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RIZIN49感想(前編)福田龍彌の衝撃にヒリヒリとちいかわの化け物っぷり

茶番のTHE MATCH2(失笑)の告知でモチベーションが最低まで下がってからのRIZIN49。第2部の内容自体は良い試合が多かったので満足できました。気になった試合をいくつかピックアップしてその感想を書いていきます。レベルの差はあれど、RIZIN49は試合が全てMMAだったのがよかったです。特に福田龍彌の試合は書きたいことが多いので長くなるのをご了承いただきたいです。


MMAにおけるムエタイの強さ

大雅vs梅野源治。これまでの梅野さんのキックボクシングでの試合だと肘は使えなかったですが、今回はRIZINのMMAルールなので肘解禁とムエタイで培った首相撲が強いことからも梅野選手の勝利を予想してました。試合前の大雅選手も口ではなく実力で示していくタイプの男らしいファイターなのかなと喋り方からも感じていたので楽しみな試合でした。

試合中。試合前予想は当たったし、想像以上に梅野選手の内容が良かったです。寝技でもタックルでもちゃんとMMAファイターとしてサマになっていて、インタビューで言っていた通りちゃんと練習を積んできたのでしょう。首相撲が強い時点で相当MMAへのアジャストも早いと思っていましたが、予想してたよりずっとMMAされていました。ムエタイ世界最高レベルから繰り出される肘からのパウンドは脅威です。

映像でも話題に挙がっている印象に強く残った言葉があります。1つの競技で頂点を獲った経験があるのは物凄いアドバンテージだなと感じました。マインドも勿論、学び方や技術の習得の仕方をわかっているのは凄いなと。MMAの具体的な知識は知らなくても、抽象的な格闘技の習得方法はわかっている。キックボクシングよりMMAのほうがムエタイの技術を幅広く使えるので、MMAファイターとしての梅野選手の今後に注目していきたいです。

バウンサー対決の結末

武田光司vs新居すぐる。武田選手は2年前の大晦日のBellator対抗戦の頃から知ってるのですが、新居選手の試合をちゃんと注目してみたのは今回が初めてでした。RIZIN45は現地観戦に行ってるので、ドミネーター戦は肉眼で見てるはずなんですけどね。クラブセキュリティ同士の友情があるストーリーを公開練習のときに知ってそこから新居選手の過去の試合やYouTubeチャンネルも見てました。武田選手勝利予想でした。

試合中。新居選手が思ったより寝技で勝負していました。ただ押し切れた感じはなくて、スタンドで組まれるとやっぱり武田選手の方が強かったです。超RIZIN2の堀口vs神龍でアイポークによる試合中断は現地で体験してるのですが、ローブロー2回で試合中止、そこまでの判定で勝敗が決するケースを見たのは今回の試合が初めてでした。特に2ラウンド以降、寝てる状態で武田選手のほうが支配してる時間が長かったので判定結果には納得ですが、なんとも煮え切らない結果になりました。ともあれ、某試合のように友情が決裂しなさそうでよかったです。

「こんな日」はないと思います

矢地祐介vs桜庭大世。シンヤ・エイオキが試合前のnoteで「矢地はこれで負ければいい仕事したとなるが、判定で勝つだろう」みたいなこと言ってましたが、普通に考えたら矢地選手が当たり前のように勝つと誰もが思っていただろうし、桜庭選手は七光でしかない試合でした。トイレ休憩にでもしようかなと思いましたが、ついつい流れで視聴継続することに。試合開始直後から、予想より桜庭選手が形になっている、ちゃんとMMAされていました。結果はアップセット、七光すごかった。いやアップセットではなくシンプルな実力差なのかもしれないが。試合前も矢地選手が「親父がスーパースターだろうがアマチュアから下積みしてRIZINに出ろよ」ともっともな発言をされてましたが、まさかこういう結果になるとは思わずびっくりしました。

この試合でこんな負け方をしたのであれば矢地選手のキャリアは終了なのではないかと思います。負けた後に「こんな日もあるか」とおっしゃってますが、普通に考えたらこんな日はないだろうと思いました。煽りVで矢地選手がライト級のエースみたいに紹介されていましたが、正直この人のどこが強いんだろうと思いました。一方桜庭選手はデビュー戦でこのKOは衝撃的でとても印象に残りました。これからが楽しみ、今後の試合も注目していきたいです。七光だとナメていてすみませんって気持ちです。ちなみに三浦孝太選手は七光でも強くなかったらしいですね。余談ですが、試合後に某編集者が川口春奈さんとの関係をネタにしてこんなポストをされてましたが、流石にこれは辛辣すぎます。

