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【ほぼトラ】副大統領候補のJ.D.ヴァンスって誰?と思った人が読む話

11月5日に迫った米大統領選で、共和党の大統領候補にトランプ元大統領が指名された。また同時に副大統領候補にオハイオ州選出のJ.D.ヴァンス上院議員が指名された。
このJ.D.ヴァンス上院議員だが、その名前を初めて耳にした人も多いだろう。このnoteでは、今後トランプが再選された場合に、重要な地位を占めることが予想される、このJ.D.ヴァンスという男について簡単にまとめてみた。

オハイオは、アメリカの北九州

このヴァンス副大統領候補が生まれたのが、オハイオ州だ。と言っても日本人のほとんどがピンとこないだろう。参考に簡単に説明をしてみたい。
オハイオ州は、アメリカの中西部に位置している。場所としては、五大湖の南側の地域だ。隣は自動車で有名なデトロイトがあるミシガン州だ。

ニューヨークやワシントンがあるアメリカ東海岸から見ると地図では左側になる。大西洋岸とは、南北に走るアパラチア山脈で区切られている。ニューヨークやワシントンを出発して西に向かうとアパラチア山脈にぶち当たる。そしてこの南北に走る山を越えた先に広がるのが、今回トランプ暗殺未遂事件の起きたペンシルベニア州西部一帯だ。そしてその先にあるのが、オハイオ州だ。
このオハイオ州の中心は、アパラチア山脈から流れ出るオハイオ川だ。そしてこのオハイオ川の流域は製鉄や機械などの製造業で有名だ。
さらに川を下ると中流にあるのが、鉄鋼業で有名なペンシルベニア州のピッツバーグだ。アメリカ一の鉄鋼メーカーであるUSスチールもこのピッツバーグにある。そして更に川を下っていくと開けた平野に出る。そこがオハイオ州だ。
この地域は19世紀から主にスコットランドやアイルランドなどから移民を引き付けてきた。そして多くの白人移民労働者が、炭鉱や製鉄所で働いてきた。
このオハイオ州などアメリカの中西部地帯では、アメリカの製造業が盛んだった1950年代から60年代にかけて、多くの炭鉱や鉄鋼労働者が中流家庭の生活を手に入れた。マイホームとマイカーを持ち、子供を大学に行かせられるぐらい豊かになった。
しかし、その後の経済のグローバル化で多くの企業が国外に工場を移転し、炭鉱と製鉄所は閉鎖されてしまった。その結果、街には白人の失業者があふれることになった。
無理やり日本に例えるとしたら、福岡にある筑豊炭鉱地帯と北九州市一帯と言ったところだろう。明治から昭和にかけて八幡や小倉などの北九州市一帯と筑豊炭鉱地帯は、石炭の産出と製鉄業で栄えていた。そして今は、オハイオと同じように円高とグローバル化で空洞化が進み、往時の繁栄の見る影もない。今では生活保護日本一で有名なくらいだ。
ちなみに自民党の重鎮である麻生元総理の生まれ故郷が、この筑豊炭鉱地帯だ。麻生元総理の実家は、かつて筑豊の炭鉱王だった。

オピオイド中毒

21世紀に入ると、このオハイオ州やミシガン州などの五大湖の南の地域で合成鎮痛薬のオピオイドが蔓延しだした。
もともとは、オピオイドは、アメリカの製薬会社が、手軽な夢の鎮痛剤として売り出していたものだった。そして製薬会社からの多額のバックマージンが得られることから、医師が肩や腰などに痛みを抱える肉体労働者たちに盛んに処方していった。
ところが、このオピオイドには、高い中毒性があることが後に判明する。しかし製薬会社は、この副作用の情報を隠して、巨額の利益が得られる、この夢の鎮痛剤の販売を続けた。
こうして福祉に頼って暮らす失業者達の多くが、このオピオイド中毒に侵されていくことになった。
今では、このオピオイドによる中毒が、中高年の白人ブルーカラー労働者階級の主な死因の一つにまでなっている。
そして副大統領候補にまで上り詰めたJ.D.ヴァンス上院議員のシングルマザーの母親もこのオピオイド中毒患者だ。

