保育園看護師のお仕事紹介シリーズ①『ラウンド』
こんにちは!現役保育園看護師のチロです。
今回から、保育園看護師の仕事の楽しさや奥深さを伝える『保育園看護師のお仕事紹介シリーズ』を始めます!
第1弾は、保育園における「ラウンド」について解説します。
シリーズを通して、仕事内容を紹介するだけではなく、自分自身が意識していること、保育園看護師の専門性として確立していきたいと思っていること、課題に感じていることなども織り交ぜて書いていきたいなと思っています。
ある意味自分流の『保育園看護師の業務マニュアル』を作成するようなシリーズになるかもしれません。よろしくお願いします!
病院における看護師の「ラウンド」とは
「ラウンド」とは、一般的には病院勤務の看護師が使用する医療業界用語です。病棟内や病室内を巡回し、受け持ち患者さんの情報をとったり看護ケアを提供したりすることを「ラウンド」と言います。
病棟で看護業務を効率よく行うためには、効率よくラウンドをすることが求められます。受け持ち患者さんの情報と必要な看護ケアを逆算して、どのような順番でどのようにラウンドしていくのかを考えることは、看護師としての必須スキルともいえるでしょう。
看護業務の根幹ともいえる「ラウンド」ですが、保育園と病棟では少し目的が異なると思っています。
保育園における「ラウンド」の目的
保育園におけるラウンドと、病棟におけるラウンドとの一番の違いは、必ずしも看護ケアを提供するわけではないということです。
病棟ではケアも含めて効率よく回ることが求められますが、保育園でのラウンドは「看護ケアを提供する」ことが第一の目的ではありません。
保育園での「ラウンド」には、大きく分けて以下2つの目的があると考えています。
園児の健康情報をとること
コミュニケーションをとること
この2つについて、解説します。
1.園児の健康情報をとること
自分が働いている園は、0歳児クラスから5歳児クラスまであり、定員80名の認可保育園です。約80名の園児の健康管理をすることが、保育園看護師である自分の一番大切な仕事です。
ラウンドすることによって、一人一人のお子さんの健康状態と経過を把握しています。特に、前日にけがをした子がいればケガの経過を確認したり、体調不良でお休みしていた子が登園再開していれば、症状の経過や服薬の状況などを確認したりしています。
特に乳幼児は、急激に症状が悪化することがよくあります。朝は元気だったのに急に高熱が出たり、昨日はなかったのに急に咳や鼻水が出たりすることが日常茶飯事です。
そのため、日々園児の体調と症状の経過を正しく把握しておくことが重要です。園児を一番近くで観察している担任と健康状態を共有しておくで、急変時に迅速な連携ができたり、体調不良の前兆がある場合はリスクヘッジで活動を調整してもらったりすることができます。まさに、看護師の専門性が保育に生きる瞬間だと思います。
そして、集めた情報は「保健日誌」に記録していきます。数多ある保育の記録物の一つで、お子さんの健康状態や症状の経過、ケガや対応などを日ごとにまとめている書類です。「保健日誌」については、シリーズ第2弾としてで紹介予定です!