フライ級も層が厚くなってきた

神龍誠vsホセ・トーレス。神龍選手の試合は現地でも観戦経験がありますが、正直言って堀口戦でのトラッシュトークが見ていて気分が悪かったしあまり好きな選手ではないです。扇久保戦でも似たような煽りを繰り返していて、対戦した2選手が「(ヒール役を)作っているのではなく素で本当に嫌なやつなのでは」みたいな話をしてるのが印象的でした。とはいえ、堀口戦に負けた後に泣いているシーンが記憶に残っていて、格闘技を真剣にやっているファイターなのは伝わってくるし、常に競合相手と戦ってるのでエンタメ枠ではないレベルの高い試合を見せてくれる点で今回は応援してました。

試合中。神龍選手は塩試合が多い印象だったのですが、今回は近距離での打撃の応酬がすごく見応えのある試合でした。パンチの乱打戦は迫力がありました。勝ったり負けたりを繰り返している神龍選手ですが、次は勝ってほしいです。アリベク・ガジャマトフ選手もそうですが、朝倉未来選手の影響でフェザー級の層が厚くなってきたのと同じように、堀口恭司を頂点にしたフライ級も相当層が厚くなってきたなと改めて感じました。

「本物の格闘家」福田龍彌を知った

福田龍彌vs芦澤竜誠。このドラゴン対決は特に楽しみなカードの1つでした。結論からいうと今回の大会で福田龍彌選手がめちゃくちゃ好きになってしまいました。男として惚れたと言っても過言ではありません。にわか格闘技ファンなので情けない話ですが、福田選手の存在を知ったのは公開練習での追加カード発表のときでした。

追加カード発表時から福田選手から放たれていたオーラがずっと気になっていました。最近目立つトラッシュトークや奇抜な服装だけで中身の伴ってない口だけのなんちゃって格闘家とは一線を画する感じ。平常時はすごく穏やかで優しい感じで、すごく自分らしい雰囲気。自信があるから飾る必要もなく、どっしりと構えているのがわかります。本当に強い人はこういう男なんだな、福田選手を見ているとそう感じずにはいられなかったです。

公開練習時は「べつに今更キャラで売る必要もないから、スキルでちゃんと僕を表現できたらなと思います」と言っていますが、福田選手はキャラも十分立っています。「ヒリヒリさせる」「おぶりがーと」も他の誰でもない福田選手自身の言葉で表現だからです。物凄いオーラを放っていた福田さんがどんな選手なのかなと気になって、過去の試合動画を漁っていました。そのとき、そういえば滝澤謙太選手がDEEPのタイトルマッチで負けた試合は当時見たけど「あの時の勝った方が福田か!」と後になって気づいた次第です。もちろんこの試合も見直したし、平良達郎選手との対戦も視聴しました。

普段はインタビューにも丁寧で穏やかに対応する飄々な感じだけども、いざ試合が始まるとギラギラとしたファイターそのものの表情になる。このギャップもたまらなかったです。競技者であれば試合前に対戦相手の過去の動画を徹底的に研究してから戦うのは定石ですが、「誰と闘っても対策練習はしない、感性の方が大事だから」「本番で実際にどんな生き物なのか感じたいから」的な思想で試合前に対戦相手の過去の動画は見ない福田選手のスタンスもかっこよかったです。戦いが本当に好きで好きでたまらないのが伝わってきます。追加カードは唐突感はありましたが、名前に龍(竜)が入っているもの同士、辰年の大晦日をドラゴン対決で締めるのは面白かったので試合が待ち遠しかったです。もちろん試合予想は福田選手の勝利予想でした。

福田選手の存在を教えてくれた芦澤選手には感謝しかありません。本当にありがとうございました。芦澤竜誠さんはabemaの「ぶらり喧嘩旅」も好きだし見ていて面白い選手です。「ファイトパンツにスポンサーロゴを入れるのはパパ活と同じでカッコ悪いから、俺は一億円積まれたってやらない」みたいな発言はかっこいいですし、MMAデビュー戦に太田忍選手を選んだりするのも心意気は買ってます。ですが、試合4日前に「榊󠄀原社長に呼び出されました」で呑気にワインを飲みながら朝倉未来の悪口を言っているのが福田龍彌をナメすぎていて印象最悪でした。おまけにDEEPのベルトをダサいだのカッコ悪いだの言ってるのも、福田選手が聞いているのだとしたら気分が悪いでしょう。