ヒルビリーエレジー

鉄鋼業や石炭産業の失業者と、とオピオイドなどの中毒患者があふれるオハイオ州で生まれ育ったのが、J.D.ヴァンスだ。
失業者と十代で出産したシングルマザー、そして麻薬中毒患者の中で彼は育った。
そんな厳しい環境から脱するために、J.D.ヴァンスは、海兵隊員となりイラクに出征した。その後は、従軍で得た奨学金で、オハイオ州立大学とイエール大学を卒業し、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストとして成功した。
その生涯は、彼を一躍有名にしたベストセラー”ヒルビリーエレジー”に詳しい。

ピーター・ティール

麻薬中毒に苦しむ貧しい白人労働者の代表というのが売りの、J.D.ヴァンス副大統領候補だが、実はもう一つの顔がある。
それは、シリコンバレーのテクノリバタリアンであるピーターティールの手下だったということだ。

ピーター・ティールは、テスラでお馴染みのイーロン・マスクとともにPaypal社を創業したことで有名なベンチャー・キャピタリストだ。Meta社のFacebookにいち早く投資したシード投資家の一人でもある。そして当然ながら大金持ちだ。またティールはシリコンバレーでは異色の共和党支持者としても知られている。
J.D.ヴァンス副大統領候補は、このピーター・ティール傘下のベンチャーキャピタルの経営を任されていたようだ。
情報が乏しく確認がとれていないが、J.D.ヴァンスの妻が、カリフォルニア出身のインド系であることもシリコンバレーとの繋がりを連想させる。このインド系の妻とは、イエール大学の法科で出会ったようだが、もしかしたら、このインド系の妻が彼をシリコンバレーにつないだのかもしれない。
ちなみにピーター・ティールは、今現在、IT企業のパランティア社を経営している。このパランティア社は、アメリカ軍やCIA、NSAなどの情報機関に対して、IT技術を用いたテロリストの監視などのサービスを提供している企業だ。

テクノリバタリアンとAi

このピーターティールを中心とするシリコンバレーの一派を”ペイパル・マフィア”と呼んだりもする。また、一部では、彼らのような人たちをテクノリバタリアンと呼んでいるようだ。

彼らテクノリバタリアンたちは、ITの力を使って、現代社会を変革しようという思想を持っているようだ。テクノロジーの力をフルに活用すれば、大方の社会問題は解決し、人類社会を最適化できるというのだ。
そこには、既存の民主主義は存在しない。シリコンバレーの天才である彼らからすれば、IQの低いバカな有権者が投票しても、一向に政治は改善しない。それよりも、ITによりシステム化された社会制度が、経済や社会を最適化していくと考える。
このテクノリバタリアンの範疇には、イーサリアムで有名なヴィタリクや、ChatGPTのサムアルトマンなども含まれるそうだ。
ヒッピー上がりの自由を愛するAppleのスティーブ・ジョブズとは随分毛色が違うように感じるだろ。
そして以前は夢物語だった、このテクノリバタリアンたちの思想が、最近の人工知能AIの急激な進化で現実味を帯び始めている。
テスラで有名なイーロン・マスクが、トランプ支持を打ち出し、毎月70億円の寄付を表明したのも、その表れかもしれない。

J.D.ヴァンスはピーターティールの手先だ

実は、このJ.D.ヴァンス上院議員は、以前はトランプを激しく攻撃し、ファシスト呼ばわりしていたこともある。
しかし政治活動を始めると一転してトランプ支持に転向した。
そんな彼を風見鶏、オポチュニティスト、金に汚い人間と揶揄する向きも多いようだ。
そしてトランプに跪き傅いた結果、今回の副大統領候補の地位を手に入れたというのだ。
今は、共和党の副大統領候補に指名されたJ.D.ヴァンス上院議員は、オハイオの素朴なブルーカラー労働者の代表を装っている。

しかし、シリコンバレーの大金持ちであるピーター・ティールとの関係を見るにつけ、J.D.ヴァンスの真の姿は、ピーター・ティールに代表されるシリコンバレーのテクノリバタリアンの一派とみるのが妥当だろう。
途中からトランプ支持に転向したのもピーター・ティールの影響がうかがえる。

そしてトランプが、この無名の上院議員を選挙の相棒に指名したのも、その豊富な資金力を頼ってのことだろう。


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