ラウンドはできれば1日2回、日中の変化を観察するために、朝と午睡明けに回りたいと思っています。しかし、現実的には時間を確保することが難しく、朝だけになってしまうことが多いです。
園によってはほとんど保育に入っている看護師さんも多いと聞きます。自分はありがたいことに看護師として独立して業務をさせてもらっているため、ラウンドをする時間をとることができていますが、園によって看護師の働き方や活用方法にばらつきがあることは、保育業界が抱える課題の一つだと思っています。
2.コミュニケーションをとること
園児の健康情報をとると同時に、あいさつをしたり、声をかけたりかけられたりしながら、園児とコミュニケーションをとることを大切にしています。日々コミュニケーションをとることのねらいとしては、園児と信頼関係を築くことと、園児の普段の様子を把握することにあります。
特に一期(4~6月)は、より意識的に新入園児のお子さんに声をかけています。まずは顔と名前と雰囲気を覚えてもらうために、安心感を与えられるような声色で話しかけています。
もちろん、緊張感や拒否が強いお子さんに対しては、担任との信頼関係ができるまであまり刺激しないようにします。男性が怖いというタイプのお子さんも時折いますからね。でも、毎日顔を見せにいくようにはします。継続することで、ある日突然笑顔を見せてくれるのです。
看護師が園児と信頼関係を築くことが重要なのは、看護師が直接園児とやり取りをする場面では、園児自身が体調不良だったりケガをしていたりすることが多いからです。信頼関係のない人に処置や対応をされることは、大人でも緊張しますよね。
特に子どもは、元気な時と比較すると体調不良の時の方が機嫌も悪いしストレスをたくさん感じています。ケガしたときは特に「痛み」という感覚が優勢になっていますから、感覚過敏的に処置を拒否することもあります。
そんな時に、普段からあいさつしたり話をしたりしている看護師になら、痛みをちょっと我慢して処置させてくれたり、安心して休んだりすることができるのです。子どもの場合、ストレス因子を少しでも減らしてあげることで、大人以上に痛みや症状が緩和される効果もあります。
「いたいのいたいのとんでけ~!」って、小さい頃やってもらった記憶がありませんか?あれは、時と場合によっては本当に効果てきめんです。特に、ケガ自体はほとんど心配ない(外傷がない)けど気持ちが落ち込んでいるような場合、気持ちを切り替えるいいきっかけになることがあります。担任ではなく、あえて看護師が対応することで、より視覚的に切り替えるポイントになりやすくなります。
「いたいのいたいのとんでけ~!」は、日頃からコミュニケーションをとっているからこそ使える魔法です。だからこそ、毎日のコミュニケーションを大切にしたいと考えています。
「ラウンド」は職員の健康管理にもつながる
保育園看護師の業務は、園児の健康管理だけではありません。園によっては、職員の健康管理を担っている方もいるかと思います。自分も、健康診断やストレスチェックなど職員の健康管理に携わっています。
そして、職員に対して日常的にできる健康管理は、やはりコミュニケーションをとることだと思っています。自分は、「今日は元気ですか?」「先週の咳、よくなりました?」など、毎日職員の健康状態も聞いて回っています。これはコロナ禍に体温や呼吸器症状をチェックしていた名残で、今も継続していることです。
もちろん必須業務ではありませんが、日々職員と顔を合わして会話をし、その中で健康状態を確認することにはメリットがたくさんあると実感しています。例えば、体調不良の早期発見につながったり、持病の悪化を未然に防いだり、メンタルヘルスケアにつなげたり…様々です。
保育は肉体労働かつ感情労働かつ頭脳労働です。疲労がたまりやすい分、ちょっとした不定愁訴を看護師に話すだけでも、よいガス抜きにつながっている気がしています。
看護師が積極的に職員とコミュニケーションをとることは、チームダイナミクス的にも、マネジメント的にも、効果的だと思います。特に、保育園では老若男女様々な世代の方が働いているケースが多いため、その分健康面の課題も幅広いです。看護師の、医療職としての専門性を発揮することで、より長く、定着して職員が働けるようにもなると思っています。
まとめ
保育園看護師のお仕事紹介シリーズ第1弾、「ラウンド」について紹介してみました。
保育園看護師の「ラウンド」は、園児の健康管理とコミュニケーションを通じた信頼関係の構築に重要な役割を果たしています。看護師の専門性を活かしながら、日々の積み重ねを大切にすることが、より良いケアにつながるのだと実感しています。
「ラウンド」のコツはとくにありませんが、可能な限り、毎日やり続けることが大切だと感じています。朝、約10分程度でできる業務の中にも、看護師の専門性が詰まっていると感じています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。次回はシリーズ第2弾、「保健日誌」について解説したいと思っています!よろしくお願いします
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