vol.2 初MLM、初サラ金

同級生が母に薦めてくれたものは、いわゆるネットワークビジネスで流通しているサプリメントだった。
数か月もの間続いた母の体調不良は、どの医者にも改善出来ず困り果てていたのに、親切心か野心かは別として彼が持たせてくれたそのモノのおかげで、母が楽になり始めていたことには驚いた。
本当なら、教えてくれたことに感謝するのが普通だろう。
が、どうしても、どうしても素直に彼の提案
…会員登録…を受け入れることが出来なかった。

それは、私がまだ世間知らずの20代に味わった苦痛と誤解のせい。
当時は相当嫌な思いをしたから、これを語らないことには何も進まない。
MLMで始まったお金の苦労を経験していたのだ。
それをここで告白していこう…

■ お金無いなら、借りちゃえば


あれはまだ20代半ば…
友だちに連れて行かれた某ネットワークビジネスの事業説明会は、小さな会場に若い男女が着席。平均年齢がやたら低く、40代以降はいなかった。
始まるまではネットワークビジネスのものとは知らず…
若いお兄さんが出てきて、自分の辛い幼少時代の話しを始めた。

彼の母はデパートの清掃員をして自分たち二人の兄妹を育ててくれた。
一時期、借金返済のためにその母が住み込みで働いたため自宅に戻らなくなったが、幼い自分たちには理由がわからなかった。で、親に捨てられたと思っていた。食事は、パン屋でもらってくる、いらなくなったパンのミミ…
そういう話だ。

今時そんな貧乏人がいるんだ~なんて思いながら聞いていた私。
自分も貧乏なくせに、 あなたとは違う くらいの気分でそこに座っていた。
友だちがなぜこんな話しに感動したのかわからなかった。
それに、どうして貧乏の私が「24万円もするアルカリイオン浄水器」なんか買わなくちゃいけないんだ? そんなお金あったら、ここには来ないよ。

ビジネスをするのに、高い買い物をしなくちゃいけないなんて理解不能。
でもその会社の言い分は (自分で使わないと、他人に勧められないでしょ」
という、もっともらしいことだった。
そうなんだ~…私はこれを買って、更には、欲しくも無い人に売らなくちゃいけないんだァ

当然、印象はドマイナス。
こんなことで呼び出されたのかよ、ひどい話だな~
そんなことより、私はお金が無いので24万円も払えません
と、お金が無いのを断る理由にしようとしたら、友だちが間髪をいれずに
『お金が無いからやるんじゃん!』と

なるほどね…そこだけは妙に納得する私 。
ローンも組めなかったから、支払いをどうするか、回りの人たちが勝手に相談している。 そして、出てきた答えが

お金借りてきて、払っちゃえば

という、驚くべきものだった。
ビジネスを始める為に買わなければならない、24万円のアルカリイオン浄水器。
すでにクレジットカードが使えず、ローンも組めない私に提案されたのは、 消費者金融でお金を借りて、一括で代金を支払ってしまうという、今考えれば恐ろしいモノだった。

「お金無いなら、借りちゃえば!」
お金に苦労している親友に言うことだろうか?
説明会が一通り終わると、申込書が出てきて紹介者とその直系?の代理店や販社に囲まれ、「お金払える?」と聞かれ、支払能力が無いとわかると消費者金融に行かされる。
これが常套手段だったようで、どこの消費者金融が審査が甘いかまで調べた上で紹介してきたのは、超オドロキだ。

当時、取り扱い商品は二種類で、

〇アルカリイオン浄水器

家庭の水道管と蛇口の間に取り付けて、カルキとか抜いていいお水にしますよ~というモノで、場所を取るタイプのもの。年に1回だったか、専用カートリッジを取り換えなければならないから、別途それも購入しなければならない。

〇24時間循環風呂

お風呂のお湯を循環させてキレイにしながら保温もするので、24時間いつでもキレイなお風呂に入れる。お湯も毎日取り換える必要がなくなるから、水道代が節約できるし、自然にも優しいとか。

どちらも24万円。
自分が良くなりたければ、ひたすら売り続けなければならない。
延々、自分のために、恋人、友人知人、親戚縁者、顔見知り?に欲しくもない買い物をさせる。それが出来ず、いつまでたっても自分に売り上げやグループが出来なければ、24万の買い物は丸々無駄に終わる。
数日後、自宅に届いたアルカリイオン浄水器の取り付けを母に拒絶され、仕方なく「親が大家」のアパートの一室を家賃も払わず占拠した私の部屋に自力で設置。

こんなちゃちいものが24万かよっ!
こうして、ただでさえ支払いが苦しい私に、
もう一枚消費者金融のカードが増えた。

つづく


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