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採算管理ことはじめ


採算管理は当たり前の事…なのか?

営利を追求する企業体であればどこでも採算管理を行っているでしょう。
利益計画を作り、管理者の責任範囲に応じて細分化し、毎月会計実績値と比較し、差異分析してしかるべく改善策を講じ、もって事業体があるべき方向に向かっていくようコントロールするわけです。
「アメーバ経営!」とか「ABC!」とか高度なことはとりあえず想定していません。誰もが思いつく当たり前の管理手法をイメージしていただければ結構です。

さてしかし、その当たり前を、例えばあなたの事業体で「徹底して」実施されているでしょうか。ピカピカプライム上場企業ならきっと実施されていることでしょう。しかし中小企業~中堅事業体では「徹底して」実施されているとは言い難い会社が多いのではないか。

ところでここにいう「徹底して実施」とはどういうことか。
こういうことを念頭に置いています。

  1. 事業体を管理者の責任範囲に応じて細分化した各パートから積み上げて事業体全体の単年度計画値が整合的に出来上がっていて、その単年度計画が積みあがって整合的に中期計画が出来上がっている。

  2. 各パートの計画はポイントを押さえた単価×数量の積み上げで作られていて、予実分析の際に単価×数量により差異内容を把握でき、その結果管理者の対策行動につなげることができる。

  3. 中期計画はBS、PLのみならずCFについても作成されていて、設備投資や借入返済を考慮に入れても会社の資金繰りが回ることが検証されている。

  4. 予実分析はタイムリーに(翌月中には)実施されている。問題点発見が遅れれば遅れるほど傷が広がる。早期発見早期治療にしくはなし。

  5. 各パート計画にはその管理者の、事業体全体にはその事業体の長の魂がこもっていて「仏造って魂入れず」状態に陥っていない。

上記1.~5.のうちどれかが欠けても「徹底して実施」とはいえないです。
1.が欠けている例:
会社全体の計画は出来上がっているが各パートの合算と不整合。事業体の長の思いが先走っている。
2.が欠けている例:
一つ一つの計画値がフィーリングで作られていて、予実分析してもその差が管理者にとってピンと来ないため改善行動につながらない。
3.が欠けている例:
PLは作っている。BSやCFは作っていない。資金の動きまでカバーせずに計画と言えるのか…。
4.が欠けている例:
そもそも月次試算表が翌月中に締まらない。中小企業あるある…。
5.が欠けている例:
「いやコンサルさんが作ったこの計画がうまくいかなくて」と事業体の長が言う。自らの物として企業体が計画にコミットしていない。

さて、5つを全て満たして初めて「徹底して実施」です。
私は公認会計士・税理士として中小~中堅事業体の会計・税務顧問をさせていただいています。事業体の規模に応じて濃淡はありますが、一定規模以上の顧客に対してはこの採算管理を「徹底して実施」する支援を行っています。仕組みを作るのみならず毎月事業体の人たちと単価×数量までできる限り話を詰めて、事業体が正しい方向へ歩むお手伝いをしています。(その点、私は商売に口を出しまくる会計士です。求められれば顧客の従業員に支払う賞与の決定にまで口を出します。)経営環境が常に不確実な中、吹けば飛ぶような儚い存在が中小~中堅事業体です。私もまたそのような事業体と一蓮托生の商売をしています。共に生きながらえるためこの採算管理の「徹底して実施」が不可欠なのです。しかしこの当たり前の採算管理を「徹底して実施」している事業体は、実は少数派なのではないか、というのが実感です。中小企業~中堅事業体に対する支援策は諸々用意されていると思いますが、そのような支援策も、それぞれの事業体が採算管理を「徹底して実施」する日常的な仕組みを備えていてこそ、本当に活きるのだと思います。その点で採算管理は全ての中小企業~中堅事業体にとって喫緊の経営課題と考えます。
そこで自らの仕事の棚卸を兼ね、私が行っている採算管理の実際について諸々お伝えしようと思います。あなたが数字づくりに関わっている事業体の採算管理に役立つ何かを一つでも発見いただければこの上ない幸いです。

このnoteが想定する「あなた」とは?

私がこのnoteを執筆するにあたり想定している読者像はこのような方々です。

  1. 中小~中堅事業体の長

  2. 中小~中堅事業体で数字づくりに携わっている方

  3. 中小~中堅事業体で数字づくりを支援している税理士や会計士

  4. 中堅~大規模の非営利事業体の長、数字づくりに携わっている方

1.は、会計数値に関心のない長におかれましては、是非会計が経営に役立つという事実に開眼していただきたいという願いを込めて想定しております。(全く数字に関心がなく、3か月に1回税理士事務所が作成した試算表を右から左に金融機関に渡していた社長を知っています。会社は経営危機に瀕しました。)

2.は、経理担当されている皆様です。処理を後回し後回しにされるのが数字を作るものの悲しい宿命です。しかし採算管理を通じて会計が数字に役立つことを事業体が理解すれば、まわりまわってあなたの日常業務に周りの人たちが協力してくれるでしょう。

3.は、私のご同業です。預金データもスキャナデータも会計ソフトにスパスパ入っていくよう仕組化を推進されていることと思いますが、なぜそれを推進しておられるかというと、より付加価値の高いサービスを顧問先に提供する工数を確保するためだった筈です。そのサービスのラインナップに、顧問先に深く入り込んでの採算管理を加えていただくのはいかがでしょうか。

4.は、他と少し毛色が違います。営利事業体で大規模であれば、採算管理はある程度「徹底して実施」されていると思います。が、医療法人、社会福祉法人などの非営利事業体は、一定水準以上の大規模であっても採算管理の仕組みが必ずしも整っていない印象です。しかしこれらの組織が置かれている環境は、今や必ずしも厚く支援の手が差し伸べられるわけでもない状況に変化していると思います。大規模であるがゆえ関わっている利害関係者も多数に上ると思います。そういう事業体こそ、採算管理の仕組みを整えることが必須であると思います。

このnoteの全体像は?

さしあたり全体像を示すと以下の通りです。

中期計画をいかにつくるか
月次試算表をどう見るか


試算表をどう分解し単価×数量まで分析するか

上記3つは下から上へ積みあがっていき、全て整合し連動していることが重要です。

具体的な内容は他の記事で順次触れていく予定です。

2700字でした。最後までお付き合いいただきありがとうございました。
引き続きどうぞよろしくお願いします。

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