【書評】伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい 山本隆行
概要
会社四季報はすべての上場企業の基本的な情報がコンパクトにまとめられている非常に有用な情報源です。半面、幅広い内容が取り扱われているため、人それぞれ取り扱いが得意な情報と苦手な情報があると思います。
本書は会社四季報に記載された情報の使い方、その良し悪しの基準などを網羅的に解説しており、基本的な分析力の向上、分析視点の多面化のために役立つ本だと思います。苦手分野は初心者として、得意分野は中上級者として読むと考え以下の評価軸で評価します。
評価軸
① 分析視点は広いか?
② 初心者にとって読みこなせる難易度か?
③ 中級者以上に学びはあるか?
詳細
①分析視点は広いか?
業績回復株投資、割安株投資、成長株投資、モメンタム投資といった多数の手法に役立つ分析視点が織り込まれており、広い分析視点を持っていると思います。
また、定量分析と定性分析ともに含んでおり、読者が主としている投資手法の精度を上げるうえでも自分が使っている投資手法の欠点を考えるうえでも役に立つと思います。
②初心者にとって読みこなせる難易度か?
丁寧に書かれているので十分読みこなせる内容になっていると思います。基本的なところから説明をしてくれており、例えば、業績予想・材料記事欄では一見同じように見える単語を編集者がどういう意味で使い分けているか?各号でどういった点に力点を置いた記事が書かれるか?といった内容が参考になりました。
また、業績・財務欄やチャートの説明でも基本的なところから説明がされていることもあり事前知識がなくても十分に理解できると思います。
③中級者以上に学びはあるか?
画期的な分析手法が提案されているわけではありませんので、他書にない新しい知識が得られるという本ではないと思いますが、以下2つの点で学びになると思います
(ア) 知っていたが普段使っていない分析方法の見直し。
(イ) 定義があいまいなまま使っていた情報の定義や分析方法がないかのチェック。
分かったつもりになっていないか確認するために十分読む価値のある本だと思います。
総評
会社四季報を題材に様々な角度からどういった視点や基準で企業分析をしていけば良いのかを学ぶことができます。分析視点や基準のほとんどは会社四季報以外で情報を入手した場合にも使えるものなので会社四季報を使わない人にとっても有用な本です。
また、自分が採用している投資手法の他にどんな視点があるのか?他の投資手法ではどういった視点を重視するのか?といった点も垣間見られるので自分の投資手法の見直しにもつながるかもしれません。
しかし、本書は情報を分析する方法を教えることを主とした本なので、「どういう投資をしたいか?」を決めるために役立つ本ではありません。本書は「どうやって実行するか」を考える役に立つ本です。