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銘柄分析_4216旭有機材_20241031

第一印象

まず、証券会社の情報と会社四季報からざっと眺めてみる。


概況

取っ掛かりとして、投資指標をざっと見ると下記の通り。
パッと見は割安感のある数字。

株価:4,125円
予想PER:9.2倍
実績PBR:1.1倍
予想配当利回り:2.67%

事業内容は管材システム66%、樹脂25%、水処理・資源開発9%。
感材システムは半導体製造装置向けのバルブ、樹脂は鋳造で使う砂(RCS:レジンコーテッドサンド)が主なものとなる。
利益の面から見ると管財システムのウェイトはより高い。

半導体関連のウェイトが高いとなると評価が難しいかなとは思いつつ、他の事業とのバランスを見ていく必要がありそう。

収益性

24年3月期決算を見ると売上高874億円、営業利益156億円、純利益114億円。ROE17.3%、ROA11.2%。24年3月期は半導体分野がとても強かったという背景はあるにせよ好調な数字だと思う。

22年3月期実績~26年3月期予想を見ると、24年3月期が特に良いとは言えるものの良好な推移。

ただし、事業内容を見る限り景気敏感株と考えた方が良さそうなのでここ数年のデータだけで判断を下すのは早急だろう。

財務

有利子負債42億円に対して現金等が188億円あり、フリーキャッシュフローも直近2年は10億円以上+で負債が負担になるという環境にはない。
加えて自己資本比率も72.5%とかなり高い。

現金等はフリーキャッシュフローから見るとちょっと多いような気はするが、業績の振れ幅の大きそうな業種なので四季報に掲載のある範囲だけでは多すぎると結論することはできない。

直感的には、業界的に業績の振れ幅が大きいという仮説が正しいなら、現金は少しゆとりをもって保有していても良いので代わりに自己資本比率をもう少し下げてバランスをとっても良いのでは?と思う。

株主還元

掲載期間中は予測を含め上昇傾向。配当性向は25%ぐらいになることが多い。儲かった分を還元するという形にできているし、投資キャッシュフローや設備投資等の金額を見る限り成長投資にも使っている。

伸びしろが見つからず、無為に現金をため込んだり、株主還元を行ったりという状況ではなく、自社株買いの実績もあり、うまくお金は使えているかなと思う。

株主構成

旭化成が29.4%、他にはこれといって気になる株主はない。

第一印象のまとめ

ここ数年の実績を見る限りかなり良い。
逆に良い時期だけを見てしまっていないか確認することが必要と感じる。
比較的現金も持っているし自己資本比率も高いので、株主還元の強化や自己資本比率の引き下げといった手は打てるが、財務でどうこうというより「業績を伸ばせるか?」と素直に見ていけばよい企業だと思う。

追加調査

ここからはIRバンク、有価証券報告書などを基に気になった部分を追加的に調査する。

事業内容

まず、管財システム、樹脂、水処理・資源開発というのは具体的にどんな事業なの?という所から確認したい。

1.管財システム
樹脂製バルブが主なもので、工場のほか農業用や水族館など金属製バルブと違い腐食しないことに特徴がある。耐食性が重要な分野が多くあり事業機会としては十分に大きい。半導体分野などに伸びしろあり。
競合企業を調べてみると出てくるのは、積水化学、前沢化成、キッツ、ニチアスなど、塩ビ管の会社というイメージのところも多く、規模的に太刀打ちできないような強者がいるような業界でもなさそう。
個人投資家向け会社説明会の質疑応答によると、金属製バルブの市場規模が7~8兆円に対して、樹脂バルブ市場はその1%程度、先進国では樹脂バルブ比率が3%程度とのことで樹脂バルブへの切替えがすすめば事業機会は大きい。反対に大きめに見て2,000億円程度の市場規模であれば、金属バルブメーカーからの反撃、強力なメーカーの新規参入のリスクは小さそうに思える良い感じのニッチ市場だと思う。

2.樹脂
鋳造用の樹脂・砂製品に強い。他に電子材料、建築用断熱材など。この分野も伸びしろは半導体関連という印象だが、面白いのは鋳造関連のところかなというのが個人的見解。ネガティブに言えば伸びしろが大きな分野ではないが、少なくとも国内では成長産業ではないから新規参入の心配はないし、競合企業も小さなメーカーが多い。嵩張る割に単価の低い製品なので物流コストの負担も大きく輸入品との競合も脅威としては小さい。大きく儲けられる事業ではないかもしれないがコンスタントにキャッシュを生んでくれる。金のなる木として期待できると思う。

3.水処理・資源開発
水処理設備、水再生システムの設計・施工、温泉開発工事、地熱掘削工事など。好意的に考えると半導体や自動車産業と連動が小さい事業があることは悪くないともいえるが、事業規模、利益貢献、成長余地の3点で見てネガティブな印象。

事業の状況

直近の好業績は管財システムの大幅な伸びによるもの。さすがに今年の1Qを見る限り前年ほどの利益は出せていないが、22年度並みの水準は維持できている。
また、樹脂・水処理・資源開発もここしばらくはきちんと利益を出せており。堅実な経営状態が窺える。

中期経営計画の進捗についても、半導体関連の好調、円安など追い風を受けた面はあるものの、目標の前倒しと上方修正を行っており良好。今後の展開としても新工場の検討など拡大に向けた打ち手が明示されており好感。

総合評価

企業としてはかなり魅力的だと思う。
割引いて考えておきたいのは以下の2点。

  • 直近、外部環境が追い風として大きく働いていること。

  • 伸びしろの半導体産業は波が大きいのでタイミングの判断が難しいこと。

半導体産業1本の会社ではないので、半導体産業が弱気になっているタイミングで投資すれば面白いと思う。






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