試合中。左ストレート一閃。物凄い速さで秒殺KOでした。パウンドで追撃する必要もなかったですね。福田選手が勝つと思ってましたがここまで圧倒する、ここまでレベルの差があるのかと衝撃的な結末でした。会見のときに福田選手は「ちょっとでも隙を見せたらすぐ狩りに行くから」ってコメントしてましたが、最初見たときは芦澤選手がどこに隙を見せたのか、福田選手のパンチが速すぎて全くわからなかったです。何度も繰り返しフィニッシュのシーンを見返したのですが、芦澤選手が左ジャブを出したのがキッカケで隙が生まれたんですかね?MMA有識者の人にも意見を聞きたいです。サトシ選手や堀口選手なんかもそうですが、勝敗が決した直後に感染している自分の口から自然と「強い!!」と出てくる選手。福田選手もそんなタイプの選手でした。これが本物の格闘家の強さなのかと感動しました。試合が一瞬で終わったのでヒリヒリする時間は短かったですが、それでも十分ヒリヒリできました。格闘家にとって大事なのは強さ。格闘技の技術を研鑽することであって、ファッションやSNSでのトラッシュトーク(失笑)など虚構の言葉で着飾ることではないのだと改めて教えてくれた試合でした。福田選手の試合は生で見たいので、DEEPの試合も見にいきたいです。

芦澤選手は嫌いじゃないですが、今回の結果は妥当です。(他の局面ではMMAファイターには負けるけども)打撃なら絶対勝てると豪語していた芦澤選手にとって、自信のあった打撃でMMAファイターに完敗したこの試合内容は相当ショッキングでしょう。グラウンドで負けたのならまだ言い訳できたでしょうが、キックボクサー本職の打撃で完膚なきまでに叩きのめされたのですから。試合4日前の「バラ呼び」でBreaking Downの選手をこき下ろして「俺らは本物路線だ」と言っていましたが、この負け方をした芦澤選手はどこからどう見てもイロモノのエンタメ枠でしかないと思いました。今後どうなるのか気になります。

YA-MANの男気と物凄いプレス

YA-MANvsカルシャガ・ダウドベック。ストライカー同士の戦い、この試合もそうですが休憩前の7,8,9試合は特に注目のラインナップが並んでいるとても楽しい時間帯でした。その3試合の中では、正直一番期待してなかったです。骨の物凄い音が場内に響き渡るパンチを繰り出すダウトベック選手の強さは現地観戦でわかってるつもりだったし、YA-MAN選手はまだまだMMAにアジャストするには時間がかかると思ったからです。予想ではダウトベック選手が1ラウンドでパンチを当てて圧倒すると思っていました。

試合中。打撃戦になるのは予想してましたが、YA-MAN選手の打撃がここまで凄いとは。本職のキックボクサーの打撃をナメていたのは反省です。餅は餅屋でした。それ以上にすごかったのは、岩石パンチのダウトベック選手に対して前に前にと3ラウンドの間ずっとプレスをかけ続けていたことです。あのダウトベック選手が打撃戦を嫌ってタックルで汲みに行く選択ばかりする試合展開になるとは全く思いませんでした。リスクを負っての凄まじいプレスは私含め観客を感動させたと思うし、試合前の「俺はエンタメ枠じゃない」発言は有言実行によって体現できていました。去年の大晦日の平本蓮戦でも目が狂気を孕んでいるように見えましたが、この試合でも良い意味でクレイジーな圧を醸し出していました。すごく良い試合だったし、この試合でYA-MAN選手を見る目が変わりました。とはいえ試合巧者だったのはダウトベック選手だったし3-0の判定結果にも納得です。

ところでキャバ嬢との寸劇は本気なのかキャラ作りでやってるのかいまだにわからないのですが、一体どっちなのでしょうか。YA-MAN選手のファンに聞けばわかるんですかね。あのノリは寒いですし、YA-MAN選手がエンタメ枠と言われるのはあの要素が大きい気がします。キャラ作りだったり人気獲得のためにはこういう要素があって良いと思うのはもちろんだし、試合後ににじほさんが涙ぐんでいたシーンは印象的でした。

