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フジテレビの新取締役って誰にするの?
フジメディアHDの投機的検討2
数日前に以下のような記事を書いた。
私は基本的には投機的な売買を好んではやらないのだけれど、報道等が目につき、気になってしょうがないので、頭の中を整理する目的で今回の記事を書く。
スキャンダルの内容には関心はないし、社会正義を論じようというものでもない。また、推奨でも何でもない個人の考えなので、その点ご理解いただきたい。
今回検討する論点は次の2つ。
そもそもPBRが低いということは企業価値の根拠になるのか?
新取締役を誰が提案し、どのような人を候補に立てるのか?
そもそもPBRが低いということは企業価値の根拠になるのか?
1つ目の、「そもそもPBRが低いということは企業価値の根拠になるのか?」については、根拠にならないというのが私の考え。
これは簡単な話で、まともに広告収入が得られるめどが立たない状況を考えれば、メディア事業に掛かる固定費が負担できるとは思えない。常識的に考えて、かなり大きな赤字が出ることは明らかで、回復の見通しは不透明。
どれぐらいの赤字が出るかをより正確に検討するなら、決算短信のセグメント情報を見れば良いが、そんなところを見るまでもないというのが現在の状況だろう。
要するにいくら資産があっても、ずっと赤字なら資産を食いつぶすしかないわけで資産価値がいくらあろうと関係ない。このぐらい極端な状況だとファイナンス理論なんて振り回す必要もない。
メディア事業が大きな赤字を生むとなると、不動産事業を手放すということは赤字を生む事業だけを手元に残し収入源をなくすということになる。
そして、もし売却するとしても、資金に困って手放すことは相手方に知られている状況で、買い手から見れば、どうしても金が必要で持っている資産を売りたいという相手から交渉を持ちかけられたということになる。どう考えても安く買うチャンスだ。
加えて、メディア事業の状況が状況なので、論点にも上がらないが、金利上昇が見込まれている環境は不動産事業にとって逆風だ。
このような状況では不動産事業はまともに売れる状況ではないと思う。これは個別の不動産についても同様の論理が成立する。
では、どうやって黒字化するめどを立てるか?ということを考える必要が出てくるわけで2番目の論点「新取締役を誰が提案し、どのような人を候補に立てるのか?」につながってくる。
新取締役を誰が提案し、どのような人を候補に立てるのか?
現状を打破するためには2つクリアしなければならない課題があると思う。
旧体制とつながりのない新しい会社に変わったと認知されること。
スポンサーが新体制を評価するに足る説明材料があること。
これは単に、取締役が変わればなんでも良いというわけではなく、”変わった”と見なされなければならないということ。
この条件を考えれば、会社が新たに提案する取締役で十分要件を満たすことになるだろうか?
これは、仮に会社側が適任の人材を候補にあげても難しいように思う。イメージや印象で決まってしまうような状況なので、極端に言えば力量よりもイメージの良い人であることの方が優先度が高い。
具体的な選択肢はどの様な人になるか?メディア事業とつながりのないサンケイビルから?番組制作とかかわりのない管理部門から?社外人材?どれを取ってみてもメディア事業のハンドリングに適した人材を候補にあげるのは難しそうに見える。
では、株主が取締役を提案するというのはどうだろうか?
ここで提案ができるのは、株主提案の要件を満たしている大株主に限られるが、現実的に株主提案を行う可能性があるのはダルトンぐらいではないだろうか?
ダルトン側にはこの提案を行う動機もあるし、具体的な候補者を挙げる能力もあるとは思う。幸いなことにダルトンと現体制は対立していて、単純な二元論では現体制が悪で、ダルトンは正義という様な見方をされているように見える。(んなアホなと思うのだが)
他の株主にとっても、旧体制との別離を強くアピールすることが必要であることは明らかなので、ダルトンが取締役候補を立てれば勝てる可能性は高いと思う。
まず、この読み筋がうまく行けば、1つ目の課題。「旧体制とつながりのない新しい会社に変わったと認知されること。」はクリアできそうに思う。
ただ、これだけでは次の「スポンサーが新体制を評価するに足る説明材料があること。」はクリアしていない。
前回の記事でも検討した通り、大手スポンサーがわざわざ口火を切ってCM出稿を再開する必要はない。他社のCM出稿が正常化した後で、再開したとして何か問題があるだろうか?とらなくて良いリスクをとる必要はないのだ。
それでは具体的にどうすれば、新体制を評価するに足る説明材料が得られるだろうか?第三者委員会の調査・再発防止策の提示は前提条件だが、調査が全うされて、再発防止策も公表されたからCM再開しますとはならないように思う。
分かりやすいのは新しいオーナーに会社の所有者が変わるということだと思う。世間的に評価されている企業が新オーナーとしてフジメディアHDを買収してしまうとなれば、世間は手の平を返すかもしれないし、最初の広告主になることもできる。
しかし、わざわざ、火中の栗を拾う必要があるだろうか?
とてつもなく安く買えるんなら考えるかもしれないが、そもそも100%子会社化といった持ち方ができないから、出資方法も限定される。
そもそも、マスメディアなんて何をやっても叩かれるような業種だから、実行可能な企業であっても手を出しにくいし、なんだかんだ言ってフジメディアHDは大企業だからそれだけの資金を調達できる相手も限られている。
新オーナーと言う手は現実的ではなさそうだ。
この状況で、他社が名乗り出て、イメージを一新するというストーリーは考えづらい。あるとしても相当クタクタになった状態になってやっと手を出すぐらいでないとリスクに見合わないと思う。
まとめ
やはり私には現時点で買うべき理由は見つけられない。
かと言って、空売りをするとすれば、社長退任などのニュースで実態が何も変わっていないのに上がってしまうリスクもはらんでいるので手が出せない。
結論としては、売りも買いも私にはできない。
せいぜい、値動きと出来高が大きいのでデイトレーダーが対象にするのが関の山で日をまたいで持つことは考えられない状況だと思う。