていくものです。

5.記録(振り返り)と次回の計画

実施後は、子どもたちの反応や姿について簡単に記録しておくとよいと思います。そのまま保育日誌にすることもできるし、文章化することで共有することがより簡単になります。

特に担任とは必ず共有したいところです。活動中に園児の気になる言動があった時や、全体的に反応がいまいちだった時など、看護師の気づきがグループの運営や個別支援の視点においての重要なヒントになることもしばしばあります。

また、記録を書くときは評価的な視点よりも次にどうつなげるかという視点をもって記録できるとより効果的だと感じています。

「健康教育」はあくまできっかけづくりに過ぎないことが多いです。一回実施して終わりではなく、日常生活の中で実践していくための工夫をやり続けることが大切です。つまり、日常の保育の中で常に「健康教育」に視点を持ち続けて関わっていくことが究極的な「健康教育」だと思っています。

6.家庭との連携

ここまで活動してきて、忘れてはいけないのが家庭との連携です。

保育園で大切にしたい生活習慣は、家庭でも同じように大切にしてほしいことです。どちらか一方でだけ意識すればよいということではないのです。

そのため、「健康教育」として伝えたことや活動したことは、保護者の方にも共有して下さい。簡単なお便りだけでも十分ですし、口頭で伝えるだけでも良いです。余裕があれば詳細に伝えられるとよりよいとは思いますが、各園の余力に応じて、出来る範囲のことを実践していけたら素敵だと思います。

自分としては、保育者と保護者が同じ視点・目線で子どもたちの生活を支えていくことが大切だと思っています。特に「健康教育」で取り扱う内容は、大人にとっては日常生活の中で当たり前になっている(≒無意識的になりがちな)ことが多いです。改めて保護者の方にも意識してもらうことで、結果的に子どもたちの生活習慣獲得につながっていきます。

実際に実施してきた「健康教育」の紹介

これまでの保育園看護師生活で、自分が実施してきた「健康教育」を紹介します。(それぞれの詳細な内容については、また別の機会にまとめてみたいと思っています!)

  • 手洗い指導(各年齢、やり方は様々です!)

  • 視力検査/目の話

  • 歯の話/歯磨き指導

  • 耳、鼻の話

  • 人体探検(臓器や脳の模型を作成して実際に体験してもらう/臓器パズルをやってみる)

  • 包括的性教育を取り入れた体の話(「同意」「境界線」「体の自己決定権」「プライベートゾーン」など、安全教育にもつながっていく話)

  • プール前の大事な話(プライベートゾーンを中心にプール活動のお約束)

  • 消化の話

  • ウンチの話(食育と絡めて栄養士さんと合同で!)

  • 風邪の話(コロナ、インフルエンザの話とか)

  • かさぶたの話

  • いいタッチ、わるいタッチの話(絵本読み聞かせから展開)

細かく書くともっとありますが、大筋はこんな感じです。皆さんは、どんな健康教育をしていますか?ぜひ教えてほしいです!!

まとめ

保育園看護師としては、「健康教育」はすごくやりがいのある業務の一つだと思っています。同じテーマでもやり方は様々ありますし、続ければ続けるほど深みにはまっていくような感覚があります。

そして「健康教育」は看護師の専門的な視点と、保育の専門的な視点の両方から組み立てていくことで真価が発揮される活動だとも思っています。保育園看護師の専門性は、健康教育の中にも詰まっているような気がします。

「健康教育」はあくまできっかけづくりに過ぎない活動が多いです。まずは保育園看護師自身が意識的に子どもたちを観察すること、「健康」という視点から保育を実践していくことを是非意識してみて下さい。

自分もこのノートを書きながら、保育園看護師の専門性について再認識できたような気がしています。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?