これは格闘技ではない、攻防ではなく一方的な虐殺だ。しかし、それでも笑った男

久保優太vsラジャブアリ・シェイドゥラエフ。今大会屈指の注目カードの1つです。普通に考えたらシェイドゥラエフ選手の勝ちですが、格闘IQが高くここまで連勝している久保選手が一発決めればワンチャンスある論調にも理解できました。予想はシェイドゥラエフ選手の1ラウンドKOでした。

試合中。予想通りシェイドゥラエフ選手がグラウンドで圧倒しますが、なす術のない久保選手は気持ちを見せます。RIZINにいるK-1出身の選手たちはエンタメ枠ばかりですが、その中でも久保選手はきちんとMMA戦績を積み上げている人ですし、芦澤選手もそうですが強敵を自ら指名して選ぶ心意気は素直に買っています。シェイドゥラエフ選手はRIZINでの2試合はいずれも1ラウンドで決めてますが、まさかの2ラウンド持ち越し。しかしインターバルに見た久保選手の顔は傷だらけのボロボロで、見ていて痛々しいものでした。

格闘技とは攻防を繰り返すもののはずですが、終始シェイドゥラエフ選手の攻撃を受け続けるだけの防戦一方だった久保選手からすれば、これは果たして格闘技の試合なのか?と疑問でした。久保選手の嫁のサラさんは「諦めるな」「油断するな」「心折れるな」とか同じことばかり叫んでいるだけで、セコンドのアドバイスを邪魔している単に煩いだけの存在に見えました。シェイドゥラエフは油断しなかったり諦めなかったり心が折れないぐらいでどうにかなる選手ではないのが今回よく分かりましたね。サラさんが騒いでるときにショーン・オマリーさんを横切って、そのときにオマリーさんが通訳に「こいつは何を騒いでるんだ?」ってヒソヒソ話で聞いてそうにカメラに映ったのが笑えました

それでも笑って2ラウンド目に向かって行った久保選手はカッコよかったし、第2ラウンド開始時の会場の歓声からも久保選手が多くのお客さんの心を動かしていることが伝わってきました。これだけ大怪我してるのに試合後インタビューも逃げずにちゃんと対応していたのもプロフェッショナルの鑑でした。頭部に尋常ではない量のパウンドを浴びせられていたので、顔の傷跡もすごかったですがそれ以上に脳へのダメージが心配でした。今大会で最もダメージを受けたのは久保選手でしょう。久保選手の弟さんのポストで試合後の経過を見ていましたが、脳に異常は見られないようなのでよかったです。まずはしっかり休んで身体のダメージを抜いてほしいですね。試合には負けちゃったけどもこれからも頑張ってほしいです。

この試合でシェイドゥラエフ選手は13戦13勝13KO。化け物じみた成績です。わかっていたことですが改めてクソ強い選手でした。シェイドゥラエフ選手はグラップラーと紹介されているしタックルや寝技が印象に残りやすいのかもしれないですが、私はずっとシェイドゥラエフ選手はスタンドでの打撃も凄まじいしストライカーと真っ向から戦っても全く引けを取らないと思っていました。今回の試合でもシンプルにフィジカルが強靭すぎるのは改めて感じました。恐ろしいのはRIZINでの3試合はいずれも無傷で勝っていること。しかもまだ24歳で伸び代しかありません、本当に末恐ろしい。

シェイドゥラエフ選手はデビュー当時からちいかわに似ていると話題になっていて、笑顔が素敵なところも気に入ってます。シェイドゥラエフ選手への観客の歓声も試合ごとに増えている印象があって、今回の試合でさらに人気になっているようにみえました。やっぱり格闘技はSNSでトラッシュトークするだけで試合の中身がないアパレル店員さんではなく、強い選手が人気であるべきだと思うのでシェイドゥラエフ選手が人気になっていくのは嬉しいです。シェイドゥラエフ選手のRIZINデビュー戦であるRIZIN47は現地観戦していたので、シェイドゥラエフ選手の強さや衝撃は体感しているし、シェイドゥラエフ選手のデビュー戦を現地観戦できたのはとても良い思い出です。戦績の綺麗さ的にシェイドゥラエフ選手がUFCに行けるのはわかっていましたが、これぐらい強いとチャンピオンすら狙えるのではないでしょうか。今後がいっそう楽しみです。最後にXで話題になっていた【密着】Preparationの切り抜きポストを貼って前半戦の感想を締めます。

後編はこちら


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