先に逝くか遺されるか
愛する夫に先立たれ…かけている私。
遺される者の辛さ、不安、これから先どうやって生きていけば良いの?
逝かないで。まだ逝かないで。
置いていかないで。
一緒に連れて行って。
連れて行けるものなら連れていくよ。
この世のことなら、まだ想像できる。
それがどんなに酷い生活でも、どんなに寒々しい生活でも。どんなにつまらない生活だとしても。
こんな世の中だから、想像したくない悲惨な未来が待ち受けているかも知れない…と、想像は出来る。
逝く先の事は、結局は逝ってみなくちゃ分からない。どんなに想像しても、結局は誰も分からない。
たとえ逝って帰った人が居たとしても、帰って来ない人々の逝った先と、そこが同じかどうかなんて分からない。
そんな底知れぬ不安と未知の世界へ、自分の意志とは関係無く、しかも、簡単に想像できる世界に私を遺して1人逝かなくてはいけない気持ちを考えれば、私の苦しみなんてたかが知れてる。
夫を送った後、私が逝く時は、きっと逝く先への不安だけ。どうなるのかな…と思うだけ。
今、夫が直面している、この世で巡り合った伴侶と別れて旅立つ辛さや苦しさは、もう無いのだから。
私に溢れんばかりの愛を注いで、そして最期の辛い別れも不安も苦しみも、夫は引き受けようとしている気がする。